ギルガメシュとエンキドゥの関係がBLすぎて困惑中

劇の練習

　シュメール人は黒い目、黒い髪だったって言われてる。
　でも、神様の彫像は青い目。
　だから、青い目のギル君はこの役にぴったりだわ～。
　ギルガメシュは人間の王と女神から生まれた混血なの。
　
　オレは秋川の言葉を思い出していた。　
　憎らしいほど均整のとれた長身のギル。
　確かにギルガメシュ役にぴったりだ。

　オレは今、本番前の最後の練習をしている。
　絶交を言い渡した友人の前で演技するのは苦痛だ。
　言うのは明後日にすればよかったと後悔している。
　もの言いたげなギルの顔が目に痛い。
「帰り、一緒に帰ろう」と言われた。
　同じ方向だから仕方ない。

　それにしても、長いカツラがうっとうしい。
　オレが演じるエンキドゥは、女のように長い髪を持つ人物。
　容姿はギルガメシュに似たイケメンで、背はギルガメシュより低い。
　だから、オレが適任だと。
　勝手に決められた。

　秋川女史がディスカウントショップで買ってきた安いカツラが重たい。　
　オレはけして背が低いほうではないが、長身のギルから見下ろされるのが面白くない。
　誰だって、男に生まれてきたら、見上げるより見下げるほうが気持ちがいいだろ。

　あれこれ考え事をしていたら、セリフを間違えた。
「明日が本番なのよ。しっかりして」
　秋川女史がイヤミたっぷりに言う。
　この女、メガホンを握る監督役よりも、ギルガメシュにフラれて逆ギレの身勝手な女神イシュタル役のほうが似合いそうだと妄想する。
　勝手にオレに役を押しつけて、オレが上手くできないと勝手に怒ってる。
　ああ、苦痛だ。
　劇の練習も、帰りにギルと話すのも。
　何もかもイヤになってきた。