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第7章 旅の計画

第73話 カイト2隻目の飛行船を買う

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 飛行船は決して安い買い物では無いだけに、その選定は実に悩ましい。
 機動力重視の小型飛行船か、あるいは輸送性能に優れている中型飛行船か、その判断は、オレのスキルの一つ異空間収納の収容サイズによって決まるのだ。

 それを確かめるべく、久しぶりにオレは自分のステータスを確認した。
 既に1ヶ月以上は放置したままなので通知が何件も貯まっている。
 
 経験値レベル16(827/1600)
 HP 7810、LP 15770
 保有アイテム 英知の指輪、アウリープ号、スターライトソード
 保有スキル
 ◎マルチリンガル(自動言語翻訳)
  レベル2 最大3つの言語の理解と読み書きができるスキル
 ◎ファッシネーション(魅了)
  レベル4 自分が好意を持った人が自分に好意を寄せるスキル
 ◎リッチライフ
  レベル4 努力の必要なく豊かな生活が過ごせるスキル
 ◎キューブ
  レベル3 目に見えない立方体を作り、中に物を収納できるスキル
 ◎アイテム交換スキル
  レベル2 保有ポイントを消費するとマジックアイテムと交換できるスキル。

 HPは7810に増加、LPも大幅に加算され15770に増加。
 両方とも計算するのが面倒なくらいポイントが加算されている。
 クリアしたイベントも見た限りでは『国王暗殺阻止』、『王女と婚約』など高ランクなものがあり、もうポイントの増減を気にしなくても良いのかも知れない。

 個別に見るとファッシネーション(魅了)スキルがレベル4に上がっている。
 このスキルは自分が好意を持った人と、一緒の時間を過ごせば過ごすほど、その人が自分に好意を寄せると言う、なんとも都合の良いスキルなのだ。
 このスキルが4に上がると、人にもよるが単純にオレに惚れるまでの時間が短縮され、オレに惚れるレベル(度合い)も上がるという事らしい。

 ちなみにHPはエッチポイントの略で、100ポイントでメイド1人と一晩Hできるのだ。
 またLPはライフポイントの略で、このリゾートの滞在費として毎日消費されて、ポイントが0になれば、リゾートを追い出されてしまう。
 トリンやサクラをオレの側近として採用し、温泉など自分の趣味趣向を充実させるとLPの消費ポイントも増えていくのだ。
 ちなみに今は1日当り180ポイントのLPが消費されており、残高から計算すると約86日分滞在する権利がある。

 贅沢なことに、Hポイントの方は全く使う暇がない位に不自由しておらず、貯まる一方なので、アイテムと交換して有効活用した方が良いのだろう。

 ステータス画面で前から気になっていたマジックアイテムを見てみる。
 エンジェリックリング(天使の指輪) 2000EXポイント

 どんな機能があるのかステータス画面のヘルプを見る。
 エンジェリックリングは、この指輪を付けた人の幸運度と健康度を上昇させ、更には攻撃に対する防御力と回避率を常時上げる機能を持つと書いてある。

 この指輪を婚約指輪としてジェスティーナにプレゼントすれば喜ばれそうだ。
 オレはエンジェリックリング(天使の指輪)をHPポイントと交換した。
 恐らく、これも異世界宅配便で配達されるのだろう。

 肝心の異空間収納スキルの確認がまだだった。
 ヘルプで確認するとキューブのスキルはレベル3となり、それに伴い異空間収納の容量は4倍にアップしていた。
 今までは縦横高さ3辺が10mの1000立方メートルが上限だったが、これが8倍となって3辺が20m、8000立方メートルに収納容量がアップしたのだ。
 この容量だと『空飛ぶイルカ号』をそのまま収納可能で、オレ専用の飛行船として使えるので、中型の『フライイング・オルカ』を宿泊客ゲストの送迎専用として購入することが可能になったのだ。
 オレはマウスで『注文確定』ボタンを押した。
 飛行船が届く明後日が今から楽しみだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 翌朝、オレはアスナを乗せ『空飛ぶイルカ号』で王都からアクアスターリゾートへ飛んだ。

 飛行船に乗り眼下の景色を眺めながら、アスナが言った。
「2週間も旅に出るだなんて、随分と急な話ね」

「国王が出したオレの通行と滞在に関する通達が王国全土に届き、その返事が戻ってきて、ようやく旅が可能となったんだ。
 本当はもっと早く行きたかったけど、こればかりはしょうが無い」

「ところで、今回の旅は誰が同行することになったの?」

「1人はアスナもよく知ってるSクラス冒険者ステラ・リーン、もう一人は旅のコンシェルジュとして冒険者ギルドの受付嬢クラリスだ」

「えっ、そのメンバーで大丈夫なの?」とアスナが心配している。

「ステラは、相変わらずのコミュ障が心配だけど、護衛の腕は確かだからね。
 問題はもう一人のクラリスだよ。
 事ある毎にオレに色仕掛けして来るんだけど、あの娘大丈夫なの?」

「あ~、あの娘ね」とアスナは全てを察して頷く。
「ステラと同じパーティにいた元A級冒険者だから、護衛としての腕は確かだと思うわ」

「へ~、ステラと同じパーティとは知らなかったな」

「クラリスの色仕掛け、カイトとしては逆に嬉しいんじゃない?」

「でも終始あの調子じゃ疲れちゃうよ。
 それに彼女の考えが読めなくて、ちょっと心配なんだ」

「寝食を共にする旅のパートナーだから、不安は事前に解消した方がいいわよ」

「そうだね、慣れるように努力してみるよ」

 オレたちを乗せた『空飛ぶイルカ号』は順調に飛行を続け、お昼少し前にアクアスター・リゾートに到着した

 オレがタラップを下りると、メイドたちがオレを出迎えてくれた。
 秘書のサクラも飛行船に駆け寄り、オレとアスナに挨拶する。
「カイトさま、アスナさん、フライトお疲れさまでした」

「サクラ、ありがとう。
 少し打ち合わせしたいんだけど、時間あるかな?」

「はい、私もご報告したいことがあります」

 アスナは、バレンシア商会の元幹部社員達の様子を見に行き、オレとサクラはラウンジで昼食を取りながら打ち合わせを行った。

 オレはサクラに明後日から約2週間、旅に出ることを話した。
「えっ、旅行ですか、いいですねぇ」

「今回はオレの他、旅の案内人と護衛の3人だけの旅なんだ」

 本当はサクラも同行させたいが、今回は社員たちのOJTで指導役をお願いしている関係上、旅に同行させられないのだ。

「それと宿泊客ゲスト送迎用の飛行船を1隻購入したよ。
 今まで使っていた飛行船は、オレ専用で使うことにしたから」

「え、新しい飛行船ですか?」

「うん、今度は定員が36名だから、倍の乗客が乗れるよ」

「と言うことは船体も大きいんですね」とサクラ。

「そうそう、もう船の名前も決めてあるから」

「どんな名前にしたんですか?」

「今度の船体の形はシャチなので『空飛ぶシャチ号』に決めたよ」

「あら、そのまんまですね。
 前回がイルカで今回がシャチと海の哺乳類で統一されてるから、次はクジラですね」

 確かに、この飛行船シリーズにはクジラもあるのだ。
 クジラタイプの飛行船は定員も100名から360名まで色々なバリエーションがあるらしい。

「もしクジラも仲間入りすれば面白いね。
 その時は、3台並べて写真撮らなきゃ」とオレも笑って答えた。
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