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第14章 情報大臣就任編

第184話 アクアスター・リゾートの評価

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 アンジェラ・サエマレスタとカレン・イシュトリアの二人は、1週間前からアクアスター・リゾートに滞在していた。
 オレが二人にお願いした事なのだが、身分を明かさず一般客として宿泊し、設備やサービス、飲食、アクティビィティなどを多方面から評価する、言うなれば覆面調査が目的だ。

 予定していた1週間が経過し、調査結果が出たから評価報告レビューを行いたいと連絡があったのだ。
 アンジェラとカレンには、感謝の意味を込めて今日から1週間、9階に新設したスーパープレミアム・スイートに移って貰ったのだが、その部屋の豪華なリビングで評価報告レビューが行われるのである。
 出席者は、このリゾートの社長であるオレと副社長のアスナ、それに支配人のエミリアだ。

 サエマレスタ家の長女として生まれ、幼い頃から祖父と父からホテル経営の英才教育を受けてきたアンジェラ、同じくレストラン経営のイロハを父親から厳しく叩き込まれたカレン・イシュトリアによる、アクアスター・リゾートの評価報告レビューが始まった。

「まず私から宿泊部門の評価報告レビューをさせていただきます」とアンジェラが話し始めた。
「設備については、素晴らしいの一言です。
 ここはホテルとして作られた建物では無いと、ハヤミ様からお聞きしましたが、設備に関してだけで言うと、私共のホテルより数段上のレベルにあると思います」
 アンジェラの評価を要約すると、各部屋にはエアコン、温水洗浄便座、冷蔵庫、空気清浄機等の電化製品が完備し、豊富なアメニティ、清潔なリネン類など文句なく星5つ(満点)の評価と言う事であった。

 アンジェラが宿泊したツインルームの評価となるが、部屋の広さや内装、家具建具、費用対効果の面では一定水準をクリアしており、星4つの評価となった。
 アクティビティについても、充実しており星4つの評価であった。

「ホスピタリティの面では、まだまだ改善の余地が見られます」
 最初は褒めておいて、後から落とすのがアンジェラの作戦か。
 サービスに関しては、辛口な評価となった。
 アンジェラ達が泊まった客室は5階のツインルームであったが、1週間宿泊してみて自分の経営するホテルのサービスレベルと比較し、星3つ(標準的)の評価であった。
 また、評価対象外であるが、交通の便は飛行船の無料送迎が評価され、星5つだった。

 続いて、カレンから飲食部門の評価レビューが行われた。
「私は、このリゾートで採用しているオールインクルーシブと言うシステムを、ここに来て初めて知りましたが、とても良いシステムだと思います」
 滞在中の飲食費とアクティビティが、全てホテル代に組み込まれたオールインクルーシブ自体の評価は高かった。
 しかし、無料であるため、料理を取り過ぎて残して廃棄するケースが多く、改善の余地ありと言うコメントで、星4つの評価となった。
 残った食材は廃棄してはおらず、細かく粉砕して家畜の飼料に混ぜたり、農作物の肥料に混ぜて撒いているので無駄になっていないのだ。

 飲食提供時のサービスは、個人により質のバラツキがあり、改善の余地ありで星3つの評価となった。
 提供される食材やドリンク類はどれも上質で洗練されており、種類も量も豊富で星5つの最高評価となった。

 ホテルと飲食両部門とも接客サービスは、標準的との評価であったが、細かい所で要改善の指摘を多数受けた。
 それはスイートフロアの専任担当であったエミリアの目の届かない範囲であり、彼女の責任ではないが、指摘事項はすぐに改善できるとエミリアは自信を見せていた。
 総合評価としては、星4つで『標準以上であるがまだ改善の余地有り』と言う評価に収まった。
 最後にアンジェラとカレンから具体的なアドバイスがあり、それを実務の責任者であるエミリアが熱心に聞いていた。
 約2時間に及んだ評価報告レビューは終了し、オレは彼女たちに礼を言い部屋を後にした。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 オレが11階のダイニング・ラウンジでくつろいでいると、サクラがオレを呼びに来た。
 アンジェラがオレに話があるので、もう一度部屋へご足労願いたいとのことだ。

 オレはアンジェラの部屋を再訪した。
 ドアをノックするとアンジェラが出迎え、オレは彼女の向かいのソファに腰掛けた。
「ハヤミ様、度々ご足労いただき、申し訳ありません」

「いいえ、ちょうど時間が空いていましたので
 ところで、どのようなご要件でしょう?」

「はい、実はあの後、アスナさんにお願いしてフロントを見せていただいたのです。
 その時に予約管理の話になりまして、こちらでは予約管理システムと言うものを使っているとお聞きし、仕組みを説明していただいたのです。
 アスナさんが懇切丁寧に説明してくれて、私にも大凡おおよその仕組みは理解できました。
 私どものリゾートでは、紙の予約台帳を使っているのですが、何かと不便なのです。
 もし可能であれば、私どものリゾートでも予約管理システムを導入したいと、アスナさんにお話したところ、これはハヤミ様が作られたので、直接聞いてみては如何でしょうとのことで、再びご足労いただいた次第です」

「ん~、なるほど、そう言うことでしたか」
 この世界には当然コンピュータなど有るわけもなく、他で予約管理システムを調達するのは不可能なのだ。
 オレは、アンジェラの要望にどう答えれば良いのか、暫く考えてから答えた。
「予約管理システムをご提供することは可能ですが、このリゾートに最適化されたシステムですから、設計変更カスタマイズが必要となります。
 それと、機械マシンの導入費用が掛かります」

「そうですか、それでその費用はお幾らくらい掛かりますか?」

「システムの構成と、予約を何箇所で受けるかに寄って費用は変わってきます」
 要するにサーバーやクライアントPCの台数、モニターやプリンター、ネットワーク機器、それにパラワネットの契約や電源も必要になるから、機器の構成が決まらないと費用も出せないのだ。

「最小構成であれば、金貨10枚(100万円)位、多めに見ても金貨20枚(200万円)位で済みそうですが、計算してみないと正確な金額は出せません」

「それくらいの費用で宜しいのですか?」
 アンジェラはもっと費用が掛かると思っていたらしい。

「はい、本当はソフトウェアの費用が掛かるのですが、ほぼ私1人で開発したようなものですし、設計変更カスタマイズも含めて無料サービスしますよ」

「えっ、無料で宜しいのですか?
 そのソフトウェアとやらの費用も請求していただいても宜しいんですよ」

「いえいえ、元々売り物じゃありませんし、サエマレスタリゾートさんには、色々とお世話になってますから、今回は無償でご提供しますよ」

「え、それでは、私の気が済みません
 何かお礼させていただきたいのですが…」
 アンジェラは、しばらく何事か考えていた。

「ハヤミ様、不躾ぶしつけなお願いで申し訳ないのですが…
 その費用、私の体で払わせていただく訳には参りませんか?」

 オレはアンジェラの言葉に絶句した。
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