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第5章 ふたたび王都へ

第59話 スター金貨5万枚の報奨金

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 国王から授与された褒賞金の支払いが行われ、スター金貨5万枚が王宮内のオレの部屋に届けられた。

 ソランスター王国で流通しているスター金貨は18Kで金の含有量は75%とそれほど高くなく、直径は約33mm、1枚の重さは約34gである。

 それが5万枚ということは総重量で1700kgだ
 1箱に500枚ずつ入れられた木箱1つだけでも重量は17kgもあるのだ。
 メイドたちに手伝ってもらい、木箱の1つを開けて中身を確認する。
 きれいに並べられた金貨を1枚取り出して手の平に乗せてみるとずっしり重い。
 この国の庶民の平均月収は金貨1枚にも満たないのだから、これがどれほどの価値か想像できる。

 今日は、このうちの200枚をアスナとステラに渡すため、冒険者ギルドへ行くのだ。

 すっかり顔なじみとなった王宮正門の衛兵に挨拶して、冒険者ギルドまでは歩いて20分ほどの距離だ。

 王都の冒険者ギルドは3階建ての大きな建物で、中は吹き抜けとなっており、入って左に受付カウンター、正面奥は冒険者の休憩スペースや仕事依頼の掲示板、冒険者の昇格降格に関する通知、魔獣の出没情報などの情報を提供していた。
 右側から中央はパブと売店で、その横にテーブルが有り、飲食を供するスペースとなっている。

 アスナとステラは既に到着し、奥のテーブルで何か飲んでいた。

「お待たせ」

「遅いよカイト、何分待たせるの?」とアスナが怒っている。

「ごめん、ごめん、出掛けにちょっと色々あって」
 国王から急な呼び出しがあり、そのせいで30分ほど遅れてしまったのだ。

「じゃあ、先に渡すもの渡すね」
 オレは異空間収納から金貨100枚が入った麻袋を2つ取り出して、アスナとステラに渡した。
 金貨100枚と言っても1袋当り3.4kgもあるのだから、それだけでもズッシリと重い。

「ステラには色々と世話になったね、ありがとう」

「私も色々経験して勉強になった、礼を申す」
 ステラは、普段の物言いからは想像もできない殊勝なことを言う。
 ステラの男のような態度や話し方と、その美しい見た目のギャップは未だに慣れることが出来ない。
 せめてこの口調でなければ、いい女なのに『惜しい』と内心オレは思ったが、無論顔には出さない。

「アスナとは、これからもビジネスパートナーとして何度も会う機会があるだろうけど、ステラとは暫く会えないかもな」

「カイト殿、護衛の任務などあれば、遠慮なく呼んで欲しい」とステラ。

「そうだ、ギルド通さないで直接契約ってのも有りなのかな?」

「それも可能だけど、トラブルが発生した時の調停や補償を考えるとギルドを通しておくに越したことはないわ」とアスナが教えてくれる。

「そう言えば、アスナに聞きたいと思ってた事があるんだった」

「え、何かしら?」

「この前、トリンと『カフェ・バレンシア』って言う店に行ったんだけど、あそこってバレンシア商会の系列?」

「ええそうよ、よく分かったわね」

「あのカフェは私が手掛けた店で立地、内装、インテリア、メニュー開発まで私が全部関わってるの」

「へ~、さすがはバレンシア商会だね。
 そこそこ流行ってたよ」

「そうなのよ、そこそこ入ってるんだけど、なかなか満席にならないのよね~。
 何が足りないのかな~」

「そうだな~、内装もインテリアも悪くないけど、まだ工夫の余地はあるかな。
 こう見えてもオレは建築設計のプロだから、今度出店する時は相談してみてよ」

「そうね、今度はカイトに相談するわ」

「メニューはトリンも気に入ってたし、悪くないけど、何か目玉になる商品があれば、もっと流行はやるかもなぁ」

「何かいいアイデアは無いかしら」

「そうだなぁ…、そう言えば、王都にアイスクリームの店って無いね」

「アイスクリーム?、何それ?」

「オレも作り方は良く知らないんだけど、要するに牛乳と卵、生クリーム、砂糖をよく混ぜて凍らせて作る冷たいお菓子だよ」

「え~、聞いただけでも、美味しそう」
 それを聞いてステラも頷いている。

「本当は、バニラビーンズがあれば、もっと美味しくできるはずだけど、この世界にはあるかなぁ…
 アイスクリームのレシピ、調べてアスナにメールしとくよ」

 その時、話題になった、アイスクリームが1カ月後には王都で大流行し『カフェ・バレンシア』は連日満席になることを、この時のオレたちが知る由も無かった。

「ところで、ステラはこれからどうするの?」

「私は冒険者ギルドで仕事を探すつもりだ」
 オレとステラは1ヶ月以上行動を共にしたが、死地をくぐり抜けた戦友であり、ステラの男嫌いはかなり改善し、オレとの関係も大分マシになったように思える。

「そうか、またどこかで会えるといいな」

「そうだな、その時は宜しく頼む」
 そう言ってオレたちはギルドの席を立った。
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