ギルガメシュとエンキドゥの関係がBLすぎて困惑中

黒川蓮

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ウトナピシュティムとノアの方舟

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 目を開けると、母が泣いていた。
「貴一!!」
 元の世界に戻ってきている!!

 母から聞いた。
 オレは川に落下した後、流されておぼれ死ぬ一歩手前で川で魚を捕るための大きな網に引っかかり、夜に作業中のおっさん二人に助けられたそう。
 病院に搬送されたが、水を飲み過ぎて数時間昏睡状態だったと。

「ギルはっ?」
 母は悲しそうな顔をした。
 ギルの容態はオレよりも深刻らしい。
 ギルはオレを助けようとして川に自ら落ちたあと、オレよりかなり遅れて発見されたと。

 そんな……
 オレは気分が暗くなった。

 でもすぐに一つの仮説を立てた。
 オレはエンキドゥとして死んだあと、元の世界に戻ってきた。
 ということは、ギルもギルガメシュとしての人生が終わり、死を迎えたら元の世界に戻れるのではないだろうか?

 エンキドゥが死んでからのギルガメシュの行動はこうだ。
 まずギルガメシュは最愛の友が死んだことを嘆き悲しみ、金やラピスラズリを使った立派な像を作ったり、紅玉石の入れ物にハチミツ、青玉石の入れ物にバターを入れて、エンキドゥが死後の世界で食べ物に困らないようにと願う。
 
 エンキドゥの死を悲しんでいるうちに、死ぬことが怖くなったギルガメシュは大洪水のあとも生き延びたというウトナピシュティムに不死について尋ねようと旅に出る。
 途中、サソリ人間に遭遇したり、酒場の女性に「人間はいつか死ぬものだから生を楽しみなさい」と諭されるも、エンキドゥのことを思い続けるギルガメシュは人生について明るく考えられない。

 ギルガメシュはウトナピシュティムの元にたどり着く。
 ウトナピシュティムは船をつくり、家族と船大工と全ての動物をのせて大洪水から助かり、神によって永遠の命をもらったことを語る。
 この大洪水の話は旧約聖書のノアの方舟に影響を与えたエピソードで有名だ。

 だが、ウトナピシュティムはギルガメシュに「神によって創られた人間であるならば必ず命には限りがある」と言う。
 ウトナピシュティムの妻は落胆するギルガメシュに海底に若返りの草があることを教える。
 ギルガメシュはその草を手に入れるも、草をヘビに食べられてしまい失意のままに帰還。
 ウルクの都市国家の建設に成功したらしいことが伺える言葉で物語は終わる。

 物語が終わったら、ギルはこの世界に戻って来るのではないか?
 そう思った。
 というよりも、そう思わないと、オレがギルガメシュのように悲しすぎた。
 ギル、頼むから早く目覚めてくれ。
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