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第三節 段々と冷えこむきせつ
第25話 クリスマス・イヴ
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箱根旅行から程無くしてのクリスマス・イヴの日。
明日香は、慎太郎に呼び出され大学に来ていた。
以前から、この日は慎太郎の部屋で二人静かに過ごそうと決めていた。しかし昨日のお昼に連絡があり、明日香は大学構内のあの屋外テーブルに赴く。
「急にごめん」
慎太郎がそう言うと、途端に重い沈黙がその場を包み込んだ。
構内に他の人の気配は全く無い。沈黙は当人たちで破らねばならない。
急な予定の変更と彼の態度に、明日香は不穏な空気を感じずにはいられない。
内心怯え、今ある沈黙からは恐ろしさすら感じる。
だが、彼が言うまで待つ――と明日香は決めていた。
「手術の話、恭子さんから聞いた」
重く響く彼の言葉に、明日香は「うん」と静かに応える。
「本当に手術受けないつもり?」
「うん」
「それは俺のため?」
「……」
明日香は答えなかった。
すると、彼は更に質問を重ねた。
「俺がナオヒトだから?」
「……」
明日香はまたも答えなかった。
「俺は、明日香は手術を受けるべきだと思う」
明日香は何も答えない。
――その代わり、問い返した。
「慎太郎は、私の傷――蓮の様な傷が治っても、私を好きでいてくれる?」
「……」
今度は彼が、何も答えなかった。
彼には答えられなかった。
それが答えだった。
「……そう」
明日香は慎太郎の答えを理解した。
そして、質問に対してようやく、真っ直ぐと力強く答える。
「手術は受けない。私には……慎太郎が居なきゃダメなんだよ」
自分がそう答えると彼はわかっていた――そんな気がした。
そして同じ様に、明日香にも彼が出す答えが分かってしまっていた。
「……少し距離を置こう」
それ以上の言葉は無く、再びその場所は沈黙に満ちた。
明日香は、慎太郎に呼び出され大学に来ていた。
以前から、この日は慎太郎の部屋で二人静かに過ごそうと決めていた。しかし昨日のお昼に連絡があり、明日香は大学構内のあの屋外テーブルに赴く。
「急にごめん」
慎太郎がそう言うと、途端に重い沈黙がその場を包み込んだ。
構内に他の人の気配は全く無い。沈黙は当人たちで破らねばならない。
急な予定の変更と彼の態度に、明日香は不穏な空気を感じずにはいられない。
内心怯え、今ある沈黙からは恐ろしさすら感じる。
だが、彼が言うまで待つ――と明日香は決めていた。
「手術の話、恭子さんから聞いた」
重く響く彼の言葉に、明日香は「うん」と静かに応える。
「本当に手術受けないつもり?」
「うん」
「それは俺のため?」
「……」
明日香は答えなかった。
すると、彼は更に質問を重ねた。
「俺がナオヒトだから?」
「……」
明日香はまたも答えなかった。
「俺は、明日香は手術を受けるべきだと思う」
明日香は何も答えない。
――その代わり、問い返した。
「慎太郎は、私の傷――蓮の様な傷が治っても、私を好きでいてくれる?」
「……」
今度は彼が、何も答えなかった。
彼には答えられなかった。
それが答えだった。
「……そう」
明日香は慎太郎の答えを理解した。
そして、質問に対してようやく、真っ直ぐと力強く答える。
「手術は受けない。私には……慎太郎が居なきゃダメなんだよ」
自分がそう答えると彼はわかっていた――そんな気がした。
そして同じ様に、明日香にも彼が出す答えが分かってしまっていた。
「……少し距離を置こう」
それ以上の言葉は無く、再びその場所は沈黙に満ちた。
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