アルファポリス表紙作成方法 ド素人がパワポでお金をかけずに簡単な表紙づくり解説【電子書籍表紙作成にも応用可能】  

黒川蓮

文字の大きさ
上 下
7 / 11

パワポのみでイラストちっくな表紙作成 図形を利用

しおりを挟む


(しっかりしろ、俺。今はユリシーズのことだけ考えろ)

 ゆっくりと肺から息を吐きだして――今度は、大きく吸い込む。
 空気は悪いが、それでも、脳に目一杯の酸素を送り込む。

 そして気合いを入れ直し、脳内で出口までの距離をはじき出した。

 ――入口から崩落場所までにかかった時間はおよそ二十分。
 だが、うち半分以上は魔物との戦闘に費やした。

 ということは、実際に歩いた時間は長くて十分。歩行速度は分速八十メートル……だが、実際はもっと遅かっただろうし、立ち止まったりもした。それを考慮すると、分速六十メートルくらいだろうか。
 ――となると……。

(せいぜい六百メートルってところか。だが既に半分は過ぎているはず。つまり残りは三百メートル。……ハッ、楽勝だ)

 こうやって数値に表すと、漠然とした不安が消える気がする。

 データは希望にも絶望にもなり得るが、出口があるとわかっている今は希望の方だ。
 このまま魔物と遭遇しなければ、五分後にはマリアのところに辿り着けるのだから。


 ――だがそう思ったのも束の間、俺は直感的に足を止めた。
 前方から、何かが忍び寄る気配がする。


「とうとう来たか……」


 俺は背中からユリシーズを下ろし、地面に横たえた。

 グレンは逃げてもいいと言ったが、この狭い坑道で、迫りくる魔物から逃げきるなど不可能に近い。
 たとえ逃げたとしても、今の右足の状態ではすぐに追いつかれるに決まっている。

 つまり、倒す以外の選択肢は――ない。


「俺だって、やるときはやるんだよ」


 俺は自身を鼓舞するように呟いて、聖剣を引き抜いた。
 正面で構え、近づいてくる敵の様子を伺う。

 そして数秒の後、暗闇から姿を現したのは、瘴気をたっぷり吸いこんだであろう巨大な蛇だった。

「……っ」

(――でかい)

 長さは十メートル近く。大きな顎に鋭い牙、魔物特有の赤い瞳。
 食事の後なのか、胴がいびつな形に盛り上がっている。

 そのシルエットに、俺はどうしようもなく勘づいてしまった。

「……こいつ、まさか……」

(人間を……喰ってやがる……!)

 ここに入ったときから違和感は感じていた。
 マリアは遺体が放置されていると言ったのに、実際は誰一人見当たらないことに。

 俺はその理由が、ここが入口付近だからだと思っていた。
 けれど違ったのだ。この蛇が、人間の身体を丸呑みにしていたからなのだ。

「――っ」

 ああ……駄目だ。怖い。怖くて……足がすくんでしまう。

 魔物は人を襲う。それはグレイウルフと戦って、よく理解していたはずなのに。
 ユリシーズが隣にいないことが、自分一人で戦わなければならないことが、こんなにも恐ろしいことだったなんて……。


 ――でも……。





「……来いよ」





 ユリシーズは俺を守ってくれた。だから今度は、俺がユリシーズを守る番だ。

 それに、俺が手にしているのは聖剣。天下の大神官、サミュエルの聖剣だ。蛇ごときに負けるはずがない。

 俺は大蛇を見据え、剣先を向ける。


「お前は俺が倒す。これは決定事項だ」


 魔物に人間の言葉がわかるわけがない。まして蛇だ。犬や猫ではなく、蛇。
 そんな奴に、何を言ったって無駄。そんなことは百も承知だ。

 けれどそれでも、俺は言わずにはいられなかった。

 殺さなければ、殺される。
 
 そんな状況で、俺はそうでも言わなければ、今にも逃げ出したくなる気持ちを抑えてはいられなかった。


ってやる」


 こいつは俺がここで殺す。
 それ以外に、俺たちが生き延びる方法はないのだから。


 俺は蛇と睨み合う。


 そして数秒の後――蛇が動きだすと同時に――俺は一気に間合いへと踏み込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ

youmery
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで小説を投稿させてもらう中で、気を付けていることや気付いたことをメモしていきます。 小説を投稿しようとお考えの皆さんの参考になれば。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

アルファポリスユーザーと世間一般のズレ2

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリス登録して半年経っての印象

昨日19万円失った話(実話)

アガサ棚
エッセイ・ノンフィクション
19万円を失った様とその後の奇行を記した物

処理中です...