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第18章 航空産業大臣編
第273話 地獄の沙汰も金次第
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「こちらが帳簿でございます。
しかし、調べられても何も出てきませんぞ。
どうぞ、お好きなだけお調べ下さい」
ハラグロイネンらギルド連合幹部3人は、持参した帳簿の束をオレの前にぞんざいに放り投げた。
3ギルドの最近の仕入帳簿、売上帳簿、在庫帳簿合計9冊である。
オレは、その中の1冊を取り、中身を見てみた。
『工業ギルド仕入帳簿Vol.127』
残りは、秘書のセレスティーナが順次中身をチェックしていった。
仕入帳簿には、日付順に直近の仕入取引の内容が記載されている。
記載内容は、基本的に下記の2つである。
①原材料の仕入れに関する取引
②仕入れた原材料をギルドメンバーへ売り渡した取引
上記の取引ごとに取引相手、品名、個数、単価、金額、ギルド手数料が記載されている。
因みに売上帳簿には日付順に売上取引の内容が記載されている。
記載内容は、基本的に下記の2つである。
①ギルドメンバーが生産した製品をギルドが買い上げる取引
②買い上げた製品を外部業者に販売する取引
上記の取引ごとに取引相手、品名、個数、単価、金額、ギルド手数料が記載されている。
また、在庫帳簿には製品と原材料の品名毎の受払が記載されている。
仕入と売上の帳簿から下記のような取引が日常的に行われていることが分かった。
仕入は、生産者からギルドが一括して原材料を仕入れて在庫管理し、それに手数料を乗せてギルドメンバーに卸す仕組みである。
売上は、ギルドメンバーが製作した製品をギルドが全数買上げ、需要に応じてギルドが販売業者に卸す仕組みだ。
上記の仕入と売上の過程で合計4回、各ギルドとギルド連合で2重に手数料を取る、実にうまい集金システムだ。
一見、ギルドメンバーを手厚く保護するためのシステムに見えるが、実際はギルドとギルド連合に金が集まるように考えられた『集金システム』なのである。
下記は長剣を製作する際に原材料である鋼材を仕入れ、ギルドメンバーが製品として仕上げて販売するまでの取引金額の推移と内訳を記載したものである。
【原材料の仕入取引】
鋼材生産者の販売価格 小銀貨 20 枚( 2万円)
ギルド連合仕入手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
工業ギルド仕入手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
ギルド連合仲介手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
工業ギルド仲介手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
--------------------------------------------
ギルドメンバー仕入原価 小銀貨 40枚 ( 4万円)
【製品の生産及び売上取引】
ギルドメンバー仕入原価 小銀貨 40枚 ( 4万円)
ギルドメンバー生産利益 小銀貨 40枚 ( 4万円)
工業ギルド買上手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
ギルド連合買上手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
工業ギルド販売手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
ギルド連合販売手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
-------------------------------------------
販売業者仕入価格 小銀貨120枚 (12万円)
上記の仕入と売上取引を分解するとこうなる
①鋼材販売価格(仕入原価) 小銀貨 20枚 ( 2万円)
②ギルドメンバーの利益 小銀貨 40枚 ( 4万円)
③工業ギルドの手数料 小銀貨 30枚 ( 3万円)
④ギルド連合の手数料 小銀貨 30枚 ( 3万円)
工業ギルドとギルド連合を合計すると全体の50%、小銀貨60枚(6万円)もの手数料を取っており、明らかにボリ過ぎである。
ギルドは、基本的に非営利団体とされ、領地を所有する貴族に税金として40%を納めれば、その他の税を収める必要はない。
上記の取引で言えば税金は小銀貨24枚(2万4千円)でギルドの純粋利益は小銀貨36枚(3万6千円)となる。
しかし、これだけでは無い筈だ。
あれほどの豪邸を持つには、この収入だけで維持できないのは明白である。
情報省諜報チームの調査によれば、裏帳簿が存在すると報告を受けている。
また、どれくらい儲けているか、おおよその見当は付けていた。
「なるほど、各ギルドもギルド連合も、かなり儲けているようだな」
「滅相もございません」
ハラグロイネンは、不敵な笑いを浮かべた。
「手数料から、ギルドの人件費や維持管理費、在庫の金利負担など必要経費を差し引くとカツカツの状況でございます」
「カツカツと言う割には、会長も副会長も随分と羽振りが良いようだが…
もしかして、裏帳簿でも付けて税金を誤魔化したりしてないか?」
「それは言いがかりと言うものです、裏帳簿などございません」
「本当か?
今すぐ白状すれば、情状によっては、多少目溢ししてやっても良いぞ」
「な、無いものは、無いのです」
「そうか…
では、仕方ない…
セレスティーナ、キアンを呼んで来てくれ」
「畏まりました」
暫くしてセレスティーナが連れてきたのは、情報省諜報本部長のキアン・ベルアーリであった。
「大臣、お呼びでございますか?」
「キアン、すまないが、君の出番だ。
彼らが、裏帳簿など存在しないと言い張るんだ。
裏帳簿がどこにあるのか、教えてくれないか?」
オレの言葉を聞いたギルド連合の3人は、一瞬顔色が変わったように見えたが、努めて平静を装っていた。
「裏帳簿ですね、
それは表帳簿と表裏一体になっているんです」
「表裏一体とは?」
「まあ見ていて下さい」
そう言うと、キアンは帳簿を閉じ、背表紙を逆さにしてテーブルに置き、帳簿に向かってこう言った。
「地獄の沙汰も金次第」
それを見ていたハラグロイネンら3名は呆気に取られていた。
しかし、何も起きないと分かると、すぐに安堵の表情を見せた。
「あれ、おかしいなぁ……」
確か、これで裏帳簿が開くはずなんですが…」
「な、何も起きないではないか…
全く、人騒がせも甚だしい。
裏帳簿があるなどと戯言を言って…、この落とし前はどう付けてくれるのですかな?」
ハラグロイネンは、勝ち誇ったような顔でオレを睨みつけた。
オレはハラグロイネンの言葉をスルーしながら、ある可能性に気がついた。
「キアン、それって、もしかしたら音声認識かも知れないぞ」
「音声認識?、それは何ですか?」
「登録者の声にのみ反応する仕組みだ」
「なるほど…」
キアンはそう言うと、ヴォルゾーの前に帳簿を置いた。
「おい、お前!
帳簿に向かって『地獄の沙汰も金次第』と言え」
「けっ、馬鹿馬鹿しい
そんなお遊びに付き合ってられるか!」
ヴォルゾーは、吐き捨てるように言うとそっぽを向いた。
「お遊びじゃないんだって…
俺がお前らの悪事を、直々に暴いてやると言ってるんだ、有難く思え!」
そう言うとヴォルゾーの首根っこを掴まえて、帳簿に顔を押し付けた。
キアンは、一見優男に見えるが、実は元王国親衛隊出身の武闘派エリートなのだ。
「い、いたい、痛い痛い…、何しやがるんだ」
ヴォルゾーは抵抗したが、明らかな体格差に負けテーブルに押さえ付けられた。
それでもヴォルゾーは、キアンの言うことは聞かず、解錠の呪文を決して言わなかった。
「キアン、流石にそれは無理だ。
呪文を言うこと自体が悪事を白状するのと同じだからな」
「大臣…、それでは、どうするんですか?」
「例の映像データ…、持って来てるんだろ」
「あ~、なるほど…
その手が有りましたか」
キアンはポケットからフラッシュメモリーを取り出すとノートパソコンにセットし、何やら作業を始めた。
そして暫くするとこう言った。
「有りました。
それじゃ、今から再生しますね」
テーブル上に、こちら向きに置かれたノートパソコンの画面には、ハラグロイネン、ヴォルゾー、コアクトーの3人が映し出されていた。
「な、なんだ、これは…」
ハラグロイネンは、動画の中の自分を見て驚いていた。
「これか?、これは映像を記録して再生する魔導具だ…
魔導具は、何もお前らだけの専売特許じゃないんだぞ」
画面に映し出された映像の中で、3人がこのようなやり取りをしていた。
---------------------------------------------------------------------
「今度の領主は、前の領主みたいな阿呆じゃないようだぜ」
映像の中でハラグロイネンは言った。
「ふん、どうせ俺たちの尻尾など、掴めるわけ無えさ。
あれは、俺様が作った芸術品だからなぁ」
映像の中のコアクトーは、そう言って踏ん反り返った。
「確かに…、あれは良く出来ている」
そう言って映像の中のハラグロイネンは下卑た笑いを浮かべた。
「今度の領主、かなり若いらしいが…
どうせ、どこぞの貴族のボンボンだろ」
そう言って映像の中のヴォルゾーは鼻で笑った。
「いや、それは違うな。
どうやら、国王も一目置いてる切れ者らしいぞ…
それに、何とか大臣もやってるみたいだから、用心した方がいいぞ」
映像の中でハラグロイネンは2人を窘めた。
「無理無理、あれを見破れる奴なんて居ないから…
大丈夫、会長は心配し過ぎだって…」
「そうか、まあ用心しとくに越したことはないからな」
そう言って映像の中でハラグロイネンは、嫌がる秘書の乳を揉み始めた。
「呪文を唱えれば、裏帳簿が開くんだからなあ…
しかも、俺たち3人以外の声じゃ開かないと来てるから完璧だ」
「呪文は確か…『地獄の沙汰は金次第』だったよな」
「違うって、そうじゃなくて…
『地獄の沙汰も金次第』だ、間違うなよ」
---------------------------------------------------------------------
その瞬間、ヴォルゾーの目の前にあった帳簿が金色に輝き、背表紙のタイトルが変わった。
背表紙にはこう書いてあった。
『工業ギルド売上裏帳簿Vol.127』
「ほおら、あったじゃないか裏帳簿」
ご丁寧にタイトルに裏帳簿と書いてある。
これでは、もう逃がれようもない。
しかし、調べられても何も出てきませんぞ。
どうぞ、お好きなだけお調べ下さい」
ハラグロイネンらギルド連合幹部3人は、持参した帳簿の束をオレの前にぞんざいに放り投げた。
3ギルドの最近の仕入帳簿、売上帳簿、在庫帳簿合計9冊である。
オレは、その中の1冊を取り、中身を見てみた。
『工業ギルド仕入帳簿Vol.127』
残りは、秘書のセレスティーナが順次中身をチェックしていった。
仕入帳簿には、日付順に直近の仕入取引の内容が記載されている。
記載内容は、基本的に下記の2つである。
①原材料の仕入れに関する取引
②仕入れた原材料をギルドメンバーへ売り渡した取引
上記の取引ごとに取引相手、品名、個数、単価、金額、ギルド手数料が記載されている。
因みに売上帳簿には日付順に売上取引の内容が記載されている。
記載内容は、基本的に下記の2つである。
①ギルドメンバーが生産した製品をギルドが買い上げる取引
②買い上げた製品を外部業者に販売する取引
上記の取引ごとに取引相手、品名、個数、単価、金額、ギルド手数料が記載されている。
また、在庫帳簿には製品と原材料の品名毎の受払が記載されている。
仕入と売上の帳簿から下記のような取引が日常的に行われていることが分かった。
仕入は、生産者からギルドが一括して原材料を仕入れて在庫管理し、それに手数料を乗せてギルドメンバーに卸す仕組みである。
売上は、ギルドメンバーが製作した製品をギルドが全数買上げ、需要に応じてギルドが販売業者に卸す仕組みだ。
上記の仕入と売上の過程で合計4回、各ギルドとギルド連合で2重に手数料を取る、実にうまい集金システムだ。
一見、ギルドメンバーを手厚く保護するためのシステムに見えるが、実際はギルドとギルド連合に金が集まるように考えられた『集金システム』なのである。
下記は長剣を製作する際に原材料である鋼材を仕入れ、ギルドメンバーが製品として仕上げて販売するまでの取引金額の推移と内訳を記載したものである。
【原材料の仕入取引】
鋼材生産者の販売価格 小銀貨 20 枚( 2万円)
ギルド連合仕入手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
工業ギルド仕入手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
ギルド連合仲介手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
工業ギルド仲介手数料 小銀貨 5枚 ( 5千円)
--------------------------------------------
ギルドメンバー仕入原価 小銀貨 40枚 ( 4万円)
【製品の生産及び売上取引】
ギルドメンバー仕入原価 小銀貨 40枚 ( 4万円)
ギルドメンバー生産利益 小銀貨 40枚 ( 4万円)
工業ギルド買上手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
ギルド連合買上手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
工業ギルド販売手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
ギルド連合販売手数料 小銀貨 10枚 ( 1万円)
-------------------------------------------
販売業者仕入価格 小銀貨120枚 (12万円)
上記の仕入と売上取引を分解するとこうなる
①鋼材販売価格(仕入原価) 小銀貨 20枚 ( 2万円)
②ギルドメンバーの利益 小銀貨 40枚 ( 4万円)
③工業ギルドの手数料 小銀貨 30枚 ( 3万円)
④ギルド連合の手数料 小銀貨 30枚 ( 3万円)
工業ギルドとギルド連合を合計すると全体の50%、小銀貨60枚(6万円)もの手数料を取っており、明らかにボリ過ぎである。
ギルドは、基本的に非営利団体とされ、領地を所有する貴族に税金として40%を納めれば、その他の税を収める必要はない。
上記の取引で言えば税金は小銀貨24枚(2万4千円)でギルドの純粋利益は小銀貨36枚(3万6千円)となる。
しかし、これだけでは無い筈だ。
あれほどの豪邸を持つには、この収入だけで維持できないのは明白である。
情報省諜報チームの調査によれば、裏帳簿が存在すると報告を受けている。
また、どれくらい儲けているか、おおよその見当は付けていた。
「なるほど、各ギルドもギルド連合も、かなり儲けているようだな」
「滅相もございません」
ハラグロイネンは、不敵な笑いを浮かべた。
「手数料から、ギルドの人件費や維持管理費、在庫の金利負担など必要経費を差し引くとカツカツの状況でございます」
「カツカツと言う割には、会長も副会長も随分と羽振りが良いようだが…
もしかして、裏帳簿でも付けて税金を誤魔化したりしてないか?」
「それは言いがかりと言うものです、裏帳簿などございません」
「本当か?
今すぐ白状すれば、情状によっては、多少目溢ししてやっても良いぞ」
「な、無いものは、無いのです」
「そうか…
では、仕方ない…
セレスティーナ、キアンを呼んで来てくれ」
「畏まりました」
暫くしてセレスティーナが連れてきたのは、情報省諜報本部長のキアン・ベルアーリであった。
「大臣、お呼びでございますか?」
「キアン、すまないが、君の出番だ。
彼らが、裏帳簿など存在しないと言い張るんだ。
裏帳簿がどこにあるのか、教えてくれないか?」
オレの言葉を聞いたギルド連合の3人は、一瞬顔色が変わったように見えたが、努めて平静を装っていた。
「裏帳簿ですね、
それは表帳簿と表裏一体になっているんです」
「表裏一体とは?」
「まあ見ていて下さい」
そう言うと、キアンは帳簿を閉じ、背表紙を逆さにしてテーブルに置き、帳簿に向かってこう言った。
「地獄の沙汰も金次第」
それを見ていたハラグロイネンら3名は呆気に取られていた。
しかし、何も起きないと分かると、すぐに安堵の表情を見せた。
「あれ、おかしいなぁ……」
確か、これで裏帳簿が開くはずなんですが…」
「な、何も起きないではないか…
全く、人騒がせも甚だしい。
裏帳簿があるなどと戯言を言って…、この落とし前はどう付けてくれるのですかな?」
ハラグロイネンは、勝ち誇ったような顔でオレを睨みつけた。
オレはハラグロイネンの言葉をスルーしながら、ある可能性に気がついた。
「キアン、それって、もしかしたら音声認識かも知れないぞ」
「音声認識?、それは何ですか?」
「登録者の声にのみ反応する仕組みだ」
「なるほど…」
キアンはそう言うと、ヴォルゾーの前に帳簿を置いた。
「おい、お前!
帳簿に向かって『地獄の沙汰も金次第』と言え」
「けっ、馬鹿馬鹿しい
そんなお遊びに付き合ってられるか!」
ヴォルゾーは、吐き捨てるように言うとそっぽを向いた。
「お遊びじゃないんだって…
俺がお前らの悪事を、直々に暴いてやると言ってるんだ、有難く思え!」
そう言うとヴォルゾーの首根っこを掴まえて、帳簿に顔を押し付けた。
キアンは、一見優男に見えるが、実は元王国親衛隊出身の武闘派エリートなのだ。
「い、いたい、痛い痛い…、何しやがるんだ」
ヴォルゾーは抵抗したが、明らかな体格差に負けテーブルに押さえ付けられた。
それでもヴォルゾーは、キアンの言うことは聞かず、解錠の呪文を決して言わなかった。
「キアン、流石にそれは無理だ。
呪文を言うこと自体が悪事を白状するのと同じだからな」
「大臣…、それでは、どうするんですか?」
「例の映像データ…、持って来てるんだろ」
「あ~、なるほど…
その手が有りましたか」
キアンはポケットからフラッシュメモリーを取り出すとノートパソコンにセットし、何やら作業を始めた。
そして暫くするとこう言った。
「有りました。
それじゃ、今から再生しますね」
テーブル上に、こちら向きに置かれたノートパソコンの画面には、ハラグロイネン、ヴォルゾー、コアクトーの3人が映し出されていた。
「な、なんだ、これは…」
ハラグロイネンは、動画の中の自分を見て驚いていた。
「これか?、これは映像を記録して再生する魔導具だ…
魔導具は、何もお前らだけの専売特許じゃないんだぞ」
画面に映し出された映像の中で、3人がこのようなやり取りをしていた。
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「今度の領主は、前の領主みたいな阿呆じゃないようだぜ」
映像の中でハラグロイネンは言った。
「ふん、どうせ俺たちの尻尾など、掴めるわけ無えさ。
あれは、俺様が作った芸術品だからなぁ」
映像の中のコアクトーは、そう言って踏ん反り返った。
「確かに…、あれは良く出来ている」
そう言って映像の中のハラグロイネンは下卑た笑いを浮かべた。
「今度の領主、かなり若いらしいが…
どうせ、どこぞの貴族のボンボンだろ」
そう言って映像の中のヴォルゾーは鼻で笑った。
「いや、それは違うな。
どうやら、国王も一目置いてる切れ者らしいぞ…
それに、何とか大臣もやってるみたいだから、用心した方がいいぞ」
映像の中でハラグロイネンは2人を窘めた。
「無理無理、あれを見破れる奴なんて居ないから…
大丈夫、会長は心配し過ぎだって…」
「そうか、まあ用心しとくに越したことはないからな」
そう言って映像の中でハラグロイネンは、嫌がる秘書の乳を揉み始めた。
「呪文を唱えれば、裏帳簿が開くんだからなあ…
しかも、俺たち3人以外の声じゃ開かないと来てるから完璧だ」
「呪文は確か…『地獄の沙汰は金次第』だったよな」
「違うって、そうじゃなくて…
『地獄の沙汰も金次第』だ、間違うなよ」
---------------------------------------------------------------------
その瞬間、ヴォルゾーの目の前にあった帳簿が金色に輝き、背表紙のタイトルが変わった。
背表紙にはこう書いてあった。
『工業ギルド売上裏帳簿Vol.127』
「ほおら、あったじゃないか裏帳簿」
ご丁寧にタイトルに裏帳簿と書いてある。
これでは、もう逃がれようもない。
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