ギルガメシュとエンキドゥの関係がBLすぎて困惑中

黒川蓮

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作品の補足

3分で分かる『ギルガメシュ叙事詩』のあらすじ

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 叙事詩じょじしとは英雄や歴史上の伝承を綴った長編文学のこと。
 
『ギルガメシュ叙事詩』はメソポタミア文明の文学作品で最も古い作品の一つ。
 
「最も古い作品の一つ」という表現は矛盾しているが(最も古いのは一つだろうとツッコミきそう)、大昔の時代のことは正確には分からないから。

 書いたのはシュメール人で、当時はまだ紙をつくる技術がなく、粘土板に楔型文字で記された。

 この粘土板はところどころ消失しているため、不足の部分は推察するしかない。

 ギルガメシュはシュメール第一王朝時代に都市国家ウルクに実在した第5代の王と言われている。

 ギルガメシュは紀元前2600年頃の人物とされており、粘土板は紀元前1300万年頃のものではないかということで、タイムラグがあり、もともとはシュメール語で書かれた物語だったのか、口頭伝承なのか、定かではない。

【ギルガメシュ叙事詩のあらすじ】

 ギルガメシュの父はウルクのルガルパンダ王、母は女神のニンスン。

 彼は半神半人。

 ギルガメシュは武勇に優れた偉大な王であり、英雄だったが、調子にのりすぎて天狗に。

 暴君と言われるも、ギルガメシュをいさめる者は誰もいない。

 都市国家ウルクの人々は、なんとかしてほしいと神に祈る。

 その願いを聞いた天神アヌは女神アルルに「ギルガメシュに対抗できる強者をつくれ」と命令。

 女神アルルはエンキドゥという強い男を作り出す。

 だがエンキドゥは、自分の天命を知らず、森で野獣のような生活を送っていた。

 ギルガメシュはエンキドゥの存在を耳にし、神聖娼婦シャムハトをエンキドゥのもとに送る。

 メソポタミアの時代には、宗教上の儀式として売春を行った娼婦が存在した。

 娼婦と7日間いちゃこらしたエンキドゥは毒気を抜かれたのか、野獣成分は薄れ、すっかり人間らしい英知を身に付ける。

 だがエンキドゥは、花婿よりも先に女性の初夜権を行使するギルガメシュに憤慨し、戦いを挑む。

 二人はお互いの力を確かめ合うように戦うも、結局引き分け。

 自分と同じくらい強い男に初めて出会ったギルガメシュは感激し、二人は強い絆で結ばれていく。

 ギルガメシュは王として神殿建設をせねばならなかったが、ウルクのあるメソポタミア南部は森が枯渇し、木材不足だった。

 そこでギルガメシュはレバノン杉を手に入れるために森の守護者フンババを倒しに行こうとエンキドゥに言う。

 エンキドゥはフンババと面識があり、気乗りしない。
 
 だが、友であるギルガメシュの誘いを断れないエンキドゥはついて行くことにする。
 
 出立前、ギルガメシュの母親がエンキドゥを養子にし、二人は義兄弟になる。

 二人は協力してフンババを襲撃。

 負けると感じたフンババは、エンキドゥに「おまえが小さいとき、殺さず助けてやったのに」と命乞いをする。

 だが、ギルガメシュはエンキドゥにひるまず戦えと言う。

 フンババはエンキドゥに「おまえにギルガメシュより長くは生きられない呪いをかける」と言って死ぬ。

 エンキドゥはシャーマンのような霊力でフンババの力を抑え込む描写がある。

 エンキドゥは物語の中で、ギルガメシュの盟友として描かれているが、家来か、奴隷か、神聖男娼だったのではないかという説もある。

 この時代のごく自然なことなのかもしれないが、ギルガメシュ叙事詩には性的描写がわりとある。

 フンババを倒した二人はレバノンの杉を大量に手に入れることに成功し富を得る。

 帰還したギルガメシュの雄々しい姿に女神イシュタルは一目ぼれ。

 女神イシュタルは半神半人のギルガメシュに「私と結婚してくれたら神と同等の永遠の命を授ける」と言う。

 ところが、ギルガメシュはこれまで女神イシュタルと交際してきた男たちの末路がいかに悲惨であったかを語り、何もそこまで言わんでも、というくらいに女神を侮辱する。

 怒り狂った女神イシュタルはウルクを滅ぼそうと天の牛を放つ。

 侮辱されただけで国を滅ぼそうとする女神イシュタル様こわすぎ!

 でも、ギルガメシュとエンキドゥは共に戦い、守りきる。

 エンキドゥは牛の肉をイシュタルに投げつけ、イシュタル激おこ。

 ギルガメシュかエンキドゥ、どちらかを殺さないと気が済まない女神イシュタルは他の神に相談。

 結果、エンキドゥに死をもたらすことが決定。

 自分が死ぬことを夢で知ったエンキドゥはそのことをギルガメシュに告げ、彼のそばで死ぬ。

 最愛の友を失ったギルガメシュはエンキドゥの亡骸に花嫁のベールをかけ、生き返ってほしいと願うが奇跡は起きない。

 エンキドゥの死をきっかけに、ギルガメシュは永遠の命に興味を持ち、大洪水が起きても生き延びたというウトナピシュティムを訪ねることにする。

 この大洪水の話はのちに作られた旧約聖書のノアの方舟はこぶねに大きな影響を与えたエピソードだと言われている。

 ギルガメシュは向かう途中でサソリ人間を倒し、ウトナピシュティムの元にたどり着く。

 助言をもらったギルガメシュは不老不死の効果があるという海底の草を手に入れることに成功するが、帰途でヘビにその草を食べられ、失意の思いで帰還する。

 その後は真面目に王として働き、死ぬ。

 個人的にはギルガメシュとエンキドゥが仲良く頑張っているシーンが一番好きで、エンキドゥが死んだあとの話はギルガメシュの悲しみがひしひしと伝わってきて、読んでて気分が暗くなる。

 だが、そこにこそ、どんなに優れた人物であっても、死から免れることはできないし、命には限りがあるのだという生と死の深いテーマを感じ、文学作品だけど、哲学的だとも感じる。

 ギルガメシュは優れた人物だが、人生は思い通りにならないことの連続。

 そんな人生の教訓を教えてくれる不朽の名作だ。

【参考文献】
 矢島文夫訳『ギルガメシュ叙事詩』筑摩書房 1998年
 月本昭男訳『ギルガメシュ叙事詩』岩波書店 1996年
 三笠宮崇仁親王(監)小林登志子、岡田明子『古代メソポタミアの神々』集英社 2000年
 小林登志子、岡田明子『シュメル神話の世界 粘土板に刻まれた最古のロマン』中公新書 2008年
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