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第9章 王都への帰還
第99話 王都への帰還
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翌朝、目が覚めると、既にリーファはオレの部屋から消えていた。
朝の爽やかな日差しの中、オレは総督府の食堂へと向かった。
クラリスとステラ、エミリアは既に朝食をとっていた。
オレが席に近づくとクラリスが口を開いた。
「お早うございま~す。
カイトさまぁ、昨夜は眠れましたか~?」
「ああ、よく眠れたよ」
「え~、そうなんですかぁ?
私たちぃ、隣の部屋のHな声が煩くて~、眠れなかったんですけどぉ」
そう言って、オレの顔を下からじっと覗き込んだ。
これは完全に当て付けだろう。
「え、そうか?、そんな声聞こえなかったけどなぁ」とオレは惚けた。
「も~、カイトさまったら~、惚けても、分かってるんですからね~」と言ってクラリスが怒っている。
「そう言う時は~、私たちも誘って下さいよ~」
クラリスがそう言うとステラもエミリアも何故か怒っているように見えた。
でも、さすがにそれは総督府の客室では無理なことだ。
その時、リーファとソフィアが食堂に入ってきた。
「皆さん、お早うございます」とソフィアが明るく挨拶した。
「お早うございま~す」
リーファは何事もなかったように皆に挨拶した。
オレが食事を終え、部屋に戻ろうとすると総督の副官ヴァレンスが現れた。
「エレーゼ伯爵を乗せた護送馬車が到着し、王都移送の準備が整いました。
総督から伯爵護送の任を私とレガート隊長、他兵8名が命ぜられましたので、王都まで飛行船に同乗しても宜しいでしょうか?」
なるほど、護送となると王国兵の同行が必要ということか。
しかし、席が空いているので問題はない。
「いいですよ、護送中に何かあれば私ひとりで対処できないし、むしろ助かります」
「ハヤミ様、ありがとうございます」
「私どもは、エレーゼ伯爵の処分が決まるまで王都に滞在し、囚人の監視と尋問に立ち会う予定です」
「なるほど、それじゃ暫くは王都暮らしですね」
「はい、王都滞在は初めてのなので、少し緊張しています。
ところで何時頃、出発されますか?」
「そうですね、リーファをサンドベリアに送らなきゃならないので、10時頃には出発したいと思ってます」
「畏まりました。
総督にその旨伝えて、準備致します」
副官のヴァレンスは総督の執務室へ向かった。
やがて10時となり、出発の時間となった。
オレたちは総督府の庭に停泊していた飛行船『空飛ぶイルカ号』に乗り込んだ。
エレーゼ伯爵は、荷室に乗せる予定だったが、檻に入れて運ぶと、その間の排泄等衛生面の心配があり、結局異空間収納に入れて運ぶことになった。
異空間収納では、中に入れている間は時間が停止するので何かと好都合なのだ。
さすがに人間は入れたことはないが、説明書《マニュアル》には、大丈夫だと書いていたので、問題ないだろう。
飛行船の荷室には、副官ヴァレンスや護送兵が王都に長期滞在する間の荷物を収納した。
オレは全員の乗船を確認し、見送りに来たブリストール総督に挨拶した。
「総督、この度は色々とお世話になりました」
「何を申される、お世話になったのは私どもの方です。
ハヤミ殿がいなかったら、伯爵の悪事は暴けなかった訳ですからなぁ」と総督は顎髭を撫で、感慨深げに言った。
「いえいえ、総督のご英断のお陰でリーファも救出できましたから。
多分、また近い内にこちらへ来ることになると思いますが、その節は宜しくお願いします」
「分かりました、その時は歓待致しますので、ぜひお立ち寄り下さい」
そう言うと総督はにこやかに笑った。
オレは全員のシートベルトを確認し、電源スイッチを入れ、ハッチ開閉ボタンを押すとタラップが格納され、ハッチが閉まった。
コンソールのヘッドアップディスプレイには、現在の気象情報と周辺の地図が3Dで表示されている。
離陸ボタンを押すとジェットエンジンが起動し、下向きの噴射を開始した。
船体がふわりと浮かび上がると総督に手を振り、オレたちはセントレーニアに別れを告げた。
飛行船は地上30mまでゆっくりと浮上すると上昇速度を加速し、一気に地上3000mまで上昇した。
水平飛行に移り、オレたちは一路サンドベリアを目指した。
そこから約20分飛行してサンドベリア郊外の目立たない場所でリーファを下ろした。
別れ際、リーファがオレの耳元で、こう囁いた。
「あたしとしたくなったら、またサンドベリアにおいで…
あんたなら何時でもOKだよ。
なんせ体の相性抜群にいいからね」
そう言うと、ウィンクして見せた。
飛行船を降りると明るく手を振り、見えなくなるまでオレたちを見送ってくれた。
飛行船は高度3000mまで上昇すると、最高速度で王都を目指した。
サンドベリアから王都までは約1200km、5時間弱の旅だ。
天候は概ね良好、初めての王都行きが、空の旅となったソフィアや副官のヴァレンス、護送のため同乗したレガート隊長他兵8名は、物珍しそうに地上の風景を眺めていた。
午後3時半『空飛ぶイルカ号』は王都上空へ到達し、そのまま王室中央庭園に着陸した。
ジェスティーナには、昨夜電話して今日帰ることを伝えていたので、地上に降りると同時にジェスティーナが駆け寄り、人目も憚らず、オレに抱きついた。
「カイトさま、お帰りなさい」と可愛い笑顔でオレを出迎えてくれた。
「ただいま、ジェスティーナ」オレも王女を久しぶりに見て相変わらず美しいなと思った。
「どうしたの、私の顔になんか付いてる?」
「いや、相変わらずキレイだなと思ってね」
「も~、そう言うことは二人きりの時に言って欲しいな」とジェスティーナが照れた。
「あの~、ハヤミ様、お取り込み中、申し訳無いですが、他の者が降りられないので、通路を空けていただけませんか?」と申し訳無さそうにヴァレンスが言った。
「あ、これは失礼」
そう言って、オレが通路を空けると飛行船に乗ってきた同乗者達が降りてきた。
オレは異空間収納からエレーゼ伯爵の檻を取り出して王国兵に引き渡した。
伯爵は横になっていたが、様子を見る限りは呼吸しているので寝ているだけのようだ。
王国兵はエレーゼ伯爵が入れられた檻を台車に載せ、運んでいった。
恐らく、王宮の地下牢に入れるのだろう。
ステラとクラリスがシェスティーナに帰還の挨拶をした。
「ジェステーナ王女殿下、クラリス・ファンジェ、案内人の任を全う致しましてございます」
とクラリスが普段聞いたことのないような畏まった挨拶をした。
「王女殿下、ステラ・リーン、護衛の任を無事全う致しましてございます」
ステラも普段の含羞んだ様子は、全く感じさせず畏まって挨拶した。
「クラリス、ステラ、二人ともご苦労さま、今夜は王宮の客間を取ってありますから、そこで休むと良いでしょう」
「は、有難きお言葉、辱く存じます」と二人は声を揃え、臣下の礼を取った。
こんなに普通に話せるのに、普段は何故あのような話し方なのか、オレは疑問に思った。
最後にエミリアとソフィアがタラップを降りてきた。
先にソフィアがジェスティーナ王女に挨拶する。
「王女殿下、お初にお目にかかります、私はソフィア・エレーゼと申します。
この度は、兄の悪行の数々、大変申し訳なく、お詫びのしようもございません」
「いえいえ、貴女のことは、カイト様から聞いています。
貴女も被害者なのですから、詫びる必要などありません。
むしろ心を鬼にして、身内の罪を明らかにするのですから、卑屈になる必要などありませんよ」
そう言ってジェスティーナ王女はソフィアを元気づけた。
最後に挨拶したのはエミリアだった。
「王女殿下、お初にお目にかかります、私はエミリアと申します。
私はカイト様に不遇な環境からお救いいただき、その上働く場所までお世話いただき、とても感謝しております」
「エミリアさん、あなたが幼少の頃から苦労された事は、聞いています。
これからは、その恩に報いるつもりで、カイト様の力になって下さいね」
ジェスティーナは、流石は一国の王女と思わせる思い遣りのある言葉をエミリアに掛けた。
ソフィアは、兄の悪事の証言と、1ヶ月間の監禁による体力低下と精神面のケアが必要と診断され、王宮内に客間を与えられ、王都に暫く滞在することになった。
一方、エミリアはオレがアクアスター・リゾートへ戻るまでの数日間、王宮内の客間に滞在し、クラリス達の案内で王都見物に出かける予定だ。
二人が王都に滞在している間は、ステラとクラリスが身辺警護を兼ね、面倒を見てくれることとなった。
朝の爽やかな日差しの中、オレは総督府の食堂へと向かった。
クラリスとステラ、エミリアは既に朝食をとっていた。
オレが席に近づくとクラリスが口を開いた。
「お早うございま~す。
カイトさまぁ、昨夜は眠れましたか~?」
「ああ、よく眠れたよ」
「え~、そうなんですかぁ?
私たちぃ、隣の部屋のHな声が煩くて~、眠れなかったんですけどぉ」
そう言って、オレの顔を下からじっと覗き込んだ。
これは完全に当て付けだろう。
「え、そうか?、そんな声聞こえなかったけどなぁ」とオレは惚けた。
「も~、カイトさまったら~、惚けても、分かってるんですからね~」と言ってクラリスが怒っている。
「そう言う時は~、私たちも誘って下さいよ~」
クラリスがそう言うとステラもエミリアも何故か怒っているように見えた。
でも、さすがにそれは総督府の客室では無理なことだ。
その時、リーファとソフィアが食堂に入ってきた。
「皆さん、お早うございます」とソフィアが明るく挨拶した。
「お早うございま~す」
リーファは何事もなかったように皆に挨拶した。
オレが食事を終え、部屋に戻ろうとすると総督の副官ヴァレンスが現れた。
「エレーゼ伯爵を乗せた護送馬車が到着し、王都移送の準備が整いました。
総督から伯爵護送の任を私とレガート隊長、他兵8名が命ぜられましたので、王都まで飛行船に同乗しても宜しいでしょうか?」
なるほど、護送となると王国兵の同行が必要ということか。
しかし、席が空いているので問題はない。
「いいですよ、護送中に何かあれば私ひとりで対処できないし、むしろ助かります」
「ハヤミ様、ありがとうございます」
「私どもは、エレーゼ伯爵の処分が決まるまで王都に滞在し、囚人の監視と尋問に立ち会う予定です」
「なるほど、それじゃ暫くは王都暮らしですね」
「はい、王都滞在は初めてのなので、少し緊張しています。
ところで何時頃、出発されますか?」
「そうですね、リーファをサンドベリアに送らなきゃならないので、10時頃には出発したいと思ってます」
「畏まりました。
総督にその旨伝えて、準備致します」
副官のヴァレンスは総督の執務室へ向かった。
やがて10時となり、出発の時間となった。
オレたちは総督府の庭に停泊していた飛行船『空飛ぶイルカ号』に乗り込んだ。
エレーゼ伯爵は、荷室に乗せる予定だったが、檻に入れて運ぶと、その間の排泄等衛生面の心配があり、結局異空間収納に入れて運ぶことになった。
異空間収納では、中に入れている間は時間が停止するので何かと好都合なのだ。
さすがに人間は入れたことはないが、説明書《マニュアル》には、大丈夫だと書いていたので、問題ないだろう。
飛行船の荷室には、副官ヴァレンスや護送兵が王都に長期滞在する間の荷物を収納した。
オレは全員の乗船を確認し、見送りに来たブリストール総督に挨拶した。
「総督、この度は色々とお世話になりました」
「何を申される、お世話になったのは私どもの方です。
ハヤミ殿がいなかったら、伯爵の悪事は暴けなかった訳ですからなぁ」と総督は顎髭を撫で、感慨深げに言った。
「いえいえ、総督のご英断のお陰でリーファも救出できましたから。
多分、また近い内にこちらへ来ることになると思いますが、その節は宜しくお願いします」
「分かりました、その時は歓待致しますので、ぜひお立ち寄り下さい」
そう言うと総督はにこやかに笑った。
オレは全員のシートベルトを確認し、電源スイッチを入れ、ハッチ開閉ボタンを押すとタラップが格納され、ハッチが閉まった。
コンソールのヘッドアップディスプレイには、現在の気象情報と周辺の地図が3Dで表示されている。
離陸ボタンを押すとジェットエンジンが起動し、下向きの噴射を開始した。
船体がふわりと浮かび上がると総督に手を振り、オレたちはセントレーニアに別れを告げた。
飛行船は地上30mまでゆっくりと浮上すると上昇速度を加速し、一気に地上3000mまで上昇した。
水平飛行に移り、オレたちは一路サンドベリアを目指した。
そこから約20分飛行してサンドベリア郊外の目立たない場所でリーファを下ろした。
別れ際、リーファがオレの耳元で、こう囁いた。
「あたしとしたくなったら、またサンドベリアにおいで…
あんたなら何時でもOKだよ。
なんせ体の相性抜群にいいからね」
そう言うと、ウィンクして見せた。
飛行船を降りると明るく手を振り、見えなくなるまでオレたちを見送ってくれた。
飛行船は高度3000mまで上昇すると、最高速度で王都を目指した。
サンドベリアから王都までは約1200km、5時間弱の旅だ。
天候は概ね良好、初めての王都行きが、空の旅となったソフィアや副官のヴァレンス、護送のため同乗したレガート隊長他兵8名は、物珍しそうに地上の風景を眺めていた。
午後3時半『空飛ぶイルカ号』は王都上空へ到達し、そのまま王室中央庭園に着陸した。
ジェスティーナには、昨夜電話して今日帰ることを伝えていたので、地上に降りると同時にジェスティーナが駆け寄り、人目も憚らず、オレに抱きついた。
「カイトさま、お帰りなさい」と可愛い笑顔でオレを出迎えてくれた。
「ただいま、ジェスティーナ」オレも王女を久しぶりに見て相変わらず美しいなと思った。
「どうしたの、私の顔になんか付いてる?」
「いや、相変わらずキレイだなと思ってね」
「も~、そう言うことは二人きりの時に言って欲しいな」とジェスティーナが照れた。
「あの~、ハヤミ様、お取り込み中、申し訳無いですが、他の者が降りられないので、通路を空けていただけませんか?」と申し訳無さそうにヴァレンスが言った。
「あ、これは失礼」
そう言って、オレが通路を空けると飛行船に乗ってきた同乗者達が降りてきた。
オレは異空間収納からエレーゼ伯爵の檻を取り出して王国兵に引き渡した。
伯爵は横になっていたが、様子を見る限りは呼吸しているので寝ているだけのようだ。
王国兵はエレーゼ伯爵が入れられた檻を台車に載せ、運んでいった。
恐らく、王宮の地下牢に入れるのだろう。
ステラとクラリスがシェスティーナに帰還の挨拶をした。
「ジェステーナ王女殿下、クラリス・ファンジェ、案内人の任を全う致しましてございます」
とクラリスが普段聞いたことのないような畏まった挨拶をした。
「王女殿下、ステラ・リーン、護衛の任を無事全う致しましてございます」
ステラも普段の含羞んだ様子は、全く感じさせず畏まって挨拶した。
「クラリス、ステラ、二人ともご苦労さま、今夜は王宮の客間を取ってありますから、そこで休むと良いでしょう」
「は、有難きお言葉、辱く存じます」と二人は声を揃え、臣下の礼を取った。
こんなに普通に話せるのに、普段は何故あのような話し方なのか、オレは疑問に思った。
最後にエミリアとソフィアがタラップを降りてきた。
先にソフィアがジェスティーナ王女に挨拶する。
「王女殿下、お初にお目にかかります、私はソフィア・エレーゼと申します。
この度は、兄の悪行の数々、大変申し訳なく、お詫びのしようもございません」
「いえいえ、貴女のことは、カイト様から聞いています。
貴女も被害者なのですから、詫びる必要などありません。
むしろ心を鬼にして、身内の罪を明らかにするのですから、卑屈になる必要などありませんよ」
そう言ってジェスティーナ王女はソフィアを元気づけた。
最後に挨拶したのはエミリアだった。
「王女殿下、お初にお目にかかります、私はエミリアと申します。
私はカイト様に不遇な環境からお救いいただき、その上働く場所までお世話いただき、とても感謝しております」
「エミリアさん、あなたが幼少の頃から苦労された事は、聞いています。
これからは、その恩に報いるつもりで、カイト様の力になって下さいね」
ジェスティーナは、流石は一国の王女と思わせる思い遣りのある言葉をエミリアに掛けた。
ソフィアは、兄の悪事の証言と、1ヶ月間の監禁による体力低下と精神面のケアが必要と診断され、王宮内に客間を与えられ、王都に暫く滞在することになった。
一方、エミリアはオレがアクアスター・リゾートへ戻るまでの数日間、王宮内の客間に滞在し、クラリス達の案内で王都見物に出かける予定だ。
二人が王都に滞在している間は、ステラとクラリスが身辺警護を兼ね、面倒を見てくれることとなった。
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