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第13章 エメラルドリゾート開発編

第163話 エルドラード・プロジェクト懇親会(後編)

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 今日のパーティでは、初めて言葉を交わす人が数人居て、オレの元へわざわざ挨拶に来た。

 ロランド・アランベルグとその娘のマリエルもそうだ。
 アランベルグ・グループはセントレーニアで手広く飲食業を展開している企業グループで、既に120年の歴史を持つ老舗企業だ。
 得意分野はセントレーニアの名物料理『エスコンフィ』の店や鶏肉料理の店、エスニック料理の店、居酒屋などを他店舗展開している。
 アルカディア・グループとは仕事上の良きライバルで、ゼビオス・アルカディアの推薦を得て今回のプロジェクトに参加したのである。

 父を早くに亡くし、若くしてアランベルグ・グループの総帥となった現会長のロランドは40歳、娘のマリエルは若干18歳にして社長を務めるやり手だと聞いている。
 会長のロランドは、精悍な風貌ふうぼうで内面から湧き出る『出来る人』オーラを纏い、如何にもやり手と思わせるエネルギッシュな男だ。
 娘のマリエルは、父親譲りの整った顔立ちに色香漂う見事なプロポーション、自信に満ちた笑顔をたたえた魅力的な女性である。

「ご挨拶が遅れました、アランベルグ・グループ会長のロランド・アランベルグでございます。
 このは私の長女で社長を努めますマリエルでございます」

「マリエル・アランベルグでございます。
 伯爵閣下にじかにお会いできて光栄に存じます」と挨拶した。

「この度は、私共にプロジェクト参画さんかくの機会をお与え下さいまして、誠にありがとうございます」と父娘おやこして頭を下げた。

「こちらこそ、エルドラード・プロジェクトに出資いただき感謝しております」

「伯爵閣下、セントレーニアにお出での際は、ぜひ私共の店にお立ち寄り下さい。
 自慢の料理をご賞味賜りたいと思っております」

「セントレーニアの名物料理ですね、あれはまだ食べたことがないんです。
 今度、機会があればお店に寄らせていただきます」

「畏まりました、その際はぜひご連絡下さい」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 次に挨拶に来たのは、このレストランのオーナーであるレオナード・イシュトリアと娘のカレンであった。
「伯爵閣下、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。
 当レストラングループの会長を努めますレオナード・イシュトリアでございます。
 この娘は社長を努めますカレンでございます」

「カレン・イシュトリアでございます。
 数々の武勇伝をお持ちの伯爵閣下と、直接お会いできて光栄に存じます」と挨拶した。

 イシュトリア・シーフードは領都シュテリオンベルグのレストラン経営とこの辺り一帯の水産業を取り仕切る首領ドンなのである。
 水産組合長も兼ねている彼を敵に回すと魚介類が手に入らなくなると言われているほどで、サエマレスタ・リゾートと並ぶ地元の有力者なのだ。
 レオナードは44歳、娘のカレンは19歳と聞いた。
 レオナードは赤黒く日焼けしており、如何にも海の男という風貌の朴訥ぼくとつとした感じの男である。
 対して娘のカレンは、名前の通り可憐で色白で、お淑やかな感じのお嬢様タイプの女性であるが、頭脳明晰・言語明瞭にして自分の意見はハッキリと言う女性だと聞いた。

「伯爵閣下、いつも当レストランをご利用下さいまして、誠にありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ美味しいシーフードをご提供いただきありがとうございます。
 それに料理長には、いつも無理なお願いをして美味しい料理を造ってもらって感謝しております」

「うちの料理長もご領主様から新しい調理法を教えていただき、その見識の深さに感心しております。
 もし、また何か調理のリクエストがございましたら、いつでもお申し付け下さい」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 次に挨拶に来たのはゼビオス・アルカディアの息子でアルカディアグループNo.2のエリオスであった。
 息子の顔を見て、オレは似た者親子だなぁと思った。
 年齢は35歳であると言う。
 無骨で押しの強そうな風貌で、美男と言う言葉とは程遠い存在であった。
 しかし、笑うと人懐っこく愛嬌のある顔だが、父親同様に如何にも仕事ができそうな男である。

「お噂は、かねがね父から聞いております」とエリオスは言う。
「父の度肝を抜くような事を仰るのは、この領内にカイト様しかられないと思います」

 恐らく彼が言っているのは、エミリアを引き抜いた一件と、今回の金貨300万枚の出資の話であろう。
 それほどまでにゼビオスの権限は、セントレーニアでは絶大という事であろう。

「いやいや、両方とも切羽詰まっていたので、私も必死だっただけのことです」

「いえいえ、今回の会議でも、私は度肝を抜かれることばかりでした。
 これから長いお付き合いになると思いますが、どうぞお手柔らかにお願いします」

 風貌からは想像できない柔らかい物腰で、理路整然と話すエリオスにオレは好感を覚えた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 次にオレの元へ挨拶に来たのはサエマレスタ・リゾート会長のエルビン・サエマレスタと孫で社長のアンジェラであった。
 彼女はサファイアブルーの瞳に知性を宿す才媛の誉れ高き20歳の美女で、スカイブルーの清楚なドレスに身を包み、爽やかな笑顔でオレに挨拶した。

「カイト様、いつも当リゾートをご利用下さいましてありがとうございます」
 アンジェラがそう言うと祖父のエルビンも頭を下げた。

「いえいえ、いつも上質なサービスをご提供いただき、感謝しております。
 私も自分のリゾートでサエマレスタさんのサービス品質の高さを見習わなければと常日頃思っております。
 もし、機会があれば、アクアスターリゾートにお出でいただき、ご指導をお願いしたいと考えております」

「お褒めの言葉ありがとうございます。
 私もカイト様が経営されるリゾートを、是非一度拝見させていただきたいと考えておりました。
 時期を見て伺いたいと思っておりますので、その節は宜しくお願い致します」

「はい、こちらこそ、宜しくお願いします」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 懇親会は2時間ほどでお開きとなった。
 出席者の内、地元在住者以外はサエマレスタ・リゾートのスイートに宿泊しており、連れ立って移動した。
 徒歩で3分程なので、十分に歩いて行ける距離だ。

 オレとジェスティーナはいつもの部屋を取り、アスナとサクラは同じ部屋、公爵夫妻は隣の部屋、従姉妹のエレナはジェスティーナと同じ部屋で寝たいと別の部屋を取った。
 エレナにとっては滅多にない旅行であり、従姉妹であるジェスティーナと同じ部屋に泊まって思う存分女子トークを楽しみたいのだろう。

 ジェスティーナをエレナに取られ、今日は一人で寝ることとなったオレが寝酒にホテルのバーで飲んでいると、アランベルグの娘マリエルがオレの席へやって来た。
「父が、カイト様に折り入ってご相談したいことがあるとのこと、恐れ入りますが、部屋までご足労いただけませんでしょうか?」

 オレは何の相談だろうと思いながらも、マリエルの言葉に従い、ロランド・アランベルグが待つ部屋へ向かった。

 ドアを開けるとスイート・ルームのリビングには誰もいなかった。
「只今、父を呼んで参りますのでソファに掛けてお待ち下さい」
 そう言ってマリエルは隣の部屋へロランドを呼びに行った。

 ソファに掛けて待っていると隣部屋のドアが空いた。
 ロランドが来たのだろうと振り向くと、そこにはバスタオル1枚だけを体に巻いたマリエルの姿があった。
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