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第八章 海の覇者

必要分の事前確保は内密に……

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 その後、時空神様も打ち合わせに戻り、アーゼンラーナ様は行かなくても良いのか心配になりましたが、息子には後で会うことになるだろうから心配ないと、私の心配を見透かし、柔らかく微笑みながらおっしゃってくださいました。
 それなら良いのですが……

「聞いておるのじゃろ?」
「えっと……は、はい」
「心配はあるが、時間と経験が必要でな……先ほどのベオルフが放った回復のおかげで随分楽になったとは思う。ルナからも『おかげで息子が助かった、心から感謝する』と伝えておいてくれぬか?」
「わかりました。それほど、海を管理することは大変なのですね」
「まあのぅ……」

 十神の中でも最高位と言われる、時空神様が前任していた海神ですものね。
 それくらいの力が無いと統制が出来なかった領域なので、後任はとても大変なのでしょう。
 むしろ、前任の時空神様が、とんでもない力を秘めていたと考えた方が良いのでしょうか。
 少し疑問に感じ、誰にも聞かれないようにコッソリとアーゼンラーナ様に尋ねてみました。
 すると、苦笑交じりに「妾たちが束になっても敵わぬほど、凄まじい神であった」としみじみ呟く姿を見て、現在の時空神様の苦労が忍ばれます。
 オーディナル様やリュート様に似ている神様だと言うお話ですから、一度お目にかかりたかった───
 そこまで考えた時に違和感を覚えたのですが、すぐに気のせいだと頭を振って考えを切り替えます。

 私とアーゼンラーナ様が会話をしている間にも、大量のナンができあがり、チェリシュの似顔絵ベリリジャムをたっぷり包み込んだナンも、皿に山盛りになるほどできあがっておりました。
 え、えっと、いくつ作る気ですか?

「えっへんなの! ねーねたちと、大ママと、にーにたちも出来たの。キューちゃんと、うさぎパンのにーにたちもーっ! 他にも、たくさん作れて満足なのっ」
「う、うわぁ……いっぱいですねぇ」

 アレン様やアーゼンラーナ様、ラングレイ家が全員揃っておりますし、イーダ様、レオ様、トリス様、シモン様の幼なじみメンバーも勢揃いです。
 弟子セットで、カフェ、ラテ、カカオ、ミルクだけではなく、マリアベルもいるところがチェリシュらしくて、とても微笑ましくなりました。
 さすがに、これだけの数を作ると想定していなかったのですが、空になっているベリリが入っていただろう瓶を見て、思わずミルクの方に視線をやります。
 ミルクがベリリジャムを沢山作っていて良かったと胸をなで下ろしておりますが、どれくらい消費されたのでしょう。
 私の視線に気づいたミルクは「まだ大きな瓶に5つ残っておりますので、心配いりませんにゃぁ」と教えてくれました。
 本当に、よく出来た弟子です。
 しかも、仕事が速い!
 カカオもそうですし、カフェもラテも……みんな優秀ですよね。
 レシピから覚えたナンを手際よく作っているマリアベルも、負けてはいません。
 弟子が優秀過ぎませんか?
 わ、私……師匠として、ちゃんとやっていけるのでしょうか。
 ちょっぴり心配です。

「ルー、いっぱい作ったのっ! リューも、これでいっぱい食べられるのっ」

 ほっぺにベリリジャムをつけて、ほくほく顔のチェリシュを見ながら、その愛らしさになんと言っていいのやら……リュート様だったら「残ったら俺が全部食うし、可愛いから良し!」ですね。
 この父娘は、本当に可愛らしいのですからっ!
 チェリシュが作った大量のベリリジャムを包み込んだナン……もう、ナンといっていいのかもわかりませんが───とりあえず、ベリリジャムナンは、残る事は無いでしょう。
 むしろ、争奪戦が勃発しないか心配です。

 太陽神様や月の女神様、それに季節の女神様たちの分は保存しておきましょう。
 チェリシュが自分のことを考えて作ったナンを直接見てみたいでしょうし、できることなら食べてみたいですよね。
 もしくは、記念に飾っておこうと考えている可能性だってあります。
 その際には、必ず防腐処置を施していただきたいのですが……心配しなくても大丈夫ですよね?

 チェリシュの汚れたほっぺを綺麗にしてから、悪戯っぽい表情をして内緒話でもするように語りかけます。

「カレーの状態をチェックしてみましょうか」
「はっ! カレーなのっ!? でも……大丈夫……なの?」
「一回分のにおい消しは、時空神様からいただいたアイテムで出来るようですし、アーゼンラーナ様がフォローしてくださいますから大丈夫です」
「だったら、見てみたいのっ!」

 リュート様が大好きな料理に興味津々といった様子のチェリシュでしたが、弟子たちもそわそわしはじめました。

「みんなで見てみましょうか」
「俺様も気になってたんだよな」
「そういえば、カレーで染まっていた部分が、綺麗な白に戻りましたね」
「リュート様の改良版洗浄石様々ですにゃぁ」

 マリアベルとミルクの会話を聞いていた私は、思わず二人の方へ視線を向けます。
 さ、先ほどの作業で染まったのですか?
 というか、万能過ぎませんかっ!?
 普通、カレーの染みって落ちづらくて、お気に入りのシャツをダメにしてしまった経験があります。
 あのときに欲しかったです!

「普通の洗浄石じゃ、ダメだったのかー?」
「ダメでしたにゃぁ、黄色く残りましたにゃぁ」
「そりゃすげーわ」

 だったら、衣類にカレーがついても問題ありませんね。
 兄が聞いたら「ナニソレ! 絶対欲しいっ!」というアイテムでしょう。
 いえ、兄だけではなく、衣類のシミに悩む方だったら欲しいですよね。
 これで、カレーうどんも怖くないです。

「あ……カレーうどん」
「うどん、ちゅるちゅるなの?」
「カレーが残れば、カレーうどんにしましょうね」
「残る……なの?」
「え?」
「リュート様が好きな料理なのに、師匠は残るって思うのかよ」

 チェリシュとカカオに、そう問いかけられると困ります。
 残りま……せんよね。

「ひ、必要分を、事前に確保しておきましょう」
「それが賢明だと思う」

 溜め息交じりにカカオがそう言って、やれやれと首を振ります。
 確かにこれは私の方がわかっていませんでした。
 反省……
 リュート様の食べ方が凄いことを理解したカカオは、ここ数日かけて適正量を見極めたようです。
 それだけ彼にとって、私が作った料理を食べているリュート様の姿は衝撃的な物だったのでしょう。
 特に、満面の笑みで美味しそうに食べ続けるリュート様は想像できなかったらしく、私の料理を口にしていなければ納得できなかったと、ぼやいておりました。

 とりあえず、カレーうどん分のカレーの確保もあり、オーディナル様が魔改造してくださった発酵石の器に近づき、蓋を開きます。
 一見して状況がわかるというのはとても有り難いですね。
 可愛らしいミニチュアの鍋が3つ並んでいて、ことこと火が通っているとわかるように、蓋が小さく揺れています。
 熱いかしらと警戒しながら鍋を指でつまむと、ぽんっと音がして大きな鍋が作業台に出現しました。
 す、すごい……もしかして、つままなくても指で触れるだけで良いのかもしれません。
 試しに触れてみると、ぽぽんっと音がして、他の二つも出現します。
 これは、出現させるスペースを先に確保しないといけませんね。
 でも、デジタルより、ちょっぴりアナログ感がある此方のほうが、私には向いております。
 オーディナル様は、私のことをよくご存じだと感じました。

「さて、カレーうどん分のカレーを確保しましょう」

 カレーうどんの確保分は、甘口の鍋から取った方が良いでしょうか。
 リュート様には甘すぎるかもしれませんので、あとで味を調整する必要がありますが、甘口の需要が一番少ないはず……

 そこまで考えて、隣のチェリシュを見つめます。
 チェリシュもリュート様ほどではないにしろ、よく食べますし……減らすのもどうでしょう。
 リュート様は確実に辛口ですが……うーん、ここは平等に!

「3つの鍋から均等に拝借しましょう」

 これで恨みっこなしです。
 全部の鍋から同量いただいて、別の鍋へ移しました。
 一見してカレーうどんの分だとわかるように、鍋のタイプを別にしてきましたから大丈夫でしょう。

「うどんちゅるちゅるにも合うの? 不思議なの」
「美味しいですよー? マールの天ぷらも上に載せましょう」
「いっぱいなのっ!」

 目をキラキラさせて喜ぶチェリシュを見ながら、カレーのシミをどれくらい作ってくれるのかしらと不安になります。
 しかし、改良版洗浄石のおかげで何とかなりそうですし、心配することもないでしょう。

「なんか、さっきよりも……熟成されたって感じだなー」
「すごいですにゃぁ」
「色が少し濃くなりましたよね」

 カカオ、ミルク、マリアベルの三人は、鍋を見比べて変化に気づいたようです。
 良い感じに仕上がりつつありますね。
 試しに小皿に少量取ってみたのですが、肉もスプーンで簡単に崩れるくらいホロホロになっていて、とても美味しそうです。

「これくらい柔らかいと、歯の弱いお年寄りでも食べられますね」
「その前に、刺激にびっくりするだろうけどな」
「舌がピリピリしますにゃぁ」

 お肉の状態を見たマリアベルが嬉しそうに頬を緩ませるのを、横目で見たカカオは辛さに驚くぞとほくそ笑み、ミルクはそんなカカオの様子に苦笑しておりました。
 楽しそうなのは良いのですが、お料理で驚かせてはいけません。

「……え、いつも師匠の料理には驚かされるけど?」
「それもそうですにゃぁ」
「お師匠様の料理は、驚きに満ちておりますものね」
「びっくりなのっ」

 4人からそう言われてしまいましたが、違います、いたずらに料理を使うなと言いたいだけですよっ!?
 わかっていたのか、4人が顔を見合わせて笑っているので、からかわれたことに気づきました。
 全くもー、この弟子たちは最近、リュート様に似てきたのではありませんか?

「で? 師匠、味はどうなんだ?」

 カカオに急かされて人数分の小皿にカレーを少しだけ入れて、自分の取り皿のカレーを少量掬って味見をしてみると、先ほどの尖った感じとは違い、全体的に味が馴染んでマイルドになり、ほどよい奥深さが出てきました。
 本格的なスパイスカレーですが、コクとまろやかさが良い感じに出ていて、これなら喜んでいただけるかもしれません。
 本来なら、二日目のカレーを楽しみたいところですが、リュート様の食べっぷりを考えたら、無理ですよね。
 むしろ、この発酵石の器で、そこまで熟成させられないものでしょうか。
 いける……かも?

 ほどよいとろみがついている鍋を数回かき混ぜて、元の位置へ戻した私は、祈るような気持ちで有名な呪文「美味しくな~れ」を唱え、蓋を閉めました。

 此方の世界で、リュート様が初めて口にするカレーです。
 あの素敵な笑顔で「旨いっ!」て、言っていただきたいのですもの。
 最高の物をお出ししたいので、気合いだって入ります。
 あとは、食べていただく前に、ヨーグルトとほうれん草を加えて加熱し、最後の仕上げをするくらいですね。

 カレーもナンもできましたし、チェリシュのベリリジャムたっぷりのナンも出来ました。
 準備は万端です。
 デザートは、アップルローズタルトとタルトタタン。
 人数が多いので、これくらいあっても足りるか不安になりますが、カカオがサラダも追加で作っておくと言ってくれたので、私は安心してレシピギルドへ行く準備に取りかかりました。

 あ、その前に、リュート様が帰ってきたら困るので、カレー臭を消しましょう。
 時空神様のにおい消しとアーゼンラーナ様のおかげで、部屋に漂うカレー臭は消えましたが、先ほどの事もありますから、ミルクに最終チェックをしてもらいました。
 ミルクのチェックとアーゼンラーナ様の微調整により、全く問題ないレベルになったのを確認して、全員でホッと一息つきます。
 先ほどみたいに指摘されたら困りますものね。

「休憩がてら、お茶でも飲もうぜ。こっちだ」

 静寂を取り戻した厨房から出てカカオに案内されたのは、すぐ隣にある小さな部屋でした。
 可愛らしいテーブルと椅子が置かれた部屋で、カカオとミルクが休憩する時に使っているのだとか。
 愛の女神様には失礼かもしれないけれども……と言い、カカオが恐縮して見せたのだけれども、アーゼンラーナ様はとても嬉しそうに微笑み、カカオの頭を撫でて「良い子じゃな。気にせぬ。反対に、己のテリトリーに招いてくれたことを感謝する」と、おっしゃってくださいました。
 カカオもですが、アーゼンラーナ様も優しいですよね……見ているこちらがほっこりしてしまいます。
 美味しいお茶があるのだと、香りが良い紅茶をカカオが自ら準備をしてくれました。
 その紅茶にあう焼き菓子をミルクが準備し、小さな部屋で和やかにお茶を楽しみながら、本日の予定を話し合います。

 私は、このあとリュート様と一緒にレシピギルドへ向かう予定ですが、マリアベルは一度家に戻り、再び戻ってくる予定になっているのだとか。
 万が一にも怪我人が出たら対処できるように、いま打ち合わせ中の海中探索に力を貸してくれるようです。
 本当に心強くて助かりますよね。
 キュステさんが怪我をするとは思えませんが、いつ何があるかわかりません。
 それに、彼は不憫な傾向にあるので、大丈夫だと断言できない部分もあります。
 もう、あそこまでくると反対に凄いですよね。

 そんなことを考えながら、トントンと束になっている未登録のレシピを整えていたら、カカオが額を手で覆って「数がおかしいんだよ、マジで師匠はおかしいから……」と呟かれてしまいました。
 お、おかしくありませんから!
 普通ですよ、普通っ!

 そう反論しようとした私の手にあるレシピの束を、打ち合わせが終わって戻ってきた一同が見た瞬間、言葉を失ったように凝視されてしまい、あまりの反応に『普通』だと主張できなくなってしまうのでした。

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