67 / 558
第二章 外堀はこうして埋められる
絶体絶命のピンチ
しおりを挟む「何故みんな邪魔をするんじゃ……悪かったと……言おうとしていたのに……迷惑かけたから……いっぱい練習して……なのに……予定では黒の騎士団におるはずじゃったのに……居らなんだ上に……女を引き連れて浮かれて……なんなのじゃ……」
小さく聞こえた声は不穏な言葉を連ね、後半になればなるほど弱く掠れていく。
あれ?もしかして……リュート様を探していたのでしょうか。
以前のことを謝ろうとしていた?
だけど、私がいたからこじれてしまった……ということですか?
ポカンとしてしまったけれども、辛うじて彼女がリュート様に謝罪するためにここに来たのだということは理解しました。
だけど、直接謝るのは色々ハードルが高かったのか、春の女神様を引き連れて騒動を起こして黒の騎士団を巻き込み、お目当てのリュート様と接触を図ろうとしたけど居なかった上に、やっと見つけたのは良いけれども私というイレギュラーがいて……癇癪を起こしたと?
え、えっと……あれ?
結局、私が……悪いのでしょうか。
混乱する頭で考えていると、リュート様が私をおろして鋭い声でロン兄様の名を叫び、一気に緊張した気配が周囲に満ちる。
「折角……妾が折角……謝ろうと……うぅっ……うわあぁぁぁぁんっ!」
それはとんでもない、音という名の衝撃波だった。
リュート様とロン兄様、そして騎士団の方々以外は、膝から崩れ落ちクラクラする意識と信じられないほどの目眩を感じて立ち上がれない。
その爆発的な力を感じたのが一瞬だったのは、リュート様が展開する魔法陣の数々のおかげなのでしょう。
様々な模様と文字で緻密に描かれた、いつもよりも大きな魔法陣が複数浮かび上がり、恋の女神様の力に抗うように輝いては砕けていく。
1つ砕けては、追加の魔法陣が展開され、また砕け……それを何度もかなり速いペースで繰り返す。
リュート様が珍しく声を荒げて呪文らしき言葉を紡いでいるけれども、正確に聞き取ることが出来ないくらい、耳がまだわんわん言っている。
これは……鼓膜が破れなかったのが不思議なくらいですね。
魔法陣が砕かれ、新たな光の魔法陣をリュート様が3つ展開したところで、ようやく私の感覚も戻ってきた。
耳を押さえてうーっと唸っていた春の女神様も同じく復活したようで、目をパチパチさせている。
リュート様の額に汗が滲み、いつものような穏やかな表情ではなく必死の形相であった。
呆然とそれを見守ることしか出来ない私の腕の中で、春の女神様も何やら祈るように手を組み、愛らしい声に緊張を滲ませ言葉を紡ぐ。
次の瞬間、春の花々と蔦に守られた空間ができ上がり、その通路を渡ってロン兄様を含めたステージにいた方々がリュート様の後ろに避難してきた。
ロン兄様の指示により職員の方々は一般人と共に安全な場所へ移動する事になり、黒騎士様たちが壁となって、結界を張る係と誘導する係の二手に分かれる。
パニックを起こして二次災害を引き起こさないように冷静に行動してほしいと注意を促し、ロン兄様は騎士や一般人に声を張り上げて避難誘導を開始した。
皆さん、緊張した面持ちではあるのだけど慣れているのか、黒騎士様の指示に黙って従っているようです。
な……慣れてるのですか?
慌てていない方々に戸惑う私の耳に「聖騎士の家の方々がいるなら大丈夫だろう」という声が聞こえてきて、ここにリュート様とロン兄様がいるから、この方々は慌てる必要がないと判断しているのだとわかり胸が熱くなった。
ある程度統率がとれていることを確認すると、避難誘導の黒騎士様の1人に任せ、ロン兄様はすぐにこちらに戻ってくる。
「こうなると……この場では、リュート以外……無理だよね」
「ん……チェリシュ、守るしかできないの」
「春の女神様は、避難が完了するまで一般人を守ることに専念してね。恋の女神様はリュートに任せるしか無いけど……時期が悪いな。ルナちゃんの調整行ってるときだから、いつもより魔力総量が少ないだろうし」
大音量の恋の女神様の声による衝撃波を全てこちらに届かないように押さえ込み、自ら盾となって魔法を展開しているリュート様の魔力のほとんどは、私のために消費されてしまっているのだ。
私にも戦う力があったのなら……そう思わずにはいられないけれども、ないものねだりをするよりは、何か出来ることがないか考えましょう。
今できること、それは状況判断ですね!
そうと決まったら、注意してリュート様の動きを見守りましょう。
リュート様はこのままではマズイと判断したのか、一気に大量の魔法陣を展開して押され気味の状況を打開しようとしますが、圧倒的な力の差で追いやられていきます。
形勢不利なのは重々承知なのでしょう。
ロン兄様も、黒騎士の方々も、各々のスキルを使用してリュート様に回復や強化をかけていっているようでした。
騎士団の方々は多少の魔法が使えると言っても、リュート様のように使用できるわけではないようで、同時に2つが限界という事実に驚いてしまいます。
同時にパッと見ただけで20以上の魔法陣が展開しているリュート様の異質さが際立ち、一般の方々の目にどう写っているか不安になってきました。
また、あの……ジュストという方と比べられる結果になるのでしょうか。
「……くそっ……バカみてーな……出力しやがって!」
20ほどあった魔法陣が半分ほど消えてしまい、体にビリビリ伝わるような振動が、春の女神様の張った植物の結界越しに感じます。
そんな中、天から柔らかな陽光が降り注ぎ、リュート様がホッと息をつく。
「ありがてーな。太陽神の援護だけど、コレ以上の干渉は神界からじゃ制限されるだろうし、一回きりと考えるべきだな」
「いまので、どれくらい回復した?」
「半分ってところか……」
「いけそう?」
「ちょっと厳しい、騎士団の連中に強化中心にかけてくれって頼んで欲しい。余裕のあるやつは意識阻害系遮音魔法の広域展開を頼みたい」
「わかった」
ロン兄様が通信をしながらリュート様に魔法をかけていますが、彼の頬が次の瞬間ざっくり切れて血が飛び散ります。
リュート様と春の女神様の結界の隙間から衝撃波が侵入してきたということなのでしょうか。
状況がうまくつかめていないのは、自分が冷静ではないからだとわかっています。
落ち着きましょう……いま状況をちゃんと見極めなければ、リュート様の足手まといになりかねません。
最前列にリュート様、その後ろにロン兄様と私と春の女神様。
まだ思うように動けないけれども避難しようとする一般市民を守るために、黒騎士様たちが壁となっている。
リュート様の前と、市民を守る黒騎士様たちの前にも植物の蔦で出来た壁があり、一般人は二重の壁……いえ、リュート様とロン兄様と黒騎士様を入れて五重の壁に守られている状態ですから、問題はないでしょう。
ただ、守りの要となっているリュート様の魔力が底をついてきたのか、展開する魔法陣の数がどんどん減っていっている上に、速度も落ちてきています。
いけない、これは……
押され始めたのがすぐにわかった。
半分とは言え回復してもらった魔力でも追いつかないくらいだなんて、恋の女神様は大暴走してませんかっ!?
このままでは押し切られてしまいます!
あれ?
そういえば、リュート様って……お腹ペコリさんじゃなかったですか?
もしかして……
「ロン兄様。お腹ペコリさんだと、魔力って……」
「え?あ、ああ、腹ペコね……あ!それだとマズイ!リュートは魔力消費が増えるから、ダメ!」
「まさかのデバフ展開ですよっ!?」
「ルナちゃん、なんか持ってない!?」
つ、つい、ゲーム用語が出てしまいましたね、デバフは弱体化系ステータス異常という意味があります。
ロン兄様がツッコミいれなくてよかった……
とりあえず、食べるものです!
な、何か……何か……調味料ならあります。
マヨですね、あとは……あとは……ポーチタイプのアイテムボックスを確認しながら、そういえばポテサラが追加になるかもしれないと、隙を見てオーブンレンジでチンしておいたんでした!
ロン兄様がどこからともなく簡易テーブルを出して、ナイフやまな板、鍋にフライパン、簡易コンロまで用意してくださっていますが……こ、これは?
「ああ、黒の騎士団は野営もあるから、ある程度の野営セットは持ち歩いているんだよ。騎士団に入るとアイテムバッグを支給されるから、その中に入れておくんだ」
なるほど。
魔物退治をするということは、野営も当たり前なのですね。
でしたら、このテーブルや調理器具も納得です。
そして、私は急ぎ小さなナイフを使ってジャガイモをカットし、器に盛り付けてその上にマヨネーズをかけると、フォークを掴んでリュート様の元へ駆け寄る。
「リュート様!あーん!です!」
「は?ルナ!ここは危な……んぐっ……あ、うまっ!……はぁ……腹ペコにこれはいいな。マヨとジャガの相性抜群!」
あーんっと口を開くので、雛に餌をやっている気分でリュート様にポテトを運びます。
「やべぇ……フライドポテトが食いたくなってきた」
「了解です!これで最後ですから、すぐ仕込んできますね!」
「え……どこで料理……って、あ、ロン兄のか!」
最後のジャガイモをリュート様のお口に運び、先程よりも魔法陣の展開が早まったリュート様に少し安堵です。
しかし、このままではいけません。
リクエストのフライドポテトです!
ジャガイモを取り出して洗浄石で綺麗にし、芽をとってからくし切りにしていきましょう。
暫く水にさらしデンプン質を除去してから、水気をしっかり切る。
そして、密閉容器に綺麗に水分を拭き取ったジャガイモを入れ、小麦粉を入れてフタをしフリフリです!
「ふりふりー」
新たな結界を展開しながら、春の女神様が可愛らしく効果音をいれてくださいましたよ!
小麦粉がジャガイモにまんべんなくついたら、フライパンに並べます。
ここで油の登場です!
マヨネーズのときも使ったティール油を使いましょう。
この油は、日本で言うところの菜種油に近いもので、植物の種子から作られており独特の匂いや風味はなく、胃もたれしづらいのも特徴のようなのです。
並べたジャガイモが浸るくらいの油を入れて、火をつけたら強めの中火くらいであたためていきましょう。
油がしゅわしゅわ言い始めたら、少し火を落として中まで火を通します。
うん、これくらいですね。
料理スキルは、火が通った感覚を教えてくれるからとても助かります!
一旦油きりバットにジャガイモをうつして、油の温度をあげていきましょう。
180℃くらいになったら、ジャガイモをもう一度油に戻して、表面がカリッとするように揚げていきますよーっ!
調理小道具をポーチに入れておいてよかった。
菜箸様様です!
くるくるひっくり返し……ここです!
サッと一本残らず油から引き上げ、油切り用のバットに移して油を切ったあとボウルに入れて、熱いうちに塩をまぶしていきましょう。
半分はハーブソルトにまぶしてみましょうね。
あっつあつのフライドポテトが完成です!
「リュート様できましたよ!」
皿に盛り付けた二種類の塩味のフライドポテトをリュート様に持って行き、待ってました!と言うように笑う彼の口元に塩味から差し出しました。
「熱っ!……はふっ……うんまっ!ヤベェ、うま、久しぶりすぎてヤバイ!」
「ハーブソルト味もありますよ」
「それもくれ!」
ぱくっ!と大きくひと口で食べてますけど、火傷しませんか?
魔法陣の維持の為に両手が使えないリュート様のために、あーん必須ですね。
皿に盛り付けてあった分を空にしたリュート様は、気合充分です。
「さぁて……すこーし腹も満たされたし、避難完了まではなんとかなりそうだな!」
一気に魔法陣が出現する。
その数は30以上でしょうか……うわぁ……すごい数で今までとは比べ物にならない大きさですよ!
「ルナ。さすがに危ねーから下がっててくれ。ここからは、総力戦だ!ロン兄!」
「了解!騎士団で魔力に余裕のある者は強化に回れ!強化魔法の無い者は、この際なんでもいいから遮音系魔法、もしくは衝撃緩和か吸収系魔法を広域展開!」
リュート様の気合の掛け声とともにロン兄様の指示が飛び、黒の騎士団の方々が機敏な動きでそれぞれの配置について魔法陣を展開する。
統率の取れた動きは圧巻の一言であった。
リュート様、ロン兄様、黒の騎士団の方々が暴走した恋の女神の力に抗おうとする。
そして、後方の憂いを少しでも軽減しようと、春の女神様の結界が広域に展開された。
まさに総力戦といった風情である。
このまま押し切れるかもしれないと、僅かな光明を見出した……そんな中で、春の女神様がハッとした顔をしてリュート様を見た。
「リュー!あぶないの!」
その叫び声のあと、リュート様の目の前の結界が消失したと同時に彼の体が浮き、地面に叩きつけられる。
「ぐぅっ!」
それでも魔法陣を消さなかったのは根性と言っていい。
居ても経っても居られずリュート様の方に走り出した。
「リュート様!」
「来るな!」
鋭い声が私の動きを止めるけど、頭の中で誰かの声が響く。
『止まるな、行け!大切な者のそばを離れるな!』
その声に従い、地面に倒れ伏すリュート様のそばに駆け寄る。
次の衝撃波がきていることはわかっていた……だけど、この方をこれ以上傷つけることは許さない。
絶対にダメなのです!
契約紋が熱くなって金色の輝きが溢れ、桜色の粒子が散りはじめる。
『祈れ……無心に祈れ』
誰の声だろう。
疑問は一瞬であった。
祈れと言われ、すぐにあちらの世界で習慣になっていて体に馴染んだ、主神オーディナルへの祈りの型を取る。
丁度、契約紋を手のひらでクロスするような形で覆うスタイルであった。
そう、ソレでいいと漆黒の髪の青年の幻影が脳裏で笑う。
主神……オーディナル様?
「……マジかよ。防いだ?」
リュート様の呆然とした声を聞き、いつの間にか閉じていた瞼を開くと、どうやら続いて放たれた衝撃波を防ぐことに成功したようです。
えっと……私が?
いえいえ、今のはオーディナル様の加護ですよ。
祈っていたら叶えてくださったんです。
私の力ではありません……が、すごくクラクラしますね。
ふっと力が抜けてしまい、リュート様に抱きとめられます。
「ルーの次は、チェリシュが!頑張るのーっ!」
春の女神様の声が聞こえ、恋の女神様と私達の間を塞ぐように新たな結界を作り出しました。
その結界も徐々に削られ、ボロボロになっていくのがわかります。
暴走した神様って、本当にタチが悪いですね!
リュート様も私も満身創痍という風情です……先程の衝撃を辛うじて防いだと言えど、無傷ではありませんから致し方ありません。
グラグラする意識の中で、なんとか立ち上がろうとするのですが、難しく……ロン兄様が移動してきて私達を守るように立ちふさがります。
「ロン兄!」
「動けるようになったら移動して、魔法陣の維持頼むよ」
「ロン兄がタダじゃすまねーだろ!」
「何言ってんの。兄ってものはね、弟と妹を守るためだったら、とーっても強くなれるんだよ。だから、安心しなさい!」
次の攻撃がくる……!
ロン兄様が全て受け流してみせるというように、剣を構えて強化魔法を自分にかけているようだった。
だ、ダメです!
お願い、もう一度……いま先程の力をもう一度お貸しください!オーディナル様!
グラリと揺れる意識、ダメだ……今の私では一回が限度なのですかっ!?
「きゃぅっ」
私達のところまで走ってきて、目の前の結界を維持しようとしていた春の女神様が、堪えきれずに小さな悲鳴を上げて倒れるのを、リュート様と一緒に腕を伸ばして抱きとめ、守るように包み込む。
春の女神様を抱きしめる私を、その身をもって守るつもりで覆いかぶさり抱きしめるリュート様。
その前には、私達の盾になるように構えるロン兄様。
絶体絶命のピンチというものがあるなら、今なのだろう。
誰もが、襲い来るはずの衝撃に身構える。
その時だった───
空から黒い何かが舞い降りてきたのである。
ガシャリと重い音を立てて前に立ちはだかった黒い影は、巨大な盾を地面に突き立てるように設置すると、結界を突き破って襲いかかる衝撃波を難なく受け止めてしまったのだ。
うそ……すごい……あの衝撃波を物ともしない盾?
「弟のピンチに駆けつけるのは、兄の役目だな」
低く静かな声が響き、私はその人を改めて見上げる。
紺碧の短い髪に青銀の瞳……広い肩幅によく鍛えられた大きな体躯。
一見するととても怖そうに見えるのに、その瞳はとても優しい。
そして、彼の纏う空気は、彼らにとても酷似していた。
「テオ兄!」
「遅いよ兄さん」
「すまん。この盾を借りるのに少々時間がかかった」
私がすっぽり隠れてしまうほど……いえ、リュート様でも隠れてしまうくらい大きな盾を構えた彼らのお兄様で、ラングレイ家の長男にして次期当主である方は、私達を見て優しく目を細めたのである。
331
お気に入りに追加
12,219
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。