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第8章 南国リゾートへの旅

第89話 エメラルド諸島

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 イシュトリア・シーフードの帰り道、スタンドバーへ寄った。
 美女3人はカクテルを、オレはビールを注文した。
 オープンエアの店内は夜風が吹き抜けて心地良い。
 つまみに注文したチーズ&クラッカーを肴に1時間ほど女性たちとの会話を楽しんだ。

「クラリス、前から気になってたんだけど、冒険者ギルドの仕事はどうしたの?」

「えっと~、王室からの依頼なのでぇ、ギルドにお願いして休職にしてもらってるんですぅ」
 クラリスの話によると冒険者ギルドも人手不足なのだが、王室からの依頼であり、オレと旅に出ている間は、冒険者ギルドの管理職が代役を勤めているそうだ。
「へ~、そうなんだ、なんか悪いね」

「そうなんですよ~、私だけこんなにノンびりしちゃって、申し訳ないです」
「なんか、お土産買って行かなくちゃ~」

嵩張かさばる物でも、異空間収納に入れれば大丈夫だよ」

「ところで、明日は島に行ってみようと思ってるんだけど、どうかな」

 そう言うと、クラリスはビジネスモードに切り替えて説明してくれた。
「はい、畏まりました」
「サンドベリアの沖には、120余りの島があります」
「そのほとんどは無人島で、中には人が住んでいる島もありますが、多くても1千人前後です」

島嶼部とうしょぶは、全て王室直轄領ですが、国王陛下から許可をいただいておりますので、どの島に上陸しても問題ありません」

「クラリス、一番遠い島までの距離はどれくらい?」

「確か80kmくらいの筈です」

「飛行船なら、20分で行けるな」
「それじゃ、明朝チェックアウトして島巡りをしよう」

「分かりました」
「ですが、島には宿泊施設はありません、どうしますか?」

「大丈夫、異空間収納にテントとタープがあるし、最悪飛行船の中にエアマットとシュラフ敷いて寝てもいいし、食料も十分あるから」

 オレたちは、バーからの帰り道、腹ごなしにホテルまで砂浜を歩いた。
 30度ほど上空に真ん丸い月が出ており、その光が海に反射してキラキラ輝いている。
 それを俗に『月の道』と言うのだそうだ。

「カイトさまぁ…、今日も?」とクラリスが言った。

「ん~、望むところだけど、1対3だから体力が持つかな~」

「大丈夫ですよ~、手加減して差し上げますから」
 クラリスがドヤ顔で言うと、ステラもエミリアも声を上げて笑った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 翌日、早々にホテルをチェックアウトして、サンドベリア郊外まで移動し、そこから飛行船で島へ飛んだ。
 天気は快晴で飛行船から眺める海はエメラルドブルーに輝いていた。
 今は乾季なので雨はほとんど降らず、降ったとしてもスコール的な雨で30分もすればカラッと晴れるのだ。

 サンドベリアの沖には、120もの島々があり、『エメラルド諸島アイランド』と呼ばれている。
 大小様々な島々のほとんどは無人島で、手つかずの大自然が残っており、人が住んでいるのは、その内の1割ほどに過ぎなかった。

クラリスの話によると『エメラルド諸島アイランド』は、王室直轄領でセントレーニア総督府の管轄なのだそうだ。

 最初はサンドベリアから10kmの島、レグルス島へ向かった。
 周りは豊饒ほうじょうの海と呼ばれる屈指の好漁場で、昨日オレたちがイシュトリア・シーフードで食べた魚介類は、この島の近海で取れたものがほとんどだそうだ。
 レグルス島は周囲約80kmの島で、約1200人の住民は幾つかの集落に分かれて住んでおり、8割の住民は何らかの形で漁業に関わっている。

 レグルス島には自然の入り江があり、そこには100艘近くの帆掛船ほかけぶねと小型の帆船が数隻停泊していた。
 魚を捕るのは帆掛船ほかけぶねで、もちろん動力は風だ。
 獲った魚は帆船でサンドベリアへ運んでいるのだが、帆船の中には生簀があり、その中に入れて運ぶので鮮度も抜群なのだ。

 島の周囲は岩礁地帯と砂浜に分かれており、サンドベリアと同じくらいに風光明媚《ふうこうめいび》な島だが、それ以上に特筆すべきところはない。

 オレは『エメラルド諸島アイランド』の120余りの島々を飛行船に標準装備されている自動マッピングシステムで地図を作成することにした。
『空飛ぶイルカ号』の自動マッピングシステムは、飛行した地域を自動で測量して地図化する便利なシステムなのだ。

 一度地図を作成すれば、正確な距離も分かるし、次に来る時に全自動航行が可能だ。
 長さ80km、幅100kmの範囲を2往復して地図を完成させた。

 眼下にはエメラルドグリーンの大海原、点在するように白砂に緑の島、ところどころにラグーンを持つサンゴ礁など見事な景色の連続だった。

 その中でオレの目を引いた島が幾つかあった。
 いずれもラグーンに囲まれ、見事なサンゴ礁と白砂のビーチを持つ島だ。

「クラリス、この島の名前は?」

「え~っと、資料によれば、その島はエルメ島です」

「エルメ島か、いい名前だな」

 オレはラグーンの中の一番大きな島、エルメ島の砂浜に飛行船を着陸させた。
 目の前には、全長3kmの白砂のビーチが広がり、エメラルドグリーンに輝く海、水平線まで続く紺碧の空と白い雲がまぶしかった。
 島側には南国ムード漂う椰子やしの木や、ハイビスカスの鮮やかな赤、白と黄色のプルメリアの花、ピンクのブーゲンビリアの花も咲いており、まさに地上の楽園と言った感じだ。

「うわぁ~、何コレ、すご~い」とクラリスがタラップを降り、波打ち際まで駆けていく。
「わたし、こんな綺麗な景色見たことないです」とエミリアも後を追った。

「凄く綺麗」とステラも短い言葉に感動を凝縮させ、二人の後を追った。

 オレも元の世界で色々な場所を旅してキレイな景色を見てきたが、これほど美しい景色を見たのは初めてだ。

 波打ち際まで歩いていくと、海の透明度は限りなく透明で、熱帯魚が悠々と泳いでいるのが手に取るように見てとれた。
 恐らくサンゴ礁には、たくさんの熱帯魚が棲息していることだろう。
 飛行船で上空から見た限りは、民家や人の気配は無かったので、この島は無人島なのだろう。

「よし、今日はここで1泊するぞ!」
 そう言ってオレは、野営の準備を始めた。
 異空間収納から、ツールームテントを取り出し設営に取り掛かる。

「お手伝いします」とエミリアが言ってくれた。
 オレにとってテントの設営は朝飯前だ。

 エミリアに手伝ってもらって、15分ほどでテントの設営が完了した。
 続いて日除け用のウィングタープをテントの前に張った。
 ポリコットン素材の厚めの生地なので、今日のような強い日射しでも光を通さず、完璧な日陰を提供してくれるのだ。
 砂浜用に50cmのスパイラルペグを使ったので抜けることはないだろう。

「お~い、テント張ったぞ~」
「水着に着替えるなら使ってもいいぞ~」
 オレがそう言うと、3人の美女が走ってきた。

「カイトさま~、テントなんて別にいらないですよ~」とクラリスが言う。
「ここ無人島で誰もいないんですから~」とタープの下で服を脱ぎ始めた。

「おいおい、オレの目は気にしないのか?」

「え~、今更なに言ってるんですか~」とクラリスに呆れられてしまった。
 クラリスを見習いステラとエミリアも着替え始める。

 眼前で繰り広げられるプロポーション抜群の美女3人の生着替え。
 一夜を共にした中とは言え、魅力的な裸体につい目がクギ付けになってしまう。
 彼女たちは水着に着替え終わると海に泳ぎに行った。

 オレも水着に着替え、異空間収納からを取り出した。
 そのまま海に入っていくと、エミリアが不思議そうな顔でオレに言った。

「カイト様、それっていったいなんなのですか?」

「あ~、これね」
「これはシュノーケルマスクと言って、水の中を見ながら泳げるマスクだよ」と説明した。
 オレが元々使っていた『シュノーケルマスク』は水中メガネとシュノーケルが一体化したマスクで、正面から見ると殿様のチョンマゲのように見える。
 見た目はあまりカッコ良くないが、視野も広く、鼻でも口でも呼吸できると言う優れモノだ。

 マスクの上にはアクションカメラが装着可能で水中で動画撮影ができるのだ。
 アクションカメラを取り付けてサンゴ礁を泳ぐ熱帯魚の動画を撮影したら、さぞ綺麗だろうと持ってきたのだ。

「もう一つあるからエミリアも使ってみるかい?」

「はい、使ってみたいです」と言うので、マスクをエミリアに渡した。

 オレは30mほど沖のサンゴ礁でシュノーケリングを開始した。
 海の中は、お魚パラダイスだった。
 テーブルサンゴ、枝状サンゴなどの間を色とりどりの熱帯魚が乱舞している。
 その動画を撮影して後でジェスティーナに送る予定だ。
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