185 / 374
第14章 情報大臣就任編
第183話 情報大臣カイトの初仕事
しおりを挟む
ソランスター王国情報省の第1回本部会議が内務省の会議室で開催された。
情報省の建物は、これから建設する予定であるが、完成までは内務省の1フロアを間借りして公務を行うのである。
基本的に組織の8割以上が外に出る仕事なので、内勤者は少なく1フロアで間に合っているのだ。
今日が幹部の初顔合わせで、出席者は4部門のトップと、その調整を行う情報統括官である。
・情報大臣 カイト・シュテリオンベルグ伯爵
・情報統括官 リリアン・ブライデ(財務省出身)
・国内情報本部長 エレナ・ダーウィン(内務省出身)
・国外情報本部長 ジェラルド・ミュスカ(外務省出身)
・諜報本部長 キアン・ベルアーリ(王国親衛隊出身)
・特務本部長 シラー・レーベンハウト(軍務省出身)
情報省は新しく創設された総勢600名の組織であり、5つの省庁から転属させた混成部隊であるが、平均年齢は22歳と若いのが特徴だ。
事実、本部長クラスは全員20歳代の若いエリート官僚で、優秀な人材ばかりである。
国王が、それだけ情報省を重要視していると言う事だ。
因みにオレの右腕となる情報統括官のリリアン・ブライデは、王室顧問であるオディバ・ブライデ博士の孫娘である。
各部門の本部長から簡単な自己紹介の後、今後の活動方針と当面の数値目標が発表された。
国内情報本部の基本方針は、王都から遠い地区ほど腐敗が激しいと言う予想の元、国内監査チームと諜報チームの表裏両面の調査を行うことである。
ソランスター王国には、大小373の領地が存在し、王侯貴族諸侯と王室直轄領総督が国王から領地運営を委任されているのだ。
しかし、王国建国から120年も経過し、世襲が当たり前となった現在では、国王から領地経営を委任されているという意識は薄れ、領地は元々自分達の物であるかのような錯覚に陥る領主も少なくないのだ。
1年に1度、王都へ出仕する参勤交代のような制度はあるものの、それ以外の期間は放任状態である。
国内情報本部に所属する監査チームは、2名1組で100組200名が、定期的に王国内各領地を訪問し、領主と面会し公式に監査を行うのである。
諜報本部に所属する諜報チームは、3名1組で50組150名が、旅行者を装い2週間ほど各領地に滞在し、秘密裏に情報収集活動を行うのである。
一方、国外情報本部の基本方針は、下記の2つである。
①敵対関係あるいは中立の立場を取る諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
②友好関係にある諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
国外情報チームは、諸外国にとっては自国の内情を探るスパイであり、下手な動きをすると政治問題に発展しかねないので、慎重に行動する必要がある。
国外情報本部に所属する諜報チームは3名1組で50チーム150名が国外の諜報活動任務に就くことになる。
残りの100名の主な業務は下記の4つである。
①各チームの物理的、人的支援業務
②収集した情報の記録整理分析業務
③各チームのスケジュール管理
④緊急即応部隊として本部待機
課題であった、各チームと本部間の連絡手段を検討した結果、オレが異世界ネット通販でスマホとノートPCを必要数調達し、貸与することとなった。
重大な王国法違反等が判明し、緊急対応が必要な場合は、本部長・統括官経由でオレに報告することと、月1回の定例本部会議を開催することを決め、閉会した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
情報大臣の特権として、王宮近くの一等地に公邸が与えられた。
以前、ジェスティーナを盗賊団から救出した際に、その褒賞として王都内に邸宅を贈呈すると言われ、固辞した経緯があるが、今回は公邸なので断れないのだ。
公邸は3階建ての建物で執務室、書斎、居間、寝室、大広間、大浴場の他、客間が12室あり、執事と侍女が12名、公邸専属の護衛が18名とかなりの規模だ。
中庭もあり、直接ここに飛行船を着陸させることも出来そうだ。
「ご主人様、執事のピオーネでございます、どうぞ宜しくお願い致します」
王宮勤務から転属となった執事のピオーネは、30代後半の誠実そうな男であった。
今後、公邸の管理は、この男が一手に引き受けるのである。
侍女と警備兵を紹介されたが、多すぎて名前を覚えきれない。
「早速でございますが、ご主人さまにお祝いの品が届いております」
ピオーネに案内され、居間に行ってみると、祝いの品がうず高く積まれていた。
聞けば、近隣諸侯や商人から、大臣就任祝いとして届いたのだそうだ。
また面会の申し入れが20数件入っているそうで、そのリストを見せてくれた。
近隣の男爵や準男爵など下級貴族と商人が殆どであった。
恐らく、王国権力の中枢たる大臣職に就任したオレに取り入ろうとする輩に違いない。
「こういうのは、面会した方が良いのだろうか?」
オレはピオーネの見解を聞いてみた。
「恐れながら、私見を申し述べさせていただきますと、面会された方が宜しいかと存じます」
「無下に断られますと、相手の体面を損ない、意図せず敵を作る可能性がございますので、予め時間を制限して相手がどのような人物か見定め、人脈を広げるのが宜しいかと存じます」
ピオーネはオレに適切なアドバイスをしてくれた。
「分かった、リストに日時を書き込んでおくから、面会のお膳たてを頼むよ」
「人数が多いし、面会の時間は1人10分に制限してもらおうか」
「畏まりました」
ピオーネは、経験豊富で頭脳明晰な執事のようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王都から錬金術師見習いの4名(ビアンカ、マリエル、ティナ、ラピス)と、アクアスター・プロダクション(ASP)の第1期研修生25名(女性21名、男性4名)がアクアスター・リゾートに到着した
錬金術師見習いは、男女別の従業員宿舎に、ASPの研修生は専用宿泊棟に入居した。
両方ともシャワー・トイレ付の24平米(約14畳)のワンルームであるが、家賃は無料なのだ。
錬金術師見習いの4名は、工房長のトリンが錬金工房の中を案内した後、リゾート内のルール、日常業務についてオリエンテーションを行った。
ASP研修生の25名はサクラが、3ヶ月間のスケジュールやレッスンの内容、リゾート内のルール等についてオリエンテーションを行った。
いずれも厳しい選抜試験を突破した人材なので、今後の成長が楽しみである。
情報省の建物は、これから建設する予定であるが、完成までは内務省の1フロアを間借りして公務を行うのである。
基本的に組織の8割以上が外に出る仕事なので、内勤者は少なく1フロアで間に合っているのだ。
今日が幹部の初顔合わせで、出席者は4部門のトップと、その調整を行う情報統括官である。
・情報大臣 カイト・シュテリオンベルグ伯爵
・情報統括官 リリアン・ブライデ(財務省出身)
・国内情報本部長 エレナ・ダーウィン(内務省出身)
・国外情報本部長 ジェラルド・ミュスカ(外務省出身)
・諜報本部長 キアン・ベルアーリ(王国親衛隊出身)
・特務本部長 シラー・レーベンハウト(軍務省出身)
情報省は新しく創設された総勢600名の組織であり、5つの省庁から転属させた混成部隊であるが、平均年齢は22歳と若いのが特徴だ。
事実、本部長クラスは全員20歳代の若いエリート官僚で、優秀な人材ばかりである。
国王が、それだけ情報省を重要視していると言う事だ。
因みにオレの右腕となる情報統括官のリリアン・ブライデは、王室顧問であるオディバ・ブライデ博士の孫娘である。
各部門の本部長から簡単な自己紹介の後、今後の活動方針と当面の数値目標が発表された。
国内情報本部の基本方針は、王都から遠い地区ほど腐敗が激しいと言う予想の元、国内監査チームと諜報チームの表裏両面の調査を行うことである。
ソランスター王国には、大小373の領地が存在し、王侯貴族諸侯と王室直轄領総督が国王から領地運営を委任されているのだ。
しかし、王国建国から120年も経過し、世襲が当たり前となった現在では、国王から領地経営を委任されているという意識は薄れ、領地は元々自分達の物であるかのような錯覚に陥る領主も少なくないのだ。
1年に1度、王都へ出仕する参勤交代のような制度はあるものの、それ以外の期間は放任状態である。
国内情報本部に所属する監査チームは、2名1組で100組200名が、定期的に王国内各領地を訪問し、領主と面会し公式に監査を行うのである。
諜報本部に所属する諜報チームは、3名1組で50組150名が、旅行者を装い2週間ほど各領地に滞在し、秘密裏に情報収集活動を行うのである。
一方、国外情報本部の基本方針は、下記の2つである。
①敵対関係あるいは中立の立場を取る諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
②友好関係にある諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
国外情報チームは、諸外国にとっては自国の内情を探るスパイであり、下手な動きをすると政治問題に発展しかねないので、慎重に行動する必要がある。
国外情報本部に所属する諜報チームは3名1組で50チーム150名が国外の諜報活動任務に就くことになる。
残りの100名の主な業務は下記の4つである。
①各チームの物理的、人的支援業務
②収集した情報の記録整理分析業務
③各チームのスケジュール管理
④緊急即応部隊として本部待機
課題であった、各チームと本部間の連絡手段を検討した結果、オレが異世界ネット通販でスマホとノートPCを必要数調達し、貸与することとなった。
重大な王国法違反等が判明し、緊急対応が必要な場合は、本部長・統括官経由でオレに報告することと、月1回の定例本部会議を開催することを決め、閉会した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
情報大臣の特権として、王宮近くの一等地に公邸が与えられた。
以前、ジェスティーナを盗賊団から救出した際に、その褒賞として王都内に邸宅を贈呈すると言われ、固辞した経緯があるが、今回は公邸なので断れないのだ。
公邸は3階建ての建物で執務室、書斎、居間、寝室、大広間、大浴場の他、客間が12室あり、執事と侍女が12名、公邸専属の護衛が18名とかなりの規模だ。
中庭もあり、直接ここに飛行船を着陸させることも出来そうだ。
「ご主人様、執事のピオーネでございます、どうぞ宜しくお願い致します」
王宮勤務から転属となった執事のピオーネは、30代後半の誠実そうな男であった。
今後、公邸の管理は、この男が一手に引き受けるのである。
侍女と警備兵を紹介されたが、多すぎて名前を覚えきれない。
「早速でございますが、ご主人さまにお祝いの品が届いております」
ピオーネに案内され、居間に行ってみると、祝いの品がうず高く積まれていた。
聞けば、近隣諸侯や商人から、大臣就任祝いとして届いたのだそうだ。
また面会の申し入れが20数件入っているそうで、そのリストを見せてくれた。
近隣の男爵や準男爵など下級貴族と商人が殆どであった。
恐らく、王国権力の中枢たる大臣職に就任したオレに取り入ろうとする輩に違いない。
「こういうのは、面会した方が良いのだろうか?」
オレはピオーネの見解を聞いてみた。
「恐れながら、私見を申し述べさせていただきますと、面会された方が宜しいかと存じます」
「無下に断られますと、相手の体面を損ない、意図せず敵を作る可能性がございますので、予め時間を制限して相手がどのような人物か見定め、人脈を広げるのが宜しいかと存じます」
ピオーネはオレに適切なアドバイスをしてくれた。
「分かった、リストに日時を書き込んでおくから、面会のお膳たてを頼むよ」
「人数が多いし、面会の時間は1人10分に制限してもらおうか」
「畏まりました」
ピオーネは、経験豊富で頭脳明晰な執事のようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王都から錬金術師見習いの4名(ビアンカ、マリエル、ティナ、ラピス)と、アクアスター・プロダクション(ASP)の第1期研修生25名(女性21名、男性4名)がアクアスター・リゾートに到着した
錬金術師見習いは、男女別の従業員宿舎に、ASPの研修生は専用宿泊棟に入居した。
両方ともシャワー・トイレ付の24平米(約14畳)のワンルームであるが、家賃は無料なのだ。
錬金術師見習いの4名は、工房長のトリンが錬金工房の中を案内した後、リゾート内のルール、日常業務についてオリエンテーションを行った。
ASP研修生の25名はサクラが、3ヶ月間のスケジュールやレッスンの内容、リゾート内のルール等についてオリエンテーションを行った。
いずれも厳しい選抜試験を突破した人材なので、今後の成長が楽しみである。
30
お気に入りに追加
1,895
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる