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第13章 エメラルドリゾート開発編

第161話 リゾート開発共同企業体

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 話は5ヶ月ほど前に遡る。
 領都シュテリオンベルグに於いて、リゾート開発共同企業体の設立に向けた初会合が行われ、8つの企業グループから13名が出席した。

 開会に当たり、発起人のオレが挨拶した。
「本日は、お忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。
 シュテリオンベルグ伯爵領の領主と致しまして、まずはお礼申し上げます」

「さて、ご存知のように旧サンドベリア地区は前領主の数多あまたの悪政悪行により、悲惨な状況に陥りました。
 しかし、皆さま方のご理解とご協力により、何とか復興に向けて目途を付けることが出来ました」

「幸いなことにシュテリオンベルグ領は恵まれた自然環境と観光資源がございます。
 私はこれを活かし、観光振興とリゾート開発により、ソランスター王国随一の豊かな自治体として発展させたいと考えております。
 皆様のお力添えを、今後とも宜しくお願い申し上げます」
 オレの挨拶が終わると出席者は拍手で称え、賛辞を送った。

 出席者には、オレが考え秘書のサクラがまとめた『リゾート開発共同企業体設立草案』を配布している。
 草案は、このような内容だ。
 1.参加企業名(本社所在地、事業内容)、出席者名(役職)
  ①アクアスター・リゾート(アクアスター領、リゾート開発運営・建設
 業他)
   カイト・シュテリオンベルグ伯爵(社長)
   アスナ・バレンシア(副社長)
  ②ソランスター・リゾート(王都フローリア、リゾート投資会社)
   ジェスティーナ・ソランスター王女(社長)
  ③アルテオン・リゾート(王都フローリア、リゾート投資会社) 
   チェザーレ・アルテオン公爵(社長)
  ④バレンシア・グループ(王都フローリア、商業・流通業・飲食業他)
   リカール・バレンシア(当主)
  ⑤アルカディア・グループ(セントレーニア、ホテル・飲食業・製造業他)
   ゼビオス・アルカディア(会長)
   エリオス・アルカディア(社長)
  ⑥サエマレスタ・リゾート(領都シュテリオンベルグ、リゾート運営)
   エルビン・サエマレスタ(会長)
   アンジェラ・サエマレスタ(社長)
  ⑦イシュトリア・シーフード(領都シュテリオンベルグ、飲食業、水産業)
   レオナード・イシュトリア(会長)
   カレン・イシュトリア(社長)
  ⑧アランベルグ・グループ(セントレーニア、飲食業、農業、商業)
   ロランド・アランベルグ(アランベルグ・グループ会長)
   マリエル・アランベルグ(アランベルグ・グループ社長)

 2.設立目的
 シュテリオンベルグ伯爵領の産業振興。
 リゾートと観光を中核として飲食、商業、農業、水産業、サービス業などと相互連携し地域振興を行う。
 合わせて王都と王国内主要都市間を結ぶ飛行船定期航路を活用して観光客を呼び込み領内全体の産業を活性化させる。

 3.出資金の内訳(出資額順)
  ①アクアスター・リゾート 金貨30万枚
  ②アルカディア・グループ 金貨30万枚
  ③ソランスター王室    金貨30万枚
  ④バレンシア商会     金貨20万枚
  ⑤サエマレスタ・リゾート 金貨20万枚
  ⑥アルテオン公爵家    金貨10万枚
  ⑦イシュトリアシーフード 金貨10万枚
  ⑧アランベルグ・グループ 金貨10万枚
   出資金合計       金貨160万枚(円換算1600億円)

 4.事業計画
  ①エメラルド・リゾートの共同開発
   エメラルド諸島を出資企業共同でリゾート開発する
   当初の開発対象は次の3つの島(エルメ島、シュピーレン島、クリスタ島)
  ②シュテリオンベルグ伯爵領全体の観光振興
   観光産業を中核として領内諸産業と相互連携し地域振興策を協議する。
   対象とする産業は飲食業、商業、農業、水産業、サービス業、流通業、他
 
 5.具体的な事業内容
  ①エルメ島のマリンリゾート開発
  ②シュピーレン島の体験型リゾート開発
  ③クリスタ島の滞在型リゾート開発
  ④領都シュテリオンベルグ地区の観光振興
  ⑤セントレーニア地区の観光振興
  ⑥旧ルハーゲ地区の観光振興
  ⑦王都及び他都市との地域連携

 資料に沿って設立草案を一通り説明し、出席者に意見を求めた。
 手を上げて発言を求めたのはゼビオス・アルカディアであった。
 ゼビオスは、恰幅が良く、白髪に白髭を蓄え、見るからに一癖も二癖もありそうな風体ふうていの老人だ。
「伯爵閣下、事業計画にエメラルド・リゾートの開発と領内の観光振興が併記されておりますが、これを1つ事業協同組合で行うと言うことですか?」

「そう考えておりましたが、ご意見があれば伺います」

「私が思うにエメラルド・リゾートの開発と領内の観光振興は分けて考えた方が良いように思えます。
 前者は、新規リゾートを1から開発する計画、後者は既存地域の振興策ですから、自ずと性格が違ってきます。
 私は、別々の企業体を立ち上げて、それぞれで管理した方が良いと考えております」

「なるほど、それは一理ありますね。
 ゼビオス殿の意見について、他の方はどう思われますか?」

 それに対し発言を求めたのは、サエマレスタ・リゾート会長のエルビン・サエマレスタであった。
 エルビンは、長身痩躯ちょうしんそうくで短く手入れされた顎髭を蓄え、表情は柔和であるが眼光が鋭い老紳士であった。
「私も、ゼビオス会長と同意見です。
 双方とも事業の性格が大きく違いますし、事業を行う上で収支は明確にした方が良いでしょう。
 ところで、領主様…
 エメラルド・リゾートの開発は、どのような形態をお考えですか?」

「どのような形態とは、どういうことですか?」

「これは失礼しました。
 言葉が足りませんでしたな。
 エメラルドリゾートの3つの島に、それぞれの企業が独自でリゾートを開発し、独自で運営するのか、それとも合弁企業を設立して共同開発し運営するのかと言うことです」

「なるほど、そういう意味ですか」

「私が思うに、それぞれ独自にリゾート開発すると、時間も資金もマンパワーも分散して効率が悪いと思うのです。
 それよりも合弁企業を設立して、時間と資金とマンパワーを集約してトータルでリゾート開発と運営を行うのが良いと思っています」

「そうすれば、それぞれの企業の得意分野も活かせるでしょうし、リターンも出資割合に応じて明確だし、その形態が一番効率的だと思うのですが、如何でしょう?」
 オレの意見に対し、反対する意見は出なかった。

 協議の結果、エメラルド・リゾート開発の資本金は、出資金総額の75%に当たる金貨120万枚(1200億円)を充てることが決まった。
 エメラルド・リゾート開発の出資比率は、各企業の出資金割合に応じた金額とすることとなった。
 会社名は『エメラルド・リゾート株式会社(ERC)』とすることが全会一致で決まった。
 会社の設立目的は、出資企業によるエメラルド・リゾートの共同開発と継続的な運営である。

 次の議題、役員の選任に移った。
 互選による投票の結果、社長にはオレが選出された。
 その他の役員は出資額に応じて次のように決まった。
 社長  カイト・シュテリオンベルグ伯爵
 副社長 ゼビオス・アルカディア
 専務  ジェスティーナ・ソランスター王女
 常務  エルビン・サエマレスタ
 常務  リカール・バレンシア
 取締役 チェザーレ・アルテオン公爵
 取締役 レオナード・イシュトリア
 取締役 ロランド・アランベルグ
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