上 下
263 / 374
第18章 航空産業大臣編

第261話 アクアスター・エアロトラベル

しおりを挟む
 アクアスター・エアロトラベルは、オレが国王から授与された褒賞金、金貨20万枚の内10万枚を出資し、オレと関係が深い各家から出資を募って設立した民間航空会社である。

 アクアスター・エアロトラベル株式会社出資一覧
 出資者/出資額(出資比率)
 ①シュテリオンベルグ公爵家 金貨10万枚( 50%)
 ②ソランスター王家     金貨 3万枚( 15%)
 ③バレンシア商会      金貨 3万枚( 15%)
 ④アルテオン公爵家     金貨 2万枚( 10%)
 ⑤リーン侯爵家       金貨 2万枚( 10%)
   合  計        金貨20万枚(200億円)

 今回はステラの実家であるリーン侯爵家にも声を掛け、出資を募った。
 何せ、褒賞金が金貨10万枚も入ったのだから、金は余っている筈なのだ。
 軍務大臣を務めるジョエル・リーン侯爵に趣旨を説明すると、快く金貨2万枚の出資に応じてくれた。
「この報奨金は、カイト殿のお陰で貰えたようなものだからな。
 儂は喜んで出資させて貰うぞ」

「ありがとうございます」

「ところで、他に何か儲け話は無いのか?」

「まあ、無いこともないのですが…
 それはまた今度、話が具体化したらご紹介します」

「うん、宜しく頼む。
 それからステラのことも…、宜しくな」

 ステラは、リーン侯爵家の長女にして元S級ランク冒険者であり、現在はオレの護衛であるのだが、オレと愛妾の関係でもあることを侯爵は知っているのだ。

 ソランスター王国には、ソランスター航空公社と言う半官半民の航空会社があるが、こちらは国庫から資金が40%ほど入っており、公共性を優先した路線設定を行う必要があり、自らの利益を優先して飛行船の航路を設定する訳にはいかないのだ。
 そこで、一切のしがらみが無い航空会社『アクアスター・エアロトラベル』が必要となった訳だ。

『アクアスター・エアロトラベル』の社長には第1王女のフローラを抜擢した。
 正直なところ、フローラの社長としての資質は未知数であるが、第1王女として元々高い教養や知識を身に付けており、素地はあると思うのだ。
 それに何よりもフローラは生まれながらの人徳のようなものが感じられ、その広い人脈にも期待できる。
 ただ3人の王女の中ではオレと一番付き合いが浅く、見た目はおっとりした性格で、どんどん前に出て行くタイプでは無さそうなので、要所要所でサポートは必要になりそうだ。

 そんなフローラをオレの書斎に呼び、1対1で『アクアスター・エアロトラベル』の経営方針を伝えた。
「いいかいフローラ、これからアクアスター・エアロトラベルの経営方針を説明するから良く聞くんだよ」

「はい、カイトさん」

「この航空会社はオレが設立した民間航空会社だ」

「はい」

「設立した目的は、シュテリオンベルグ公爵領、それにアクアスター・リゾート各社の収益を増加させるための手助けをすることだ」

「はい」

「なので航空路線は、シュテリオンベルグ公爵領、アクアスターリゾート、王都フローリアの何れかが起点となるからね」

「はい」

「基本は旅客輸送で、貨物輸送専用便は当面考えていない。
 旅客便の貨物室に空きがある場合のみ貨物を輸送することになる」

「はい」

「フローラ、はいしか言わないけど、ホントに分かってる?」

「はい」

「それじゃ、今言ったことを要約してオレに説明してみて」

「はい。
 アクアスター・エアロトラベルは民間航空会社で、シュテリオンベルグ公爵領、アクアスターリゾート各社の収益増加を主な目的として、王都・領都・公爵領内主要都市を起点として発着し、旅客優先で貨物は輸送可能な場合にのみ積載する、ですね」

「うん、完璧だ」
 生返事かと思ったが、ちゃんと理解しているようだ。

「それじゃあ、先ず最初にジェスティーナから、アプロンティアとフォマロートの王都と領都エルドラード間の直行便運行について相談がある筈だから、それを二人で打ち合わせして欲しいんだ」

「その件でしたら、エルドラードを基点にクリスタリア→エルサレーナ→アクアスター→セントレーニア→エルドラードの航路を週2便運行する計画で、ティーナと昨日打合せして、後でカイトさんに承認貰おうと思ってました」

「なるほど…」
 フローラは、見かけによらず仕事が速いようだ。

「それと、報告が一つあるんですが、いいですか?」

「うん、いいよ」
 一体、何の報告だろう。

「秘書を1名採用しました」
 確かに、秘書を採用するよう指示したが、まだそんなに経っていない筈だが…

「隣室に控えてますから、今から紹介してもいいですか?」

「もちろん」
 オレがそう言うと、フローラはリビングへ戻り、新しい秘書を連れて戻ってきた。

「はぁ~い、カイトさまぁ、おひさしぶりぃ~」
 そう言いながら書斎に入ってきたのは、クラリスであった。

「クラリス!、お前、冒険者ギルドはどうした!」

「え~、辞めて来たに決まってるじゃないですかぁ~。
 人使い荒いし、給料安いし、それにイイ男居ないんですものぉ~」

「お前、秘書なんて出来るのか?」

「カイト様~、お前呼ばわりは、酷すぎないですか?
 せめて名前で呼んで下さいよ」

「あっ、ごめん、つい興奮しちゃって…」

 クラリスは、冒険者ギルドの受付嬢で、豊満な胸を強調した露出度の高い制服を来て、オレを誘惑してくる小悪魔キャラの元A級冒険者なのである。
 彼女とは、ひょんな事から最初の旅の案内人として、オレと一緒に旅をした仲なのだ。

「フローラ…、クラリスは、秘書として大丈夫なのか?」

「はい、彼女こう見えても中々優秀なんですよ。
 事務能力は高いし、公式の場では挨拶もキチンとできるし、教養も有って秘書としての素養を備えていると、サクラさんが太鼓判押してましたから」

「ふ~ん、男の事とエロい事しか考えて無いような感じに見えるけど、人は見かけによらないものだな~」

「カイト様ぁ、あたしだって、やる時はやるんですよぉ~」

「まあ、とにかくそのエロい胸を何とかしろ。
 もっと秘書らしい服装にしないと採用を取り消すからな!」

「はいは~い、分かりました~。
 これから、お世話になりますが、宜しくお願いしま~す」
 クラリスは、一礼するとさっさと出て行った。

 どういう因果か知らないが、クラリスがフローラの秘書として採用され、これからたまに顔を合わすと思うと、オレは少し憂鬱だった。
 オレとクラリスは相性が悪いらしく、いつもペースが崩されるから苦手なのだ。
 しかし、既に採用したからには、しょうがない。

「う~んと、どこまで話したか忘れてしまったじゃないか…」
 オレは思い出しながら、話を続けた。

「新設の会社だから、社員はこれから採用することになるから、その採用と社員教育、それから就航路線に合わせた飛行船の機種選定、運行計画の作成など、仕事は山程あるから覚悟しておいてくれよ。
 後は、グループ各社の社長と打ち合わせして航空需要を調査し、運行計画の優先順位を付けて欲しいんだ。
 それが出来上がったら、また打ち合わせしよう」

「分かりました」

「いつまでに出来そうだい」

 フローラは、暫く考えてこう言った。
「1週間もあれば、出来ると思います」

「うん、分かった。
 それじゃ、1週間後の同じ時間に打ち合わせしよう」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 それから一週間後、再びフローラと打合せを行った。
 オレがフローラに与えた課題は、ほぼ完璧に回答が用意され、綿密な計画と予算が文書化されて示された。

 グループ各社の航空需要の優先度一覧表と路線計画案、その運行に必要な飛行船の機種選定と台数及び予算・収支計画、採用すべきスタッフの人数や必要な適性、社員教育の具体的な計画まで事細かに検討され、オレがゴーサインを出せば良いまでに準備されていた。

 真のフローラは、有能で理解力が高く仕事が速いクールビューティなのであった。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

処理中です...