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第13章 エメラルドリゾート開発編

第174話 アクアスター王都アリーナ

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 オレたちは『踊る銀ねこ亭』にチェックインを済ませた後『アクアスター王都アリーナ』へ出掛けた。
 アイドルグループASR39が王都で定期公演を開催する場所で、リオナたちが現地を訪れるのは今日が初めてだ。
 完成したばかりの『アクアスター王都アリーナ』の飲食店部分は既に営業を開始していた。

 アリーナの近くまで行くと、その大きさが実感できた。
「えぇ~、こんなに大っきいの?」とトリンとマリンは声を揃えて驚いた。
 リオナは前世で数万人を超える規模のドームツアーを何度も経験しているので、さほど驚いて居ない様子だった。

「最大収容客数は8000人だけど、フードコートとショップが入ってるし、サブアリーナもあるから、全体としては大きく見えるんだよ」
 実際の話、メインアリーナの広さは建物の半分に過ぎないのだ。

 ASR39の王都デビュー公演は1週間後と決まっていた。
『アクアスター王都アリーナ』のグランド・オープンに合わせて開催されるのだが、アスナの宣伝が上手く行ったお陰でチケットは完売していた。

「あら、カイトじゃないの」そう言って声を掛けた来たのは、そのアスナであった。

「お、偶然だね、なんでここにいるの?」

「なんでって、決まってるじゃない。
 ここには、うちの店が3店舗も出店してるんだから、様子を見に来たのよ」
 アスナの言う通り『アクアスター王都アリーナ』には、カフェ・バレンシア、バレンシア・ストア、ジェラート・バレンシアが出店しており、バレンシア商会としても力を入れているのだ。

「アスナさ~ん、お久しぶりで~す」
 そう言ってリオナ、トリン、マリンの3人が笑顔でアスナに声を掛けた。

「あら~、アイドルトリオも来てたのね。
 そっか~、王都デビュー公演、もうすぐだもんねぇ、私も見に来るから頑張ってね」とアスナはエールを送った。

「はい、アスナさん、ありがとうございます」とリオナたちも嬉しそうだった。

「あっ、そうだ、折角だから、うちの新作ジェラート食べてってよ」

「え~、いいんですか、嬉しい~」とアイドルトリオは喜んでいた。
 オレたちはジェラート・バレンシアで新作ジェラートをご馳走になった。

「この新作、ミックスベリーとフレッシュマンゴーなんだけど、お味は如何かしら?」

 アスナは護衛も含めオレたち全員分の新作ジェラートを用意してくれた。
「ミックスベリーも美味しいけど、フレッシュマンゴーの方が上品な甘みで、私はこっちが好きだな~」とジェスティーナが絶賛した。

 それぞれに意見を聞くと、ミックスベリー派とフレッシュマンゴー派が拮抗したが両方とも好評で、売れること間違い無しと女子全員が太鼓判を押した。

「あ、そうだアスナ、オレたち今夜『踊る銀ねこ亭』に泊まるんだけど、一緒に夕食はどう?」とアスナを夕食に誘ってみた。
 アスナもオレの婚約者フィアンセの一人なので、みんなと一緒の夕食に誘わなかったと知れたら後が怖いからだ。

「え、そうなの?
 それじゃ、私も仲間に入れてもらおうかしら」

「了解、女将に言って1人分の夕食追加してもらうよ。
 時間は6時で予約してあるから、お腹空かして来てね」

「ありがと、それじゃ6時に行くわね」

 アスナと分かれたオレたちは『アクアスター・モール』に立ち寄った。
 ここはオレの領地、アクアスターの特産品であるワインや農産物加工品とASR39とSDTのグッズを販売する店だ。
 自分たちのアイドルグッズを見つけたトリンとマリンは恥ずかしそうにしていた。
「私たちの顔がグッズになってるなんて、なんか不思議な感じがするわね~」
 グッズ販売はアイドルグループにとって人気のバロメーターだし『アクアスター・モール』にとっては売上を左右する重要商材なのだ。

 その後、オレたちは完成したばかりのメインアリーナを見学した。
「うわ~、大っきいわね~」
「領都のコンサートホールも大きいと思ったけど、比べ物にならないほど大きいわね」
 リオナたちは、来週ここで自分たちが唄って踊るのを想像しているのだろう。
 ステージ上から黙って会場を見渡していた。

 その後、『アクアスター王都アリーナ』の館内設備を一通り見て歩き、オレたちは『踊る銀ねこ亭』に戻った。

 時間は既に5時を過ぎており、オレたちがシャワーを浴びて汗を流していると夕食の時間となった。
「夕食の準備ができましたよ~」とマリンが教えに来てくれた。
 階下に下りると、テーブルを3つ合わせた大きな席に白いテーブルクロスが敷かれ、美味しそうな料理が並んでいた。
 既にアスナは到着しており、女将と世間話していた。

「カイト~、遅いよ、もう6時過ぎてるんだからぁ…」とアスナが怒っている。

「ごめんごめん、シャワー入ってマッタリしてたら時間過ぎちゃった」

 全員が席に着いたところで、それぞれが飲み物を注文した。
 オレは当然の如くビールだ。
「はい、お待たせ~」と女将とマリンが飲み物を運んできた。

「それじゃ、みんなで乾杯しよう。
 銀ねこ亭の美味しい料理にカンパーイ!」
 みんながそれぞれのグラスを持ち乾杯した。

「さあさ、みんなたんと食べておくれよ~」
 そう言って女将が美味しそうな料理を運んで来た。

 女将が持ってきたのは王都の名物料理リンダーブレストである。
 シュラスコとケバブの中間といった感じの肉料理だ。
 女将が切り分けてくれた肉は、とてもジューシーで柔らかく、ハーブと岩塩がいい感じに効いてとても美味かった。

 王都の人気料理店ということで、ほどなく店は満席となった。
 オレ以外は全員若い女性、しかも何れ劣らぬ美女ばかりとあって、周りの席からは嫉妬とも羨望とも取れる視線が痛かったが、女将がにらみを利かすと男たちは視線を反らした。

 久しぶりの『踊る銀ねこ亭』での夕食は、どの料理も美味くて酒も進み、満足の行くものだった。
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