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第20章 女神降臨編

第305話 女神降臨(後編)

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 女神フィリアとその一行38名は、全力でリゾートライフを満喫していた。
 因みにチーム女神フィリアのモットーは『仕事も遊びも全力で』なのである。
 ここだけの話、女神フィリアが収益ナンバー1の理由は、そのハードワークに支えられていた。
 グループ企業全体の社員に支払われる報酬は良いものの、ブラック企業さながらの労働時間でなのである。
 今回は各企業のトップを任せている女神とサポーター女神を連れてきたが、評価が良ければ、時期を見て定期的に社員を送り込もうと女神フィリアは考えていた。

 これまでのところ、食事は美味いし、ホスピタリティのレベルも高く、リゾートや設備もよく整備されており、自然環境抜群のアクアスター・リゾートは絶好の保養施設になると考えていたのだ。
 場合によっては、一括で一定の日数を借り切ることも検討していたが、それは最後まで滞在してから結論を出そうと思っていた。

 そんなこととは露知らず、カイトは女神たちに満足して貰えるよう全力を尽くしていた。
 カイトには、女神フィリアを満足させて、最後にお願いを聞いてもらおうというしたたかな魂胆があったのだ。

 朝昼晩、料理が被らないように細心の注意を払い、女神たちの反応を見て提供する食材や料理を変えていった。
 また朝食には、癒やしの天使レイチェルによるピアノの生演奏をBGMとして聞いてもらったり、夕食時には毎回違うステージショーを企画して退屈させないように配慮していた。
 今のところ、その試みは上手く行っているようだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 3日目はラウンジで夕食会を実施し、ステージにはSDT(シュテリオンベルグ・ダンシング・チーム)のトップスターリーファによる情熱的なフラメンコの後、メンバー18名全員によるリオのカーニバルさながらのサンバをステージで披露した後、客席に降りてきて、女神たちを巻き込み40分ほど一緒に踊ったのである。

 4日日は、庭園でガーデンパーティを実施し、ASR39のAチームとリオナ、トリン、マリンによる、女神たちにとって初めてとなるアイドルショーを行った。
 これが大盛況で、女神の大多数が振り付けを真似してその場で踊りだした。

 5日目は、屋上スカイラウンジで中華のフルコースを楽しみながらASR39のトップスター『リオナ』と7拍子の歌姫『アイリス・リーン』のソロデュオコンサートを楽しんだ。
 お互いの持ち歌をカバーしながら、圧倒的な歌唱力を持つアイリスと、それに負けず劣らずのリオナの歌唱力に女神たちは聴き惚れていた。
 
 6日目は、湖畔のステージ前に特設のパーティ会場を作り、フェアウェル・パーティーを開催した。
 ステージに上がったのは、ASR39のフルメンバー39名であった。
 最初の曲『ポニーテール記念日』のイントロが流れると、既に振り付けを覚えた女神たちは立ち上がり、自分たちの席で踊り始めた。
 次々と演奏される曲に女神たちは飲食を忘れ、ASR39の動きに合わせて踊っていた。

 それを見ていた女神フィリアがオレにこう言った。
「ねぇ、カイトくん、私達もステージに上っていいかな?」
 どうやら広いステージの上で思いっきり踊ってみたいという事らしい。

「勿論です」

 フィリアが指示すると女神たちは全員ステージに上った。
 そしてリオナと何やら話していたが、程なくASR39は一旦ステージ脇に退いた。
 女神たちがステージ中央にバラバラと散ると『ポニーテール記念日』の配置についた。
 しくもフィリアたち女神の数は39名、ちょうどASR39のフルメンバーと同数なのである。
 女神フィリアが、マイクの前に立ちこう言った。
「私たち『女神《めがみ》39』の特別スペシャルステージへようこそ、精一杯踊るので応援よろしくお願いしま~す」
 メインセンターには女神フィリア、サブセンターには女神フィリスと女神フィオナが配置についてポーズを取っている。
 そして『ポニーテール記念日』のイントロが流れ出すと女神たちが一斉に踊りだした。
 女神たちは、先日15名バージョンのASR39のステージを見て振り付けを覚えていた。
 フルバージョンのステージはたった1回見ただけあるが、歌も振り付けも既に完コピしているのである。
 女神フィリアはキレッキレのダンスを披露し、しかも歌も上手いのである。
 そのクオリティは商業ベースに出しても可笑しくないレベルであり、趣味の域を超えていると思われた。
 ASR39のメンバーたちもそれを見て驚いていた。

 それから『Sweetジェラート』、『パレット39』と2曲を女神めがみ39が完璧なパフォーマンスを披露した。
 そして最後は女神めがみ39にASR39のメンバーたちも加わって、78名で新曲『エメラルド・サマー』を踊り始めた。
 いつもの倍の人数によるステージは圧巻であった。
 女神たちはこの日、全員セーラー服を思わせる清楚な衣装を着ていたが、どうやら最初からステージに上がろうと思っていたようだ。
 約2時間にわたり女神めがみ39とASR39はダンスパフォーマンスを披露し、最後に女神たちはASR39のメンバーと握手し、とても満足そうな表情であった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 こうして女神たち一行の1週間におよぶ滞在は終了し、帰る日となった。
 オレは朝7時に女神フィリアの部屋に呼ばれた。

「フィリア様、お早う御座います」

「カイトくん、朝早くから悪いわね」

「いえいえ、もう起きてましたから大丈夫ですよ。
 何か御用でしたか?」

「うん、今回の滞在のお礼を言いたかったの。
 スタッフ全員の心の籠もったオモテナシ、ありがとね。
 お陰で私たちリフレッシュできたし、また明日から仕事頑張れそうだよ」 

「そうですか、ご満足いただけたようで、オレも嬉しいです」

「それでね、お礼したいと思うんだけど…
 取り敢えず、グループ会社の保養地としての定期契約、お願いしようと思ってるんだよね」
 女神フィリアは、アクアスター・リゾートを毎月1週間ほど借り切って、自分が経営するグループ会社の社員を滞在させる保養地して契約してくれることとなった。
 閑古鳥が泣くアクアスター・リゾートとしては、とてもありがたい話だ。

「ありがとうございます。ホントに助かります」

「カイトくん、他に何か望みはある?」

 オレは女神フィリアのこの言葉を待っていたのだ。
「実は、欲しい物があるんですが…」

「なになに?、何でも言っていいよ」

「実はMOGのレンタル期間を延長して欲しいんです」
 因みにMOGとはMultidimensional Object Generatorの略で多次元物体生成装置のことを指す異世界テクノロジーの最先端技術の粋を集めた産物なのである。
 機械マシン内部の真空無重力空間でナノサイズ(1億分の1mm)の粒子を100万分の1ミリ秒単位の時間を制御し、寸分の狂いもなく指定した座標に配置して特殊な技術で結合させ物体オブジェクトを生成する技術だ。
 無重力空間にナノ粒子を配置し、どのように結合するかは謎。
 素材は約7000種類あって、作れない物はほとんど無い。
 ABSなどの樹脂、金属、セラミック、ポリカーボネート、カーボンファイバー、ポリプロピレン、ガラス、不織布、木材など多岐に及ぶ素材が使える。
 3辺が最大で18mまでのオブジェクトが生成可能で、今や建物や構築物の建築に欠かせない装置となっているが、レンタル期限があと2ヶ月ほどとなっているのだ。

「そう来ると思った。
 もちろんOKだよ」

「ありがとうございます」

「でも、それだけでいいの?」

「出来れば、あともう2台レンタルして欲しいんですが…」

「2台でいいの?」

「それじゃ、3台でお願いします」

「了解」
 
「えっ、いいんですか?」

「いいよ、あとレンタル期間は?」

「出来れば、3年でお願いします」

「了解。
 ところで、前に電話で話した件、覚えてる?」

「えっ、何でしたっけ?」
 オレは、女神フィリアが何を言ってるか分かっていたが、敢えて惚けてみた。

「ほら、神域の領地全部をカイトくんに任せる件だよ」

「あ~、その話ですか…」

「そうそう、あれから考えてくれた?」

「ん~…、色々と大変そうなので、厳しいですね~」
 オレは暗に引き受けたくないことを匂わせた。

「もし、引き受けてくれるなら、しっかりとサポートさせてもらうよ。
 例えば、MOG10台の無料レンタルとかね」

「も、MOG10台ですか?」
 それは、確かに魅力的な提案だ。

「ん~、でもMOGだけあってもな~、素材が無かったら意味ないし」

「分かった、それじゃ基本素材も無料提供するからさ…
 どう?、悪い条件じゃないでしょ?」

「分かりました」

「えっ、引き受けてくれの?」

「そんな好条件出されたら、引き受けるしかないですよ」

「ありがと~、良かった~、これで安心して帰れるよ」
 女神フィリアとその一行は、不死鳥フェニックス型飛行船に乗り、着た時と同じように、膨大な光の塊となって空の彼方へと消えた。

 オレは女神フィリアの代理人として、東はミラバス湖を挟みミラバス山の西120km付近まで、南北はデルファイ国境から、ソランスター国境までの約120kmの領地を統治することとなった。
 ちょっとした小国くらいの広さがある領地の領主となったのである。
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