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第22章 淫紋の宝珠編
第360話 聖女アウレリアの受難
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ウェスタニア神聖国元首であるソルティア・グランヴェール教皇は、女神の神託を受けた4名の少女を聖都セントフィリアの女神大神殿へ送るに当たり、国として責任を持って送り届けるのが筋であろうと考えた。
その為にはどうすべきか聖職者を集めた会議で協議した結果、ウェスタニア神聖国として使節団を派遣するのが妥当であろうと言う結論に達した。
そして折角の機会なので、聖都と女神大神殿を視察させようと考えたのだ。
そのような理由で、護衛60名を警護につけた大人数の使節団を派遣することにしたのだ。
聖都セントフィリア使節団は下記の女性12名と決まった。
団長 エレノーラ・コンスタンティン大司教(35歳、アウレリアの母)
副団長 アレッサ・ルクーレビア司教(30歳)
団員 アウレリア・コンスタンティン司教(16歳、女神の神託を受けし者)
団員 ミレイユ・アルテミリア司祭(16歳、女神の神託を受けし者)
団員 サリーナ・ハイネレーゼン司祭(16歳、女神の神託を受けし者)
団員 エリーゼ・ステアローズ司祭(16歳、女神の神託を受けし者)
団員 他女性神官6名(18歳から25歳の女性)
使節団一行は2台の馬車に分乗し、前後を護衛60名(騎兵12名、歩兵48名)に警護させ、途中何度も宿営しながらソランスター国境まで20kmの位置まで到達していた。
暫く進むと最後の難所である峠道に差し掛かった。
その道は高さ20mほどの丘に挟まれ、道幅は3m程と狭く馬車がすれ違えないほどである。
暫く進んでいくと、丘の両側で待ち伏せしていた盗賊が弓矢を射掛けて来た。
「て、敵襲、敵襲~、馬車を、馬車を守れぇ~」
護衛隊長は、兵達に馬車を守るよう命じたが、一人また一人と敵の矢を受け倒れていった。
エレノーラ大司教が馬車の小窓から辺りを伺うと、雨のように弓矢が降り注ぎ、次々と兵たちに刺ささるのが見えた。
「し、心配ありません、きっと兵たちが守ってくれます」
大司教は少女たちを勇気づけようと精一杯微笑んだ。
予想だにしない事態にパニック状態に陥った兵たちは、短時間で3分の1が戦闘不能に陥った。
残った40名ほどの護衛兵士は、決死の覚悟で女性たちを守ろうと馬車を背に体制を立て直した。
弓矢による攻撃が止むと新手が現れた。
街道の前方と後方から騎馬に乗った80名ほどの盗賊が槍や長剣を振り翳し、こちらを目掛けて駆けて来たのだ。
馬に乗った盗賊は波状攻撃を仕掛け、奇襲を受けた護衛の兵士達は防戦一方となり、一人また一人と兵の数は減って行った。
騎馬攻撃の合間には弓隊に依る攻撃が繰り返され、遂に護衛兵士は全滅したのである。
戦闘に勝利した盗賊達は馬車の扉を蹴破り、中に乗っていた女たちを外へ引きずり出し馬車の前に並べた。
馬車に乗っていたのは12名の女性であった。
「お首領ぁ、今回は上玉揃いですぜぇ」
そう言ったのは盗賊の騎馬隊を仕切る騎馬頭のホンマーニ・ナンデヤネンである。
「ほう、そりゃあ儲けもんだ。
おい、女どもの顔をよく見せろ」
そう言ったのは首領のミタメーガ・ゴクドーである。
見るからに極悪人と言う風体の首領は部下に命じ、女の顔を一人ひとり確かめた。
女性たちは、盗賊の手下に脅され、怯えながら首領の方を向いた。
「おぉ、こいつはかなりの上玉だ。
きっと高く売れるぜぇ」
ゴクドーが目を付けたのは、聖女アウレリアであった。
「その前に味見しとかないとなぁ…」
ゴクドーは舌舐めずりした。
「お首領、オイラにも一人味見させてくださいよ」
「ふん、仕方ねぇなあ…
だが、あの女はオレが味見するからな。
お前は他の女にしろよ」
「お首領ぁ、その辺は心得てますって…」
そう言いながらナンデヤネンは下卑た笑みを浮かべた。
「おい、お前ら、女どもを馬車に乗せてアジトに運べ!
大事な商品だから大切に扱えよ、分かったな!」
予想もしない盗賊の襲撃を受け、護衛全員が死亡と言う惨劇にアウレリアは絶望した。
女神フィリアに仕え、女神大神殿で司教として奉職することが叶わなくなったのだ。
何の因果であろう、盗賊の首領は自分を凌辱し、その後どこかへ売ると言っていた。
これから自分に降りかかるであろう災厄を思うと涙が溢れた。
アウレリアは盗賊のアジトへ向かう道中、必死に祈った。
女神様、フィリア様、誰か、誰か助けて…
涙が頬を伝い『聖女の指輪』に一粒滴り落ちた。
その瞬間、『聖女の指輪』が黄金色に光り輝き、辺りを眩いばかりの光が包みこんだ。
「お、おい、あの光はなんだ」
「今、確かめて来ます、少々お待ちを…」
「お首領、なんか指輪が光ってるみたいですが、取り上げますか?」
「指輪だと?
まあいい、放おっておけ」
盗賊の一団約120名は、街道を逸れアジトへと続く細い道を歩き始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛行船『空飛ぶベルーガ号』は救難信号が発せられた『聖女の指輪』の位置情報を元に、全速力で航行していた。
情報は皆無に等しい。
分かってるのは、次の2つだ。
①聖女の指輪の所持者が救助を求めている
②救難信号が発せられている位置
飛行船は、ほどなく指定の座標軸に到着した。
この辺りはソランスター国境を超え、隣国であるウェスタニア神聖国の領空である。
この世界にはまだ領空と言う概念が無いので、領空に入っても問題ないだろう。
『空飛ぶベルーガ号』はステルスモードのまま急降下し、地上100mで静止した。
コックピットの窓から地上を眺めると、恐らく盗賊と思われる一団が2台の馬車を囲んで街道から細い道へ誘導しているところであった。
飛行船の生体探知レーダーの反応を見ると馬車の中には12個の青い点があり、それを124個の赤い点が囲みながら移動しているのだ。
正確な状況把握は難しいが、赤い点が敵であることは間違いない。
恐らくここら一帯を縄張りとする盗賊であろうことは容易に想像できた。
「カイト様、状況を判断すると民間人の馬車が盗賊に襲撃され、アジトに連行される途中と言ったところでしょうか?」
そう言ったのは秘書のセレスティーナである。
「どうやら、セレスティーナの分析通りだな。
『聖女の指輪』の持ち主は後ろの馬車に乗っているようだ」
ある程度の状況は分かったが、相手が124名となると簡単には手出しできない。
こちらの戦力はS級冒険者のステラ、元聖騎士隊女戦士のセレスティーナ、現役聖騎士隊女戦士のリリーナ、フェリン、アンジェリーナ、レクシア、ジュリアーナ、それにオレを加えた総勢8名である。
百戦錬磨のステラや聖騎士隊のトップクラス女戦士が6名もいるからと言って、人質のことを考慮すると8対124では余りにも分が悪い。
因みにオレもステラから週3回ほど戦闘訓練を受けているので女戦士並にとまでは行かないが、ある程度は戦える筈だ。
これは何か策を講じなければ、人質を救出することは難しいだろう。
さて、どうするオレ。
この飛行船にゲートを設置し、王都や領都から応援を呼ぶことも可能だが、飛行船の収容人数には自ずと限界がある。
オレは暫く考えて、ある作戦を思いついた。
こんなこともあろうかと、異次元収納に保管していたある特別なポーションを取り出した。
そのポーションは10本ほどしかないが、恐らくそれで十分だろう。
オレは搭乗メンバー全員を集めて作戦会議を開いた。
「なるほど、またあの手を使うのですね」
かつてその作戦に参加したステラ、セレスティーナ、アンジェリーナの3名はほくそ笑んだ。
「あと、使うのはこれだな…
これがあると捕縛が簡単なんだ」
オレは異次元収納からもう一つの小道具を取り出した。
その為にはどうすべきか聖職者を集めた会議で協議した結果、ウェスタニア神聖国として使節団を派遣するのが妥当であろうと言う結論に達した。
そして折角の機会なので、聖都と女神大神殿を視察させようと考えたのだ。
そのような理由で、護衛60名を警護につけた大人数の使節団を派遣することにしたのだ。
聖都セントフィリア使節団は下記の女性12名と決まった。
団長 エレノーラ・コンスタンティン大司教(35歳、アウレリアの母)
副団長 アレッサ・ルクーレビア司教(30歳)
団員 アウレリア・コンスタンティン司教(16歳、女神の神託を受けし者)
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暫く進むと最後の難所である峠道に差し掛かった。
その道は高さ20mほどの丘に挟まれ、道幅は3m程と狭く馬車がすれ違えないほどである。
暫く進んでいくと、丘の両側で待ち伏せしていた盗賊が弓矢を射掛けて来た。
「て、敵襲、敵襲~、馬車を、馬車を守れぇ~」
護衛隊長は、兵達に馬車を守るよう命じたが、一人また一人と敵の矢を受け倒れていった。
エレノーラ大司教が馬車の小窓から辺りを伺うと、雨のように弓矢が降り注ぎ、次々と兵たちに刺ささるのが見えた。
「し、心配ありません、きっと兵たちが守ってくれます」
大司教は少女たちを勇気づけようと精一杯微笑んだ。
予想だにしない事態にパニック状態に陥った兵たちは、短時間で3分の1が戦闘不能に陥った。
残った40名ほどの護衛兵士は、決死の覚悟で女性たちを守ろうと馬車を背に体制を立て直した。
弓矢による攻撃が止むと新手が現れた。
街道の前方と後方から騎馬に乗った80名ほどの盗賊が槍や長剣を振り翳し、こちらを目掛けて駆けて来たのだ。
馬に乗った盗賊は波状攻撃を仕掛け、奇襲を受けた護衛の兵士達は防戦一方となり、一人また一人と兵の数は減って行った。
騎馬攻撃の合間には弓隊に依る攻撃が繰り返され、遂に護衛兵士は全滅したのである。
戦闘に勝利した盗賊達は馬車の扉を蹴破り、中に乗っていた女たちを外へ引きずり出し馬車の前に並べた。
馬車に乗っていたのは12名の女性であった。
「お首領ぁ、今回は上玉揃いですぜぇ」
そう言ったのは盗賊の騎馬隊を仕切る騎馬頭のホンマーニ・ナンデヤネンである。
「ほう、そりゃあ儲けもんだ。
おい、女どもの顔をよく見せろ」
そう言ったのは首領のミタメーガ・ゴクドーである。
見るからに極悪人と言う風体の首領は部下に命じ、女の顔を一人ひとり確かめた。
女性たちは、盗賊の手下に脅され、怯えながら首領の方を向いた。
「おぉ、こいつはかなりの上玉だ。
きっと高く売れるぜぇ」
ゴクドーが目を付けたのは、聖女アウレリアであった。
「その前に味見しとかないとなぁ…」
ゴクドーは舌舐めずりした。
「お首領、オイラにも一人味見させてくださいよ」
「ふん、仕方ねぇなあ…
だが、あの女はオレが味見するからな。
お前は他の女にしろよ」
「お首領ぁ、その辺は心得てますって…」
そう言いながらナンデヤネンは下卑た笑みを浮かべた。
「おい、お前ら、女どもを馬車に乗せてアジトに運べ!
大事な商品だから大切に扱えよ、分かったな!」
予想もしない盗賊の襲撃を受け、護衛全員が死亡と言う惨劇にアウレリアは絶望した。
女神フィリアに仕え、女神大神殿で司教として奉職することが叶わなくなったのだ。
何の因果であろう、盗賊の首領は自分を凌辱し、その後どこかへ売ると言っていた。
これから自分に降りかかるであろう災厄を思うと涙が溢れた。
アウレリアは盗賊のアジトへ向かう道中、必死に祈った。
女神様、フィリア様、誰か、誰か助けて…
涙が頬を伝い『聖女の指輪』に一粒滴り落ちた。
その瞬間、『聖女の指輪』が黄金色に光り輝き、辺りを眩いばかりの光が包みこんだ。
「お、おい、あの光はなんだ」
「今、確かめて来ます、少々お待ちを…」
「お首領、なんか指輪が光ってるみたいですが、取り上げますか?」
「指輪だと?
まあいい、放おっておけ」
盗賊の一団約120名は、街道を逸れアジトへと続く細い道を歩き始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛行船『空飛ぶベルーガ号』は救難信号が発せられた『聖女の指輪』の位置情報を元に、全速力で航行していた。
情報は皆無に等しい。
分かってるのは、次の2つだ。
①聖女の指輪の所持者が救助を求めている
②救難信号が発せられている位置
飛行船は、ほどなく指定の座標軸に到着した。
この辺りはソランスター国境を超え、隣国であるウェスタニア神聖国の領空である。
この世界にはまだ領空と言う概念が無いので、領空に入っても問題ないだろう。
『空飛ぶベルーガ号』はステルスモードのまま急降下し、地上100mで静止した。
コックピットの窓から地上を眺めると、恐らく盗賊と思われる一団が2台の馬車を囲んで街道から細い道へ誘導しているところであった。
飛行船の生体探知レーダーの反応を見ると馬車の中には12個の青い点があり、それを124個の赤い点が囲みながら移動しているのだ。
正確な状況把握は難しいが、赤い点が敵であることは間違いない。
恐らくここら一帯を縄張りとする盗賊であろうことは容易に想像できた。
「カイト様、状況を判断すると民間人の馬車が盗賊に襲撃され、アジトに連行される途中と言ったところでしょうか?」
そう言ったのは秘書のセレスティーナである。
「どうやら、セレスティーナの分析通りだな。
『聖女の指輪』の持ち主は後ろの馬車に乗っているようだ」
ある程度の状況は分かったが、相手が124名となると簡単には手出しできない。
こちらの戦力はS級冒険者のステラ、元聖騎士隊女戦士のセレスティーナ、現役聖騎士隊女戦士のリリーナ、フェリン、アンジェリーナ、レクシア、ジュリアーナ、それにオレを加えた総勢8名である。
百戦錬磨のステラや聖騎士隊のトップクラス女戦士が6名もいるからと言って、人質のことを考慮すると8対124では余りにも分が悪い。
因みにオレもステラから週3回ほど戦闘訓練を受けているので女戦士並にとまでは行かないが、ある程度は戦える筈だ。
これは何か策を講じなければ、人質を救出することは難しいだろう。
さて、どうするオレ。
この飛行船にゲートを設置し、王都や領都から応援を呼ぶことも可能だが、飛行船の収容人数には自ずと限界がある。
オレは暫く考えて、ある作戦を思いついた。
こんなこともあろうかと、異次元収納に保管していたある特別なポーションを取り出した。
そのポーションは10本ほどしかないが、恐らくそれで十分だろう。
オレは搭乗メンバー全員を集めて作戦会議を開いた。
「なるほど、またあの手を使うのですね」
かつてその作戦に参加したステラ、セレスティーナ、アンジェリーナの3名はほくそ笑んだ。
「あと、使うのはこれだな…
これがあると捕縛が簡単なんだ」
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