上 下
62 / 374
第6章 リゾートの開業準備

第60話 女神フィリアの秘密

しおりを挟む
 王宮の自分の部屋に戻り、予約システムの開発に没頭しているとスマホに着信があった。
 見ると女神フィリアからであった。

「はい、カイトです」

「もしも~し、フィリアですぅ、ごぶさた~。
 カイトくん、元気してた~?」
 女神から着信があるなど、初めてのことだ。

「はい、ボチボチやってます」

「いや、ボチボチどころじゃないでしょ…
 聞いたよ~、なんか王様からご褒美たくさん貰ったって」
 一体どこで聞きつけたのだろう、女神は地獄耳なのか?

「いや、たまたまです。
 でも珍しいですね、女神様から電話くれるなんて」

「うん、今日はちょっとカイトくんにお願いがあってね」

「何ですか、いつもお世話になってるから大抵の事は聞きますよ」

「ありがと、今日カイトくんに電話したのはね、秘書雇わないかな~って思ってね」

「ひ、秘書ですか?」

「そうなの、カイトくんてさ、リゾート計画とか、旅に出る話とか、王室の事件に巻き込まれたり、色々忙しそうじゃない?
 これからリゾートも開業するし、メイド達だけだと手が回らないかなって思ってね…
 それで、ちょうど適任者が居たので、カイトくんの秘書にどうかな~って思って」

「確かに忙しいのは忙しいんですが、秘書は考えてなかったなぁ~…
 それで、どんな人なんですか?」

「えっとね~、名前は『サクラ』って言うの、あっ、この人、日本人ね」

「え、日本人なんですか?」

「そうなの、ちょっと可愛そうな人なの…
 元々、秘書やってて、仕事は抜群に出来るし優秀だから、能力は心配しなくていいよ」

「なんでまた、オレのところへ?」

「実はね、その人カイトくんが知ってる人なの…
 フルネームは『サオトメサクラ』って言うの、カイトくん聞いたこと無い?」

「サオトメサクラ?、聞いたことある名前ですね…
 サオトメサクラ、さおとめさくら、早乙女さおとめさくら……」
 あぁ~、オレの会社に同じ名前の人いましたよ、確か社長秘書だったはず…」

「正解!、カイトくん、その早乙女さおとめさくらさんです」

「え~、どうして?
 異世界に来るって言うことは死んだって言うことですか?」

「カイトくん、異世界じゃなくて正しくはパラレルワールドね。
 そう、彼女死んじゃったの。
 と言うか、正確には殺されたんだけどね」

「え、なんでまた?
 直接は話したことは無いけど、殺されるような人じゃ無かったと思うんですけど」

「そうね、じゃあ、その辺を説明するね…」
 女神フィリアの説明によると、早乙女さくらは某4年制大学を優秀な成績で卒業し、カイトと同じ会社に社長秘書として採用され入社した。
 学生時代はミスキャンパスとしてグランプリに輝いた才色兼備の才媛で、入社してからは仕事の把握も早く、裏表のない性格で、社内では先輩後輩老若男女を問わず好かれ、社長の信頼も厚く順調にキャリアを積んでいた。

 社長も秘書である早乙女さくらのことを気に入っており、自宅でも事あるごとに褒めて、家族に『早乙女は美人だし性格もいいし有能だ』とか、『あいつは良く気が付く』などと話す内に嫉妬深い社長の妻は、早乙女さくらと社長がデキていると疑い始めた。

 ある日、元ミスキャンパスの早乙女さくらを、接待に同席させて欲しいと取引先の会長から懇願され、無理を承知で社長が早乙女さくらに頼んだところ、さくらはその接待の出席を快諾。
 接待の席では、抜群の気遣いと話術で場を盛り上げ、お陰で120億円もの大口契約を獲得できたのだ。
 その後社長が、そのお礼として早乙女さくらをホテルのダイニングバーに連れて行ったのだ。

 そして大口取引獲得の祝杯を上げ、社長がさくらを慰労しているところを、ストーカーのように跡を付けていた社長の妻が目撃。
 2人が親しそうに歓談している様子を見て妻の疑惑は確信に変わり、嫉妬に狂った妻は店内に乱入、隠し持っていた包丁で背後から早乙女さくらを刺したのだ。
 ちょうど心臓の真後ろから刺され、早乙女さくらは、ほぼ即死だったと言う。

「ねぇ、可愛そうでしょ、頑張って働いてたのに、誤解されて殺されちゃうなんて」

「なんか、『火サス』とかに有りそうな展開ですが、それは確かに可愛そうだ…」

「と言う訳で、この世界に転生させることにしたんだけど、カイトくんのところで面倒見てくれないかな~って思ったの」

「分かりました、そう言う事なら面倒見させてもらいます」

「ありがとう、助かったわ。
 それじゃ、明日直接向かわせるから出迎えてあげてね」

「明日ですか?、またずいぶん急な話ですね。
 オレ、まだ王都に居るので明日の昼前には戻るようにしますから、お昼頃にして貰えますか?」

「分かったよ~、じゃあ、彼女にもそちらのこと説明しておくね」

「女神様も色々と大変ですね~」
 そう言うと女神からの返事に若干のがあった。

「えっと、カイトくん、多分ずっと勘違いしてるみたいだから言っておくけどね…
 私って、女神様じゃなくて、女神なの」

「え???…
 言っている意味が分かりませんが…」

 意味不明な物言いにオレが困惑していると、女神がこう続けた。
「女神は私の名字で、フィリアが名前なの、分かる?」

「はあ?」

「だ~か~ら~、『女神』は名字みょうじだっちゅ~の」
「カイトくんの名字みょうじ『速水』と同じって言えば分かるかな?」

 なるほど、確かにオレは女神フィリアを英語で言うGODDESSの女神と誤解していた。

「別に隠してる事じゃないんだけど、女神って聞くだけで誤解する人が多くて、いちいち説明するのも面倒だから、放っといてるんだけどね」

 女神フィリアの話によると、パラレルワールドの、この辺り一帯数十万の世界は『女神一族』が本部から管理を委託されてるとのことだ。
 他にも『神』とか『男神』、『邪神』などという紛らわしい名字の一族も居るらしく、混乱に拍車を掛けているそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...