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第21章 新リゾート開発編
第336話 廃嫡と婚約解消
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翌朝、オレは再び謁見の間を訪れた。
前日、国王から来るように言われていたのだ。
「陛下、お早うございます」
「カイト殿、朝早くから呼び出してすまんのう…」
「いえいえ、これも務めにございますから…」
今朝の国王は、如何にも疲れたと言うような顔をしていた。
「陛下、随分とお疲れのようですね…」
「うむ、昨夜も殆ど寝ておらんからのう…」
「何か、心配事でもございましたか…」
「カイト殿、良いか、これから申す事は、一切他言無用じゃ」
「畏まりました」
事前に釘を刺すとは…、かなり深刻な話のようだ。
「マリウスは…、王太子として不適格と判断した…
よって、ソランスター王国の王位継承権を剥奪し、廃嫡することにした」
クラウス国王の口から出たのは衝撃的な言葉だった。
「廃嫡…、そ、それは何故でございますか?」
「マリウスは……、女を愛せないのじゃ…」
国王の顔には、苦悩の表情が浮かび上がった。
マリウス王子は、正妃との間に生まれた4人姉弟の末っ子で、唯一の男子であり王統を継ぐ者として国王の期待も高く、幼少期から英才教育が施されてきた。
マリウスは頭脳明晰で素直な性格であり、期待に答えようと日夜努力を重ねてきたが、やや内向的で優しすぎるのが玉に瑕と国王は愚痴っていた。
オレが投獄された日、国王はマリウス王子にセリーナ王女を遠ざけた理由を白状させるため、王宮の奥座敷に幽閉したそうだ。
そして、口を割らないとカイトを不義密通の罪で死罪に処すると脅すと、マリウス王子は、ようやく重い口を開いたのだ。
マリウス王子が、国王に話したその理由とは、驚くべき内容であった。
「奴は、カイト殿に恋焦がれておるそうじゃ…」
「!」
国王の言葉はオレにとって、余りに衝撃的で返す言葉も無かった。
マリウスは、身体は男性であっても、自分の心は女性であり、逞しい男性に魅力を感じるのだと告白したそうだ。
現代の地球で言う『トランスジェンダー』であることを、マリウスは打ち明けたのだ。
自らの努めは、セリーナ王女と子を成し、王統を絶やさぬことだと、マリウスは理解していた。
しかし、自分の心を偽り、女性と褥を共にすることは、どうしても出来なかったのだ。
そしてセリーナ王女から同衾を迫られた頃から、彼女を避けるようになり、逆にマリウスに優しく接してくれるカイトに惹かれて行ったそうだ。
「カイト殿、子を成せぬ者に王統は委ねられん…」
「陛下……、心中お察し申し上げます」
マリウス王子が廃嫡となるとなれば、フローラ王女が王位継承権第1位に繰り上がる。
そうなれば、その婚約者であるオレが将来の王配となる訳だ。
今は、軽々しく王位継承権のことを口にすべき時期ではないし、マリウス王子の廃嫡は、何れ近い内に公となるであろうから、その時に話せば良いことだ。
「カイト殿に、折り入って頼みがあるのじゃ…」
「陛下、どのような事でございましょう」
「アプロンティアまで飛んで、レオニウス国王に今回の件を伝えて欲しいのじゃ…」
クラウス国王は、友好国であるアプロンティア王国元首レオニウス国王に、今回の一連の話を伝えなければならないが、非常にデリケートな話なので、オレを仲介して報告させ、交通整理して欲しいと言うのだ。
マリウス王子とセリーナ王女の婚約解消に至った経緯を説明し、それに関与したセレーナ王女の仕置をどうするのか相談するのが、おおよその任務だ。
この件は、オレも当事者なのだが、他に頼める者が居ないのだろう。
国王は、婚約解消となったセリーナ王女を、一緒に送り届けるように言った。
「畏まりました。
それでは、準備でき次第、アプロンティアへ向かいます。
ところで陛下、マリウス王子を廃嫡された後、どのように処遇なさるおつもりですか?」
「それも悩みの1つなのじゃ…
カイト殿、何か良い案はないかのう」
「もし差し支えなければ、私のところでお預かり致しましょうか?」
「カイト殿のところでか…、良いのか?」
「はい…、私の元には彼の3人の姉がおりますので、微に入り細に入り、面倒を見てくれると思います。
それに、ただ部屋に居るだけでは、マリウス王子の精神が持たないと思います。
何か自分が打ち込めることがあれば、気を紛らわせると思うのです」
オレは、マリウス王子がアイドルグループのダンスパフォーマンスに熱中していたのを思い出した。
廃嫡とは言え、まだ15歳の彼は、オレの義弟となるのだし、無下に見捨てる訳には行かないのだ。
「その件は、本人を含めて、私がアプロンティアから戻ってから、もう一度お話しましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日後、オレは婚約解消となったセリーナ王女と、オレの婚約者のセレーナを伴い、飛行船『空飛ぶベルーガ号』に乗り、アプロンティア王国の王都クリスタリアを目指していた。
今回、オレに同行したのは、セリーナとセレーナの2人の王女の他、アスナとサクラ、護衛のステラ、秘書のセレスティーナの6名だ。
もし時間が取れれば、新リゾート候補地のアプロンティア王国の山岳地帯にあるサファイアレイクを視察しようと思っていたのだ。
クリスタリア王宮前に飛行船を着地させると侍従が出迎え、オレは、レオニウス国王が待つ謁見の間へ案内された。
「カイト殿…、それにセリーナとセレーナも、予告もなしに儂に何の用じゃ?」
「はい、クラウス国王から重要任務を申し付けられて、参りました」
「重要任務だと?」
オレは、レオニウス国王に不義密通事件の顛末と、その後の投獄に至るまでの一連の出来事を説明した。
それを聞いたレオニウス国王は、2人の娘を怒鳴りつけた。
「な、何と言うことをしてくれたのだ…
お前たちの浅はかな考えが、カイト殿にどれほど迷惑を掛けたか分かっておるのか…。
カイト殿、貴公には何と詫びたら良いのか、言葉も見つからん」
そう言って、レオニウス国王は、深々と頭を下げた。
「陛下、その件はもう良いのです…
セリーナ王女もセレーナ王女も、それ相応の責めを追った訳ですし…」
オレは更に、マリウス王子が廃嫡となり、セリーナ王女と婚約解消に至った経緯を説明し、レオニウス国王はそれを了承した。
セレーナ王女とオレとの婚約解消の件を話したが、どうかそれだけは勘弁してくれと泣きつかれ、婚約は継続することとなった。
「この恩は一生忘れぬ…
カイト殿、無理を承知で、もう一つ頼みがあるのじゃが…」
「何でしょうか…」
レオニウス国王は、とんでも無いことを口にした。
「どうじゃ、ついでにセリーナも貰ってくれぬか…、一度は体を重ねた仲じゃろう」
オレは国王の言葉に絶句した。
「陛下、それは流石に無理でございます…」
「そうか、ではセリーナは尼になるしかないのう」
レオニウス国王は、セリーナ王女を出家させ剃髪し、尼にすると言い出した。
それを聞きセリーナ王女は、涙を流し始めた。
「陛下、カイト様をこれ以上、困らせてはいけません。
私は尼になり、一生国のために祈ります」
「姉上……」
姉の行末を心配したセレーナも泣き始め、収拾がつかなくなってきた。
擦った揉んだの末、結局オレは、セリーナ王女を引き取ることとなった。
前日、国王から来るように言われていたのだ。
「陛下、お早うございます」
「カイト殿、朝早くから呼び出してすまんのう…」
「いえいえ、これも務めにございますから…」
今朝の国王は、如何にも疲れたと言うような顔をしていた。
「陛下、随分とお疲れのようですね…」
「うむ、昨夜も殆ど寝ておらんからのう…」
「何か、心配事でもございましたか…」
「カイト殿、良いか、これから申す事は、一切他言無用じゃ」
「畏まりました」
事前に釘を刺すとは…、かなり深刻な話のようだ。
「マリウスは…、王太子として不適格と判断した…
よって、ソランスター王国の王位継承権を剥奪し、廃嫡することにした」
クラウス国王の口から出たのは衝撃的な言葉だった。
「廃嫡…、そ、それは何故でございますか?」
「マリウスは……、女を愛せないのじゃ…」
国王の顔には、苦悩の表情が浮かび上がった。
マリウス王子は、正妃との間に生まれた4人姉弟の末っ子で、唯一の男子であり王統を継ぐ者として国王の期待も高く、幼少期から英才教育が施されてきた。
マリウスは頭脳明晰で素直な性格であり、期待に答えようと日夜努力を重ねてきたが、やや内向的で優しすぎるのが玉に瑕と国王は愚痴っていた。
オレが投獄された日、国王はマリウス王子にセリーナ王女を遠ざけた理由を白状させるため、王宮の奥座敷に幽閉したそうだ。
そして、口を割らないとカイトを不義密通の罪で死罪に処すると脅すと、マリウス王子は、ようやく重い口を開いたのだ。
マリウス王子が、国王に話したその理由とは、驚くべき内容であった。
「奴は、カイト殿に恋焦がれておるそうじゃ…」
「!」
国王の言葉はオレにとって、余りに衝撃的で返す言葉も無かった。
マリウスは、身体は男性であっても、自分の心は女性であり、逞しい男性に魅力を感じるのだと告白したそうだ。
現代の地球で言う『トランスジェンダー』であることを、マリウスは打ち明けたのだ。
自らの努めは、セリーナ王女と子を成し、王統を絶やさぬことだと、マリウスは理解していた。
しかし、自分の心を偽り、女性と褥を共にすることは、どうしても出来なかったのだ。
そしてセリーナ王女から同衾を迫られた頃から、彼女を避けるようになり、逆にマリウスに優しく接してくれるカイトに惹かれて行ったそうだ。
「カイト殿、子を成せぬ者に王統は委ねられん…」
「陛下……、心中お察し申し上げます」
マリウス王子が廃嫡となるとなれば、フローラ王女が王位継承権第1位に繰り上がる。
そうなれば、その婚約者であるオレが将来の王配となる訳だ。
今は、軽々しく王位継承権のことを口にすべき時期ではないし、マリウス王子の廃嫡は、何れ近い内に公となるであろうから、その時に話せば良いことだ。
「カイト殿に、折り入って頼みがあるのじゃ…」
「陛下、どのような事でございましょう」
「アプロンティアまで飛んで、レオニウス国王に今回の件を伝えて欲しいのじゃ…」
クラウス国王は、友好国であるアプロンティア王国元首レオニウス国王に、今回の一連の話を伝えなければならないが、非常にデリケートな話なので、オレを仲介して報告させ、交通整理して欲しいと言うのだ。
マリウス王子とセリーナ王女の婚約解消に至った経緯を説明し、それに関与したセレーナ王女の仕置をどうするのか相談するのが、おおよその任務だ。
この件は、オレも当事者なのだが、他に頼める者が居ないのだろう。
国王は、婚約解消となったセリーナ王女を、一緒に送り届けるように言った。
「畏まりました。
それでは、準備でき次第、アプロンティアへ向かいます。
ところで陛下、マリウス王子を廃嫡された後、どのように処遇なさるおつもりですか?」
「それも悩みの1つなのじゃ…
カイト殿、何か良い案はないかのう」
「もし差し支えなければ、私のところでお預かり致しましょうか?」
「カイト殿のところでか…、良いのか?」
「はい…、私の元には彼の3人の姉がおりますので、微に入り細に入り、面倒を見てくれると思います。
それに、ただ部屋に居るだけでは、マリウス王子の精神が持たないと思います。
何か自分が打ち込めることがあれば、気を紛らわせると思うのです」
オレは、マリウス王子がアイドルグループのダンスパフォーマンスに熱中していたのを思い出した。
廃嫡とは言え、まだ15歳の彼は、オレの義弟となるのだし、無下に見捨てる訳には行かないのだ。
「その件は、本人を含めて、私がアプロンティアから戻ってから、もう一度お話しましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日後、オレは婚約解消となったセリーナ王女と、オレの婚約者のセレーナを伴い、飛行船『空飛ぶベルーガ号』に乗り、アプロンティア王国の王都クリスタリアを目指していた。
今回、オレに同行したのは、セリーナとセレーナの2人の王女の他、アスナとサクラ、護衛のステラ、秘書のセレスティーナの6名だ。
もし時間が取れれば、新リゾート候補地のアプロンティア王国の山岳地帯にあるサファイアレイクを視察しようと思っていたのだ。
クリスタリア王宮前に飛行船を着地させると侍従が出迎え、オレは、レオニウス国王が待つ謁見の間へ案内された。
「カイト殿…、それにセリーナとセレーナも、予告もなしに儂に何の用じゃ?」
「はい、クラウス国王から重要任務を申し付けられて、参りました」
「重要任務だと?」
オレは、レオニウス国王に不義密通事件の顛末と、その後の投獄に至るまでの一連の出来事を説明した。
それを聞いたレオニウス国王は、2人の娘を怒鳴りつけた。
「な、何と言うことをしてくれたのだ…
お前たちの浅はかな考えが、カイト殿にどれほど迷惑を掛けたか分かっておるのか…。
カイト殿、貴公には何と詫びたら良いのか、言葉も見つからん」
そう言って、レオニウス国王は、深々と頭を下げた。
「陛下、その件はもう良いのです…
セリーナ王女もセレーナ王女も、それ相応の責めを追った訳ですし…」
オレは更に、マリウス王子が廃嫡となり、セリーナ王女と婚約解消に至った経緯を説明し、レオニウス国王はそれを了承した。
セレーナ王女とオレとの婚約解消の件を話したが、どうかそれだけは勘弁してくれと泣きつかれ、婚約は継続することとなった。
「この恩は一生忘れぬ…
カイト殿、無理を承知で、もう一つ頼みがあるのじゃが…」
「何でしょうか…」
レオニウス国王は、とんでも無いことを口にした。
「どうじゃ、ついでにセリーナも貰ってくれぬか…、一度は体を重ねた仲じゃろう」
オレは国王の言葉に絶句した。
「陛下、それは流石に無理でございます…」
「そうか、ではセリーナは尼になるしかないのう」
レオニウス国王は、セリーナ王女を出家させ剃髪し、尼にすると言い出した。
それを聞きセリーナ王女は、涙を流し始めた。
「陛下、カイト様をこれ以上、困らせてはいけません。
私は尼になり、一生国のために祈ります」
「姉上……」
姉の行末を心配したセレーナも泣き始め、収拾がつかなくなってきた。
擦った揉んだの末、結局オレは、セリーナ王女を引き取ることとなった。
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