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第20章 女神降臨編

第318話 エメラルド・リゾート開業

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 満を持してエメラルド・リゾートがオープンの日を迎えた。
 開業準備が終わり、総客室数533室、客室定員1562名を誇る大型リゾートが開業したのだ。

 今日は開業記念イベントが行われ、お忍びでオーナー専用室に宿泊する国王陛下から開業を祝う特別メッセージが披露される予定だ。

 オレは3人の王女を連れ、ソランスター王国の王都フローリア王宮にクラウス国王陛下を迎えに行った。

「カイト殿、出迎え大義じゃ」

「いえいえ、陛下には多額の出資をしていただいておりますので、当然のことです」

「なんのなんの、娘たちの大事な婿殿じゃからのう、当然の事じゃ」

「ありがとう御座います」

 オレは国王と王妃、第1王子のマリウスと3人の王女を連れ、王宮に設置した『ゲート』を使い、エメラルドリゾートの高層ホテル「スターウィング」18階のオーナー専用室へ移動した。

「いつもながらに思うが、この『ゲート』は実に不思議な魔道具じゃのう。
 女神様から賜ったとは言え、距離に関係なく、一瞬で移動できるから驚きじゃ」

「はい、とても便利な機能ですが、使い方を誤ると国を滅ぼしかねませんから、十分注意が必要です」

「カイト殿の言う通り…
 女神フィリア様もそれをお分かりの上で、婿殿にお力をお許しになったのじゃ」

「はい、とてもありがたい事です」

 オレは国王夫妻を先導し、島の3方向が見渡せるスカイテラスへ案内した。

「おお~、素晴らしい眺めじゃのう…
 これは絶景じゃ!」
 国王は高層ホテル棟「スターウィング」18階からの絶景に感激していた。

「まあ、ホントですわ…
 こんな綺麗な景色、見たことありません…」
 王妃も両手で口を押さえ、目に涙さえ浮かべて感動していた。

 地上18階のスカイテラスからの眺めは素晴らしく、島の3方向がぐるりと見渡せた。
 白い砂浜やラグーンのエメラルドグリーンからコバルトブルーへと変化する素晴らしいグラデーションが楽しめるのだ。

 暫く、その景色に見とれていた国王はすこぶる上機嫌であった。 

 今日は全客室が満室で、従業員達はフル稼働である。
 次々と到着する飛行船からは、大勢の客が降り立ち、エメラルド・リゾートの美しさと規模の大きさ、それに最先端の設備の数々に驚嘆していた。

 2ヶ月間の訓練期間があったとは言え、実践は初めてと言うスタッフがほとんどであった。
 それでも、旅亭アルカディアやサエマレスタ・リゾートなど優良ホテルから転籍した幹部社員が、要所を締め大きな問題には至っていなかった。

 今日は開業して始めてのウエルカム・パーティーがリゾート内5カ所のレストランで開かれるのだが、担当スタッフは、その準備に大わらわであった。
 今日は開業後初めてのウエルカム・パーティーということでサプライズが用意されていた。
 夕方5時半を過ぎると各会場には、パーティーを楽しみにしていた客達が集まってきた。

 1会場当たり300名程のキャパシティである。
 各テーブルにはスタッフが案内してくれるが、ドリンクや料理はセルフサービスなのだ。

 午後6時になるとウエルカムパーティーが始まった。
 5つの会場のステージには巨大スクリーンがあり、メイン会場のルーフトップラウンジの様子が映し出されていた。

「皆様、本日はエメラルド・リゾートにようこそお出で下さいました。
 私は当リゾートの社長を務めますジェスティーナ・ソランスターでございます」

 王都フローリアで美の女神として絶大な人気を誇るソランスター王国第3王女ジェスティーナの登場に会場は騒然となった。

 ソランスター王国の美の女神ビーナスと呼ばれる3姉妹は国民から熱狂的な人気を誇り、自分の押しの王女が誰かでしばしば論争になるのである。
 淑やかさと華やかな兼ね合わせた薔薇のような雰囲気の第1王女のフローラ、爽やかと明るさを兼ね備えた第2王女のアリエス、可憐さと知性を感じさせる第3王女のジェスティーナ。
 王国民の評価は分かれるが、僅差でジェスティーナが1番人気であるらしい。

 そのジェスティーナが司会役として登場したのだから、そんじょそこらのアイドルとは比べものにならないくらいの騒ぎである。

 絶大なる人気を誇り、毎年恒例のフローリアフェスティバルの「花の女神のパレード」で見る以外は、滅多に見ることが出来ないジェスティーナ王女が、こともあろうかステージ上で微笑みながら、こちらを向いて話しているのだから会場が騒然となるのも当然だ。

 例えるならトップアイドルが突然街中に現れたと考えればお分かり頂けるだろう。

「本日は、当リゾートのオープニングイベントとして特別ゲストを多数お迎えしております。
 それでは、最初のゲストにご登場願いましょう。
 最初のゲストはこの方です、どうぞ」

 ジェスティーナが、そう言うとカメラが切り替わり、手を振るクラウス国王の姿が映し出された。

「皆の者、儂じゃ~
 盛り上がっておるか~」

 突然の国王陛下の登場にパーティー参加者は、どう反応していいか迷い、響めいた。

「なんじゃ、ノリが悪いのう…
 もう一回最初っからいくぞ。
 皆の者、盛り上がっておるか~」

 国王の予想外の言葉に、戸惑いながらも参加者は、何か反応しなければ失礼になると思い声を上げた。
「お、お~!」

「なんじゃ、なんじゃノリが悪いのう…
 もう一回じゃ…
 盛り上がっておるか~」

「おぉ~」

「まだ声が小さいぞ~
 盛り上がっておるかぁ~」

「おおぉ~」

「まだまだじゃあ…
 皆の者、盛り上がっておるか~!」

「おおおおおぉぉぉ~~」
 国王に煽られた参加者達は声を揃えて国王に答えた。

「よ~しよし、さすがは我がソランスターの臣民じゃ」
 国王がそう言うと一斉に拍手と歓声が沸き起こった。

「儂は、今日カイト殿に招待されてこのリゾートに滞在しておる。
 ここはカイト殿が見つけて1から開発した素晴らしいリゾートじゃ。
 みなも知っておろうが此奴は儂の娘を3人とも掻っ攫った大悪党じゃ。
 じゃが、悔しいが奴には、女子おなごを虜にする魅力と非凡な才覚があるようじゃ。
 実は儂もこのリゾートに出資しておるオーナーの一人なのじゃ。
 このリゾートが繁盛すると儂にも還元される仕組みじゃから多いに利用してもらいたい。
 今宵は、エメラルドリゾートの開業初日を祝うウエルカムパーティーじゃ。
 大いに飲んで、大いに食べるが良いぞ」

 国王がそう言うと、会場から大歓迎が湧き上がった。
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