上 下
158 / 374
第12章 領都シュテリオンベルグ復興編

第156話 ポニーテールの日

しおりを挟む
 リオナがこの世界に来てから、かれこれ6ヶ月が経とうとしていた。
 オレがこの世界に来てからで数えれば1年弱と言う事になる。

 ここ最近のオレは、1ヶ月を4週とすれば、領都シュテリオンベルグに1週間、王都フローリアに1週間、アクアスターリゾートに2週間滞在するのがルーティンとなっていた。
 飛行船が新型の『空飛ぶイルカ号Ⅱ』に代わってからは、移動時間が短縮し、楽になったが、忙しいのに変わりはない。

 オレは元来がんらい仕事人間であり、時々突っ走って、視野が狭くなることもあるが、持つべきものは良き伴侶である。
 ジェスティーナやアスナが適切な言葉でたしなめてくれるのだ。
 最近のオレは毎週必ず休暇オフを取り、自分の時間を持つようにしている。
 そうしないと新しいアイデアが湧いてこないし、明日への活力も湧かないからだ。

 さて御託ごたくはこの辺にして、この半年間の出来事を順不同で紹介しよう。
 まずは、領都シュテリオンベルグに関することだ。

 市街へ離散した領民約2万人の内、約7割がこの半年間で戻って来た。
 オレが打ち出した『租税の1年間免除』と『貧困世帯への無利子貸付制度』が評価され、効果を上げたと言われている。
 しかし、実のところ一番大きかったのは、悪政を極めた前領主エレーゼが処罰され、代わりの領主としてオレが着任し、まともな領政が期待できそうだと言う評判であった。
 元々この地の住民である彼らは、止むに止まれず故郷を捨てたのであり、先祖代々暮らしてきたこの地を出たかった訳ではないのだ。
 障害が無くなれば、元いた土地に帰りたくなるのは当然の話である。

 噂は噂を呼び、領都シュテリオンベルグへ雪崩のように領民が戻ってきているのだ。
 それとは別に元々は他領の住民であった人々の移住も後を絶たず、それを合わせると、既に以前の人口の12万人を超えるまでになっていた。
 この様子だと人口増加は今後も続くであろうと内政担当補佐官のアーロン・リセットは言っていた。

 一方、シュテリオンベルグ市庁舎の建設工事は急ピッチで進んでいた。
 オレが設計した新市庁舎は、ホログラフィによる3Dモデルでプレゼンを実施し、ブリストール領主代行と領都運営チーム、新賢人会議メンバーに承認された。

 3Dプリンターで言うところのプリント作業に相当する生成工程ジェネレートに1ヶ月弱掛かると言うことで、二人の女神にお願いして、UFO型飛行船でシュテリオンベルグまで移動してもらって作業を開始した。
 作業と言っても、オレが設計したデータを2人の女神がMOG形式に変換し、セットするだけで、あとは自動で次から次へと生成してくれるのだ。

 出来上がった建築ユニットは、反重力クレーンを取り付けて、順番に組み立ててるのだが、その工程管理はスーの担当だ。
 UFO型飛行船のメインコンピュータで建築ユニットを管理し、ブロックを組み立てるように順番に設置していくのだ。
 MOGの生成工程ジェネレートと並行して組み立て作業を行っているので、工期は約1ヶ月で完了する見込みだ。
 後は設備や備品の搬入設置作業が残っているが、これも出来上がった部分から順に搬入設置を行っているので1ヶ月半で完了する予定だ。
 庭園の植栽も並行して作業が行われ、約90%が完成していた。

 市庁舎の建物は1週間で4階分ずつ高くなって行くのだから、暫く見なかった人はある日突然巨大な建物が出現したと思うに違いない。
 12階建ての建築物が僅か1ヶ月で完成すると言うのだから、そのスピードは驚異的だ。

 数日前の情報によると市庁舎はほぼ完成し、既にテナントの入居が始まっており、市民サービスの一部はサービスを開始したそうだ。
 シュテリオンベルグ新市庁舎は2週間後にオープニング記念イベントを実施し、グランドオープンする予定だ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 領都の公務員採用試験は行政職に330名、領軍・警察職に1250名の応募があった。
 そのうち、1次試験合格者は行政職は154名、領軍・警察職では672名であった。
 2次試験の結果、行政職に100名、領軍・警察職に500名を採用した。
 早速、3ヶ月の教育訓練を開始し、終了後各部署に配属された。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 さて硬い話ばかりでは退屈だろうから、ここら辺で柔らかい話もしておこう。

 毎月7の付く日を『ポニーテールの日』に制定した。
 誰が決めたかって?
 もちろん、オレである。
 完全にオレの独断と偏見で決めたのだ。

 この日はメイドたち36人はもちろん、ジェスティーナもアスナもトリンもエミリアもリオナもアクアスターリゾートに勤務する全女性スタッフ、それにSDTダンシングチームの13名も含め、全員ポニーテールにする日なのだ。

 もちろん強制である。
 やれパワハラだ何だと言う声が聞こえてきそうだが、そんなの関係ない。

 その日は朝からオレはルンルン気分なのだ。
 気持ち悪いという輩もいるだろうが、これはオレの趣味なのだから、人にとやかく言われる筋合いはない。

 最近はポニーテールへの理解が深まり、ポニテの日以外の日でもポニーテールにしてくれる女子が増えてきたのは嬉しい限りだ。

 ちなみに『ツインテールの日』と言うのもある。
 毎月2の付く日がその日なのだが、これを提唱したのは他ならぬスーであった。
 見た目は8歳、実年齢は12歳、その実態は成人女性という希少な妖精族である彼女は綺麗な金色の長い髪が自慢であり、ツインテールがトレードマークなのだ。
 スーは『ポニーテールの日』があるのに、『ツインテールの日』が無いのは差別だと異議を唱えたのだ。

 確かにスーの言い分にも一理あると『ツインテールの日』を制定したのである。
 だから、その日はアクアスターリゾートに勤務する女性は、全員ツインテールにするのだ。
 実のところ、オレは元々ツインテールも好きだったので、反対する理由は何も無かったのだ。
 オレが『ツインテールの日』を制定するに当たり、スーに出した交換条件が1つある。
 それは何かと言うと『ポニーテールの日』にはスーもポニーテールにすると言う事だ。
 最初は難色を示していたスーであったが『ツインテールの日』が制定されると言うじつを取り、オレの要望を飲むことにしたそうだ。

 そして今日は7日、ポニーテールの日である。
 オレのリクエストに答え、ポニーテールのジェスティーナがメイド姿でオレを癒やしてくれるらしい。

 元々、ジェスティーナにコスプレの趣味はないが、まるでコスプレに目覚めたかのように今日の彼女はノリノリであった。
 オレが部屋に帰ると、虎視眈々と待ち構えていたジェスティーナがこう言ったのだ。
「お帰りなさいませ、ご主人さま…
 メイド喫茶ポニーテールへようこそ!
 今日は私がご主人さまを癒やして差し上げますね♡」

 正真正銘の王女様がメイド服を着て、しかもポニーテールで癒やしてくれるのだから、オレが萌えない訳がない。

 定番のオムライス美味しくな~れの魔法から、メイドLIVEまでフルコースを満喫したところで、最後は大人の夜のお楽しみが待っていた。
 ジェスティーナはメイド姿のまま、オレをベッドへといざなったのだ。

 メイド服姿で背中まで伸びた金髪ポニーテールの超絶美少女にオレの男の本能が黙っているわけがない。
 その夜、オレとジェスティーナがいつも以上に燃え上がったのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...