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プロローグ“ 噂の四龍帝は山奥の村に ”
魯肉飯と暫しのお別れ
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昼食頃とは言えど激務の絶えない政府は昼頃に混み合うとかはあまり無い。四龍帝_永寿と宰相_穀雨は連れ立って食堂に向かった。
こんな時だが、サレア皇国について説明しよう。サレア皇国はその名の通り皇族により治められてきた国であり、現在でも天皇があらせられる。その天皇の右腕が宰相である穀雨。そして皇国でNo.3の力を持つのが四龍帝こと永寿。そして同格に首脳大臣。四龍帝の下には四天王が、首脳大臣の下には大臣が。四天王の下には軍隊が。大臣の下には政党が。軍隊の下には軍人が。政党の下には役人が。と言った具合で纏められており、現在の天皇は賢王としても名が知られており、この皇国が大して荒れないのもその天皇の力が大きい。
また政府内について、首脳大臣ら政治関係者には女性がちらほら居るが、四龍帝が纏める軍事関係者に女性は居ない。男所帯なのである。
だから四天王の彼らも、そんな男所帯に慣れきって、好きだなんて口走ったのだろうか?なんて四龍帝は思ったものの、その考えは今日の日替わりメニューの魯肉飯を目の前にしたら何処かへ吹き飛んでしまった。日替わりメニューの魯肉飯は永寿のお気に入りメニューなのだ。
魯肉飯の乗ったお盆を持ち、永寿と穀雨は向かい合ってテーブルに座る。此処はよくある食堂の作りをしており、長めのテーブルが6つぐらい揃っており、食堂の中では身分差は関係ないことになっている。
「それで?穀雨は俺になんの用だったんだ?」
魯肉飯を頬張りながら永寿は尋ねる。シャキシャキの玉ねぎがたまらなく美味い。もぐもぐと咀嚼しながら穀雨に要件を言うよう促した。穀雨は少食故に白玉と小豆のぜんざいを品の良い仕草で咀嚼している。穀雨は言いにくそうに眉根を寄せた後ぜんざいを飲み込み、重たい口を開いた。
「獣人国、タルラパン国から……正しく言えばタルラパン国の貴族ですね。その方からあなたの身柄を寄越せと文書を頂きました。以前タルラパン国の使者が来たのは覚えていますでしょう。その際あなたを見かけたようなのです。それで是非にと。」
重たい雰囲気とは裏腹に淡々と喋るものだから、永寿も暫く他人事のように聞いてしまった。魯肉飯を口に運び、咀嚼する。茶を飲む。そして漸く「え?」と言う声が出た。
「なんで?いや、ううん。おかしな話じゃない?向こうも確かに同性婚を認めてるし、向こうは一夫多妻も一妻多夫も受け入れてる。話を聞くに俺はどちらかと言えば前者かな?まぁそうじゃなかったとしても受け止められる訳ないんだけど……」
言いながら、使者って、貴族って誰だったっけ?と頭に浮かべては「嗚呼アイツか。」と一人合点した。やたら派手な、お腹の肥えた虎の獣人。確かにやけに視線を感じていたけれど、まさかそんなこと、あると思わないだろう。思い出してはゾワッと背筋が凍った。申し訳ないがおぞましく感じてしまったのだ。それに永寿は抱かれる趣味は無い。
にしても、と永寿は自分の体躯を想像した。鍛えに鍛えた、そこらの男の中だとかなりガッチリとした筋骨隆々の身体付き。顔立ちはまぁ……普通?黒髪黒目、上背だけはそこそこ。抱かれる方にはどう曲がっても転がらないような見目をしているのだ。
「勿論断ったんだよな?」
「当たり前でしょう。我が国の大切な存在ですよ。そう易々と引き渡す訳ない。」
穀雨がキッパリそう言ってくれるから、永寿はほっと胸を撫で下ろした。しかしその次に続けられた言葉にまた永寿の気持ちは沈む。
「けれど向こうは諦めてないようでした。それに……こう言ってはあれですが、あなたの周りは異常です。しばらく距離を開けても良いと思いますよ。」
「……穀雨もそう思うか?」
「はい。」
いつの間にかぜんざいを食べ終えていた穀雨は間髪入れず即答した。穀雨から見てもあれは異常らしい。そりゃそうなのかもしれない。弟子から求婚されるなんて夢にと思わないし、向こうも師匠なんか娶っても、旨みは地位しか無い訳で。だから最初から永寿は受け入れるつもりなんて毛頭なかったのだけれど。
穀雨は「そう言えば四天王は何をしてたんです?」と首を傾げて永寿に問い掛ける。永寿は言いにくそうに苦笑を零した。
◇◇◇
「___という訳なんだ。」
永寿が話終えると、穀雨は分かりやすく頭を抱えて唸った。そりゃそうだろう。穀雨からしてみれば昔馴染みが弟子らに求婚されているのだから。穀雨のその態度からしても普通じゃないことを重々承知した。
「本当にお前ってやつは昔から……」
「俺にもよくわかんねーんだよ、どうすれば良いのか分かんない。けど答える気は無いんだよ。」
いつの間にか砕けた言葉になった穀雨がじっと永寿を見詰めては、重たい溜息を吐いた。穀雨の言わんとしていることは、何となく分かった。分かったけれど、どうか言わないでくれと願ってしまった。
魯肉飯はすっかり冷めてしまった。半分も残ってなかった魯肉飯をかき込んでは、穀雨は「しばらく帝都から離れた方が良いかもな」と至極冷静に告げた。その判断はなかった永寿は一瞬ぽかんとしたが、穀雨の言うことはきっと最もなのだろうとまた理解した。
「獣人国の件もある。そしてお前らの弟子からの求婚の件もある。ほとぼりが冷めるまで帝都から離れても良いんだろうな。」
穀雨はボソッとそう言った。その言葉を聞いて永寿は「成程」と肯定の意を示した。確かにこんなゴタゴタで慌ただしい中だ。少しぐらい休んでみても良いかもしれない。永寿がふむふむと考え込むのを見ては、穀雨は自分が言ったのにも関わらず「……言わなきゃ良かった」と頭を抱えてしまっていた。
こんな時だが、サレア皇国について説明しよう。サレア皇国はその名の通り皇族により治められてきた国であり、現在でも天皇があらせられる。その天皇の右腕が宰相である穀雨。そして皇国でNo.3の力を持つのが四龍帝こと永寿。そして同格に首脳大臣。四龍帝の下には四天王が、首脳大臣の下には大臣が。四天王の下には軍隊が。大臣の下には政党が。軍隊の下には軍人が。政党の下には役人が。と言った具合で纏められており、現在の天皇は賢王としても名が知られており、この皇国が大して荒れないのもその天皇の力が大きい。
また政府内について、首脳大臣ら政治関係者には女性がちらほら居るが、四龍帝が纏める軍事関係者に女性は居ない。男所帯なのである。
だから四天王の彼らも、そんな男所帯に慣れきって、好きだなんて口走ったのだろうか?なんて四龍帝は思ったものの、その考えは今日の日替わりメニューの魯肉飯を目の前にしたら何処かへ吹き飛んでしまった。日替わりメニューの魯肉飯は永寿のお気に入りメニューなのだ。
魯肉飯の乗ったお盆を持ち、永寿と穀雨は向かい合ってテーブルに座る。此処はよくある食堂の作りをしており、長めのテーブルが6つぐらい揃っており、食堂の中では身分差は関係ないことになっている。
「それで?穀雨は俺になんの用だったんだ?」
魯肉飯を頬張りながら永寿は尋ねる。シャキシャキの玉ねぎがたまらなく美味い。もぐもぐと咀嚼しながら穀雨に要件を言うよう促した。穀雨は少食故に白玉と小豆のぜんざいを品の良い仕草で咀嚼している。穀雨は言いにくそうに眉根を寄せた後ぜんざいを飲み込み、重たい口を開いた。
「獣人国、タルラパン国から……正しく言えばタルラパン国の貴族ですね。その方からあなたの身柄を寄越せと文書を頂きました。以前タルラパン国の使者が来たのは覚えていますでしょう。その際あなたを見かけたようなのです。それで是非にと。」
重たい雰囲気とは裏腹に淡々と喋るものだから、永寿も暫く他人事のように聞いてしまった。魯肉飯を口に運び、咀嚼する。茶を飲む。そして漸く「え?」と言う声が出た。
「なんで?いや、ううん。おかしな話じゃない?向こうも確かに同性婚を認めてるし、向こうは一夫多妻も一妻多夫も受け入れてる。話を聞くに俺はどちらかと言えば前者かな?まぁそうじゃなかったとしても受け止められる訳ないんだけど……」
言いながら、使者って、貴族って誰だったっけ?と頭に浮かべては「嗚呼アイツか。」と一人合点した。やたら派手な、お腹の肥えた虎の獣人。確かにやけに視線を感じていたけれど、まさかそんなこと、あると思わないだろう。思い出してはゾワッと背筋が凍った。申し訳ないがおぞましく感じてしまったのだ。それに永寿は抱かれる趣味は無い。
にしても、と永寿は自分の体躯を想像した。鍛えに鍛えた、そこらの男の中だとかなりガッチリとした筋骨隆々の身体付き。顔立ちはまぁ……普通?黒髪黒目、上背だけはそこそこ。抱かれる方にはどう曲がっても転がらないような見目をしているのだ。
「勿論断ったんだよな?」
「当たり前でしょう。我が国の大切な存在ですよ。そう易々と引き渡す訳ない。」
穀雨がキッパリそう言ってくれるから、永寿はほっと胸を撫で下ろした。しかしその次に続けられた言葉にまた永寿の気持ちは沈む。
「けれど向こうは諦めてないようでした。それに……こう言ってはあれですが、あなたの周りは異常です。しばらく距離を開けても良いと思いますよ。」
「……穀雨もそう思うか?」
「はい。」
いつの間にかぜんざいを食べ終えていた穀雨は間髪入れず即答した。穀雨から見てもあれは異常らしい。そりゃそうなのかもしれない。弟子から求婚されるなんて夢にと思わないし、向こうも師匠なんか娶っても、旨みは地位しか無い訳で。だから最初から永寿は受け入れるつもりなんて毛頭なかったのだけれど。
穀雨は「そう言えば四天王は何をしてたんです?」と首を傾げて永寿に問い掛ける。永寿は言いにくそうに苦笑を零した。
◇◇◇
「___という訳なんだ。」
永寿が話終えると、穀雨は分かりやすく頭を抱えて唸った。そりゃそうだろう。穀雨からしてみれば昔馴染みが弟子らに求婚されているのだから。穀雨のその態度からしても普通じゃないことを重々承知した。
「本当にお前ってやつは昔から……」
「俺にもよくわかんねーんだよ、どうすれば良いのか分かんない。けど答える気は無いんだよ。」
いつの間にか砕けた言葉になった穀雨がじっと永寿を見詰めては、重たい溜息を吐いた。穀雨の言わんとしていることは、何となく分かった。分かったけれど、どうか言わないでくれと願ってしまった。
魯肉飯はすっかり冷めてしまった。半分も残ってなかった魯肉飯をかき込んでは、穀雨は「しばらく帝都から離れた方が良いかもな」と至極冷静に告げた。その判断はなかった永寿は一瞬ぽかんとしたが、穀雨の言うことはきっと最もなのだろうとまた理解した。
「獣人国の件もある。そしてお前らの弟子からの求婚の件もある。ほとぼりが冷めるまで帝都から離れても良いんだろうな。」
穀雨はボソッとそう言った。その言葉を聞いて永寿は「成程」と肯定の意を示した。確かにこんなゴタゴタで慌ただしい中だ。少しぐらい休んでみても良いかもしれない。永寿がふむふむと考え込むのを見ては、穀雨は自分が言ったのにも関わらず「……言わなきゃ良かった」と頭を抱えてしまっていた。
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