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第20章 女神降臨編

第319話 歌姫「アイリス・リーン」デビュー

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 予想だにしなかった国王の挨拶に、滞在客ゲストは大いに盛り上がった。
 国民が国王に拝謁するのは、かなり稀なことで、国王がこんなにも気さくに一般庶民に語り掛けるとは思ってもいなかったのだ。
 5箇所のパーティー会場では、国王の話題で持ち切りであったが、再びジェスティーナ王女が登場すると、今度は彼女に注目が集まった。

「それでは、ここで皆さんと乾杯したいと思います
 乾杯の音頭は、当リゾート会長にお願いしたいと思います」

 オレはジェスティーナに紹介されてマイクの前に立った。
「皆様、当リゾートの運営会社『エメラルド・リゾート株式会社』の会長を努めておりますカイト・シュテリオンベルグでございます。
 本日は、当リゾートへ、ようこそお出で下さいました」
 そこまで言うと、会場から一斉に拍手が沸き起こった。
 今ではオレも、ソランスター国民の間では有名人であるらしい。

「暖かい拍手、ありがとうございます。
 本日は、このエメラルドリゾートの記念すべきオープンの日でございます。
 このようにたくさんの皆様にお出でいただき、スタッフ一同を代表致しましてお礼申し上げます。
 さて、当リゾートは、ご覧のように美しい砂浜、宝石と見舞うばかりの綺麗な海、正にこれぞリゾートと言えるような素晴らしい環境にあります。
 また、滞在型リゾートとして、お客様に非日常を体験していただくべく、数多くの趣向を凝らし、滞在中退屈されることのないよう各種アクティビディをご用意しておりますので、南の楽園を心ゆくまでお楽しみ下さいませ」

「それでは、乾杯させていただきます。
 皆さま、グラスをお持ち下さい。
 ソランスター王国の繁栄並びに本日ご参加の皆様方のご健勝を祈念して、カンパ~イ!」

 オレの乾杯の音頭に合わせ、出席者は一斉にグラスを掲げ「カンパ~イ」と唱和し、グラスを置くと全員が拍手した。

 会場が5つに分かれているとは言え、1500人以上が一斉に乾杯すると、その声がリゾート内に木魂して、一体感を感じさせた。

「ありがとうございました。
 それでは、皆様には暫くご歓談いただき、当リゾート自慢の料理とお飲み物をお楽しみ下さいませ。
 なお、後ほど、シークレットゲストのスペシャルステージがございますので、皆様楽しみにお待ち下さい」

 ジェスティーナが一礼してステージを下りると、ギターとスティールドラム、パーカッション、サックスなどの生演奏でトロピカルな音楽が流された。
 ウェルカムパーティは、自分たちの席は決められているが、料理はセルフサービスで客たちが、好きな料理を取りに行くシステムだ。

 それぞれの会場には豪華な料理が並べられている。
 基本は、会場の海側以外の3方向に配置されたテーブルから好みの料理を選ぶビュッフェスタイルであるが、各テーブルにはホテルスタッフが配置されており、好きな料理を希望する量取り分けてくれるのだ。

 サンドベリア近海で穫れた海老や蟹、様々な魚料理、セントレーニア牧場の豊かな環境で育った牛、豚、鶏、羊などの肉料理、新鮮な野菜と果物を調理した各種料理とスイーツ。
 酒はアクアスター・ワイナリーとアルカディア・ワイナリーの赤・白・スパークリング各2種類ずつ合計12種類、ビールは冷え冷えの樽生ビールが3種類、ピルスナー、エール、スタウトが用意され、ウィスキーや焼酎、日本酒まである。
 ソフトドリンクは実に120種類の中から選び放題だ。
 その他に南国特有のマンゴーやパイナップル、バナナやパパイヤなどの果実をあしらったカクテルや各種サワー、ハーブティー、紅茶、コーヒーなど選り取り見取りである。

 日がとっぷりと暮れ、空が群青色のマジックアワーの時となると、空一面が満点の星に埋め尽くされ、人々は空を見上げ、その美しさに感動していた。
 周囲に灯りが無いのに加え、空気が澄んでおり、都会では絶対に見ることが出来ない素晴らしい星空が見られるのだ。

「皆様、お待たせ致しました。
 ここで本日のスペシャルゲストにご登場いただきましょう。
 アクアスター・プロダクションの期待の新人、本日がデビューステージとなります。
 4オクターブの音域を自在に操る七拍子の歌姫アイリス・リーンです、どうぞ!」

 そこでステージが暗転し、数秒するとスポットライトが純白のステージ衣装に身を包んだアイリス・リーンを照らしだした。
 アイリスは小柄で細身の割には美しいボディラインを持ち、美脚モデルのような綺麗な脚、背中までの美しい金色の髪が良く似合う超絶美少女である。

「皆さん、こんばんわ。
 アイリス・リーンです。
 私のデビュー曲『ライズ』聞いて下さい」
 アイリスはアカペラで『ライズ』を歌いだした。
 『ライズ』は、大平原の地平線に朝日が上がる力強い朝をイメージした曲でアイリスの伸びやかなボーカルが、そのイメージとピッタリなのである。
 感情豊かに美しい金髪を左右に揺らしながら、小柄な体のどこから出てくるのか不思議なくらいにパワフルで圧倒的な声量は聞いている者を圧倒し、一瞬にして聞く者を虜にした。

 『ライズ』が終わると会場からは万雷の拍手が響き渡った。
 1曲目が終わると舞台袖に控えていた、癒しの天使レイチェルが登場した。
 ピアノ伴奏は今日もレイチェルの担当である。

 2曲目は『美の女神ビーナス』という曲だ。
 この曲は、ソランスター王室の王女3姉妹(フローラ、アリエス、ジェスティーナ)の美しさを美の女神に例えた曲である。
 4オクターブの音域を自由自在に操る伸びやかで美しい歌声に人々は感動した。
 伴奏するレイチェルのピアノ演奏も素晴らしかった。

 3曲目は『アクアスターのテーマ』である。
 森と湖、そして背後にミラバス山が聳え立つ大自然にあるアクアスター・リゾートの美しさを歌った曲で、アクアスターグループのテーマ曲にした素晴らしい曲である。

 4曲目は『永久とわの光』だ。
 いつまでも変わらぬ愛を、輝き続ける永久とわの光に例えた静かなラブバラードである。
 スローテンポの曲であるが、低音域から高音域まで淀みないアイリスの澄んだ歌声は人々を魅了した。

 5曲目は『エメラルド・ブルーの楽園』である。
 この曲は、エメラルド・リゾートの美しい自然を歌った、プロモーション用の曲だ。
 リズム感、音程、声量、表現力、声質こえしつ、音域、容姿すべてが揃った七拍子の歌姫は聴衆を虜にした。

 6曲目はレイチェルが作った曲にアイリスが詩を付けた『星に願いを』である。
 満天の星空の下、アイリスの叙情的な歌声は、その場に居る者を歌の世界に引き込み全員に感動を与えた。

 予定していた6曲を歌い終わると、その場にいた全員が立ち上がりスタンディングオベーションでアイリスの熱唱とレイチェルの伴奏を讃えた。
 曲が終わると、アイリスとレイチェルは立ち上がり、何度もお辞儀し手を振って歓声に応えた。

「皆さま、たくさんの拍手ありがとうございます。
 アイリス・リーンは王都を始めとする国内12都市でデビュー・コンサート・ツアーを予定しております。
 チケットは、現在アクアスター・トラベル・サービス並びにバレンシアカフェで絶賛発売中です。
 アイリスの歌声をもう一度聞いてみたいと言う方は、ぜひチケットをお買い求め下さい」

「それでは、次のスペシャル・ゲストをお迎えしましょう。
 ASR39の皆さんです、どうぞ!」

 今やトップアイドルとなり、王都を始めとする各都市で絶大な人気を誇るASR39が登場すると辺りは騒然となった。
 まさか、こんなリゾートでASR39に会えるとは思っていなかったのである。

「皆さぁ~ん、こんばんわぁ~。
 私たち、ASR39のスペシャルステージへようこそ~!」
 そう言って15名の美少女たちの真ん中でマイクで握り、魅力的な笑顔を振りまいているのは、ポニーテール姿のリオナであった。
 今では絶大な人気を誇り、トップアイドルとして王都と領都を中心に定期公演を行っているのだ。
 この日は、アクアスター・リゾートが通常営業中なので、メイドロイドAチームの12名にリオナ・トリン・マリンのトップ3名を加えた合計15名体制なのである。

 最初にデビュー曲の『ポニーテール記念日』を披露した。
 スピーカーからアップテンポなイントロが流れ、それに合わせてメンバー全員が踊り始めると、会場は異様な熱気に包まれた。
 滞在客ゲストの中にも熱狂的なファンがいて、ASR39が生で見られるとあって真剣な眼差しで、押しのに声援を送っていた。
 ASR39は、予定していた6曲の演奏を終えたが鳴り止まない拍手にアンコールに答えることになった。
「皆さん、大きな拍手と声援ありがとうございましたぁ~。
 最後は、私たちの新曲『エメラルド・サマー』を聞いて下さい」
 夏の渚をイメージさせるような軽快なギターのイントロから入るこの曲は、リオナ・マリン・トリンが代わる代わるリードボーカルを務める爽快感満点の曲だ。

 ASR39のステージが終わると、空に向けてレーザービームが照射され、荘厳な音楽に合わせたレーザーショーが始まった。
 高層ホテル棟「スターウィング」の壁面から照射されたレーザービームとインフィニティプールに設置された噴水による壮大な光と水のシンフォニーなのである。
 滞在客ゲストたちは全員、その大迫力に圧倒されていた。
 15分余りのショーが終わると、会場全体から割れんばかりの拍手喝采が鳴り響き、ウェルカムパーティはお開きとなった。
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