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第3章 王女ジェスティーナの救出
第32話 王国への救援要請
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オレたちはアウリープ号で10日ぶりに館へ戻った。
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
執事長のローレンとメイドたちが総出で迎えた。
しかし、悠長に挨拶を受けている暇はない。
アウリープ号から気絶している王女を抱き抱え、医務室へ運んだ。
傷口にトリンが造った2級ヒールポーション(怪我治療薬)を使うと、徐々に傷口は塞がり、やがて痕形もなく塞がった。
さすがはトリンが造ったポーションだと感心する。
もしトリンが傍にいたら、凄いぞと褒めていたことだろう。
一か八かの賭けは成功し、奇跡的にもジェスティーナ王女の救出は成功裏に終わった。
しかし、帯同した従者や男性兵士は殺され、女たちは盗賊たちに捉えられ捕虜となっている筈だ。
このまま放置すれば、筆舌に尽くしがたい屈辱を受けた挙げ句、奴隷に落とされ他国へ売られるのは、火を見るよりも明らかだ。
しかし、今のところ捕虜を救出する手立てがない。
戦闘ドロイドはいるが、領内警備に特化しており、外で戦うことはできないのだ。
良い策はないかと、ひたすら考え続けていると、ある案が浮かんだ。
「ローレンはいるか、急ぎの用がある」
メイドに呼ばれてローレンが走って来ると、急用であることを察知してこう言った。
「カイトさま、何なりとお命じ下さい」
「ローレン、ご苦労だが、これからすぐに早馬でソランスター国境に行き、国境警備隊に伝えてくれ」
ローレンには下記の内容を国境警備隊の隊長に伝えるように指示した。
◎ジェスティーナ王女一行の馬車が盗賊団に襲撃されたこと
◎偶然通り掛かったオレたちが王女を救出し、今は安全な場所で保護していること
◎盗賊団の規模は250人~300人であること
◎敵は組織だって良く訓練されており、想像以上に手強いこと
◎蒼雷の剣姫ステラ・リーンが味方におり、加勢できること
◎従者と兵士が大勢殺され、一部の者は捕虜として盗賊に捉えられたこと
◎捕虜救出のため至急救援が必要なこと
「これは重大任務だ、国境警備隊に一刻を争うと伝えてくれ」
念のためジェスティーナ王女が手にしていた王家の紋章と秋桜の刺繍入りハンカチーフを持たせた。
「は、かしこまりました」
そう言うとローレンは、すぐに馬を走らせ国境へと向かった。
国境までは、約100kmの距離があり、到着には恐らく5~6時間はかかるだろう。
街道には盗賊の残党が王女を探して彷徨いている可能性もあり、頗る危険な任務なのである。
本当は、オレがアウリープ号で向かった方が早いのだが、今ここを離れられないと判断したのだ。
医務室から湖畔が見えるラウンジに移動したジェスティーナ王女を見舞った。
既に王女は目を覚ましており、リアが介抱していた。
アスナとステラが少し離れた場所から心配そうに王女を見守っていた。
心労からか、少し窶れて見えるが、王女の立ち居振る舞いは一挙手一投足まで洗練された王族の優雅さと威厳を感じさせた。
ジェスティーナ王女は、細身ながら均整の取れたスタイルで、腰までの金色でサラサラの長い髪にエメラルドをあしらったプリンセスクラウンを載せ、顔立ちは可憐で愛らしく、ひと目見ただけで誰もが虜になるほどの超絶美少女だ。
オレがラウンジに入るとジェスティーナ王女は、オレに気付きこう言った。
「ハヤミ様、あなたがこの館の主であると、ソニアさんから聞きました。危険を顧みず、命を賭して私をお救い下さり、心から感謝致します」
王女は、立ち上がるとオレたちに頭を下げた。
「私たちは、偶然に現場に遭遇し、その時に出来ることをしたまでです。
残念ながら、力足らずで従者や兵士の方を救うことが出来ず申し訳ありません」
「いいえ、私も、この目で見ておりましたが、あの状況ではあれが精一杯だったと思います」
「図らずも、私を救おうとして命を落とした兵士や従者たちが哀れでなりません」
ジェスティーナ王女は、大粒の涙を流した。
「ハヤミ様は、捕虜となった兵士や侍女たちを救出するために、今も手を尽くしているとアスナさんから聞きました。
今の私には何の力もなく、ハヤミ様のお力にお縋りするしかありません」
「王女殿下、私の執事が国境警備隊に盗賊団の襲撃の件を伝えるべく、馬で向かっております。
恐らく、今日中には国境検問所に到着できるかと思います。
別の者には盗賊共のアジトを探らせていますので、いずれ判明することでしょう」
「迅速かつ適切な対応、感謝致します。
ハヤミ様は女神フィリア様の加護を受けた方であると、アスナさんにお聞きしました。
神域であるミラバスの森の一部を領地として与えられた領主であると…
ハヤミ様は女神フィリア様から遣わされた『神の使徒』なのですから、どうか私のことはジェスティーナと名前でお呼び下さい」
「女神フィリア様から加護は受けていますが、『神の使徒』ではありません」
彼女にそう反論したが、今の状況では恐らく理解してもらえないだろう。
ジェスティーナ王女は、まだ16歳の若さだが、さすがは王族と思わせる物言いと立ち居振る舞いで、威厳を保っていた。
話は、いつしか今日の救出劇の話になっていた。
王室の馬車が襲われている現場に、偶然通りかかり、圧倒的に不利な状況の中、オレたちが救援を躊躇している時、王女が突然馬車から飛び出して、従者の手を借りながらも、こちらに向かって走ってきたことだ。
「王女殿下は、あの時なぜ我々の方に向かって来られたのですか?」
オレは思っていた疑問を王女に質問してみた。
すると王女からの答えはこうであった。
「馬車の中で外の様子を伺っていると、どこからともなく声が聞こえたのです。
その声は『右の扉を開けて真っ直ぐに走りなさい』とそう言ったのです。
実際、あのまま馬車の中に居ても、いずれは捕縛され盗賊たちの捕虜となっていたでしょうから、今にして思えば、その声に従ったのは正しかったのだと思います。
あれは女神様の声だったのでしょうか?」
その声の主は恐らく女神フィリアであろうと思ったが、その場は何も言わなかった。
「ジェスティーナ殿下、今も従者や侍女の方々が、捕虜となって不安でしょうが、今は休まれて、救援部隊が来るのを待ちましょう」
「王女殿下、ステラでございます、お久しゅうございます。
このようなところで、お会いするとは、これも運命の巡り合わせでしょうか」
普段のステラからは想像できないまともな会話をしているのを見ると、なぜか違和感を覚えた。
「ステラ、久しぶりです、今日は見事な戦いぶりでした」
そう言って二人は親しげに話していた。
聞けば、2人は旧知の間柄で、なんとステラはリーン伯爵家の令嬢だったのだ。
あとでアスナが説明してくれたが、リーン伯爵家には跡取りの長男がおり、ステラは家督には関わりない立場であるとのことだった。
元々、騎士団に勤務していたが、数々の問題を起し、自ら辞して冒険者になったという事だ。
リアがジェスティーナ王女とアスナ、ステラの部屋の用意が出来たと伝えてきた。
「ジェスティーナ殿下、お部屋をご用意しましたので、そちらで少しお休み下さい。
食事はメイドが部屋までお運び致します」
「お気遣いありがとうございます」
そう言ってジェスティーナ王女は、リアに案内されて部屋へと向かった。
「王女殿下、こちらの部屋をお使い下さいませ」
メイドのリアが7階のスイートルームに案内した。
「まあ、なんと素晴らしい眺めですこと。
こんな非常事態でなければ、ゆっくり滞在したいところですが、今はそうも言っていられませんね」
「本日は私が王女殿下の専任メイドとしてお仕え致します。
部屋に浴室がございますので、もし宜しければお使い下さい。
着替えはこちらにご用意いたしました」
リアが王女にそう伝えた。
「ありがとう、何から何まで気遣いいただいて、ハヤミ様に礼を言って下さい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
馬で国境へ向かっていたローレンが戻ってきたのは夜11時過ぎだった。
「カイト様、只今戻りました」
「ローレン、遠いところご苦労さま、それで首尾は?」
「はい、国境守備隊の隊長にお会いして、カイト様からの伝言は漏らさずお伝え致しました」
「早急に救援部隊を編成して240名体制でこちらに向かうそうです。
全部隊の到着は明日の昼ころになるかと思います。
先行の騎馬隊は明日の朝に到着する予定です」
「国境守備隊が到着したら、こちらの状況を説明して作戦を練るとしよう。
明朝、国境守備隊の騎馬隊が到着したら、隊長と副官のみ館内に入れ、他は川向こうの森で待機するよう伝えてくれ。
それまでは、しばし休憩だ、ローレンも休んでくれ」
その日の夕食は、みんな疲れており、非常時と言うこともあり、メイドが各部屋へ運び、各自でとった。
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
執事長のローレンとメイドたちが総出で迎えた。
しかし、悠長に挨拶を受けている暇はない。
アウリープ号から気絶している王女を抱き抱え、医務室へ運んだ。
傷口にトリンが造った2級ヒールポーション(怪我治療薬)を使うと、徐々に傷口は塞がり、やがて痕形もなく塞がった。
さすがはトリンが造ったポーションだと感心する。
もしトリンが傍にいたら、凄いぞと褒めていたことだろう。
一か八かの賭けは成功し、奇跡的にもジェスティーナ王女の救出は成功裏に終わった。
しかし、帯同した従者や男性兵士は殺され、女たちは盗賊たちに捉えられ捕虜となっている筈だ。
このまま放置すれば、筆舌に尽くしがたい屈辱を受けた挙げ句、奴隷に落とされ他国へ売られるのは、火を見るよりも明らかだ。
しかし、今のところ捕虜を救出する手立てがない。
戦闘ドロイドはいるが、領内警備に特化しており、外で戦うことはできないのだ。
良い策はないかと、ひたすら考え続けていると、ある案が浮かんだ。
「ローレンはいるか、急ぎの用がある」
メイドに呼ばれてローレンが走って来ると、急用であることを察知してこう言った。
「カイトさま、何なりとお命じ下さい」
「ローレン、ご苦労だが、これからすぐに早馬でソランスター国境に行き、国境警備隊に伝えてくれ」
ローレンには下記の内容を国境警備隊の隊長に伝えるように指示した。
◎ジェスティーナ王女一行の馬車が盗賊団に襲撃されたこと
◎偶然通り掛かったオレたちが王女を救出し、今は安全な場所で保護していること
◎盗賊団の規模は250人~300人であること
◎敵は組織だって良く訓練されており、想像以上に手強いこと
◎蒼雷の剣姫ステラ・リーンが味方におり、加勢できること
◎従者と兵士が大勢殺され、一部の者は捕虜として盗賊に捉えられたこと
◎捕虜救出のため至急救援が必要なこと
「これは重大任務だ、国境警備隊に一刻を争うと伝えてくれ」
念のためジェスティーナ王女が手にしていた王家の紋章と秋桜の刺繍入りハンカチーフを持たせた。
「は、かしこまりました」
そう言うとローレンは、すぐに馬を走らせ国境へと向かった。
国境までは、約100kmの距離があり、到着には恐らく5~6時間はかかるだろう。
街道には盗賊の残党が王女を探して彷徨いている可能性もあり、頗る危険な任務なのである。
本当は、オレがアウリープ号で向かった方が早いのだが、今ここを離れられないと判断したのだ。
医務室から湖畔が見えるラウンジに移動したジェスティーナ王女を見舞った。
既に王女は目を覚ましており、リアが介抱していた。
アスナとステラが少し離れた場所から心配そうに王女を見守っていた。
心労からか、少し窶れて見えるが、王女の立ち居振る舞いは一挙手一投足まで洗練された王族の優雅さと威厳を感じさせた。
ジェスティーナ王女は、細身ながら均整の取れたスタイルで、腰までの金色でサラサラの長い髪にエメラルドをあしらったプリンセスクラウンを載せ、顔立ちは可憐で愛らしく、ひと目見ただけで誰もが虜になるほどの超絶美少女だ。
オレがラウンジに入るとジェスティーナ王女は、オレに気付きこう言った。
「ハヤミ様、あなたがこの館の主であると、ソニアさんから聞きました。危険を顧みず、命を賭して私をお救い下さり、心から感謝致します」
王女は、立ち上がるとオレたちに頭を下げた。
「私たちは、偶然に現場に遭遇し、その時に出来ることをしたまでです。
残念ながら、力足らずで従者や兵士の方を救うことが出来ず申し訳ありません」
「いいえ、私も、この目で見ておりましたが、あの状況ではあれが精一杯だったと思います」
「図らずも、私を救おうとして命を落とした兵士や従者たちが哀れでなりません」
ジェスティーナ王女は、大粒の涙を流した。
「ハヤミ様は、捕虜となった兵士や侍女たちを救出するために、今も手を尽くしているとアスナさんから聞きました。
今の私には何の力もなく、ハヤミ様のお力にお縋りするしかありません」
「王女殿下、私の執事が国境警備隊に盗賊団の襲撃の件を伝えるべく、馬で向かっております。
恐らく、今日中には国境検問所に到着できるかと思います。
別の者には盗賊共のアジトを探らせていますので、いずれ判明することでしょう」
「迅速かつ適切な対応、感謝致します。
ハヤミ様は女神フィリア様の加護を受けた方であると、アスナさんにお聞きしました。
神域であるミラバスの森の一部を領地として与えられた領主であると…
ハヤミ様は女神フィリア様から遣わされた『神の使徒』なのですから、どうか私のことはジェスティーナと名前でお呼び下さい」
「女神フィリア様から加護は受けていますが、『神の使徒』ではありません」
彼女にそう反論したが、今の状況では恐らく理解してもらえないだろう。
ジェスティーナ王女は、まだ16歳の若さだが、さすがは王族と思わせる物言いと立ち居振る舞いで、威厳を保っていた。
話は、いつしか今日の救出劇の話になっていた。
王室の馬車が襲われている現場に、偶然通りかかり、圧倒的に不利な状況の中、オレたちが救援を躊躇している時、王女が突然馬車から飛び出して、従者の手を借りながらも、こちらに向かって走ってきたことだ。
「王女殿下は、あの時なぜ我々の方に向かって来られたのですか?」
オレは思っていた疑問を王女に質問してみた。
すると王女からの答えはこうであった。
「馬車の中で外の様子を伺っていると、どこからともなく声が聞こえたのです。
その声は『右の扉を開けて真っ直ぐに走りなさい』とそう言ったのです。
実際、あのまま馬車の中に居ても、いずれは捕縛され盗賊たちの捕虜となっていたでしょうから、今にして思えば、その声に従ったのは正しかったのだと思います。
あれは女神様の声だったのでしょうか?」
その声の主は恐らく女神フィリアであろうと思ったが、その場は何も言わなかった。
「ジェスティーナ殿下、今も従者や侍女の方々が、捕虜となって不安でしょうが、今は休まれて、救援部隊が来るのを待ちましょう」
「王女殿下、ステラでございます、お久しゅうございます。
このようなところで、お会いするとは、これも運命の巡り合わせでしょうか」
普段のステラからは想像できないまともな会話をしているのを見ると、なぜか違和感を覚えた。
「ステラ、久しぶりです、今日は見事な戦いぶりでした」
そう言って二人は親しげに話していた。
聞けば、2人は旧知の間柄で、なんとステラはリーン伯爵家の令嬢だったのだ。
あとでアスナが説明してくれたが、リーン伯爵家には跡取りの長男がおり、ステラは家督には関わりない立場であるとのことだった。
元々、騎士団に勤務していたが、数々の問題を起し、自ら辞して冒険者になったという事だ。
リアがジェスティーナ王女とアスナ、ステラの部屋の用意が出来たと伝えてきた。
「ジェスティーナ殿下、お部屋をご用意しましたので、そちらで少しお休み下さい。
食事はメイドが部屋までお運び致します」
「お気遣いありがとうございます」
そう言ってジェスティーナ王女は、リアに案内されて部屋へと向かった。
「王女殿下、こちらの部屋をお使い下さいませ」
メイドのリアが7階のスイートルームに案内した。
「まあ、なんと素晴らしい眺めですこと。
こんな非常事態でなければ、ゆっくり滞在したいところですが、今はそうも言っていられませんね」
「本日は私が王女殿下の専任メイドとしてお仕え致します。
部屋に浴室がございますので、もし宜しければお使い下さい。
着替えはこちらにご用意いたしました」
リアが王女にそう伝えた。
「ありがとう、何から何まで気遣いいただいて、ハヤミ様に礼を言って下さい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
馬で国境へ向かっていたローレンが戻ってきたのは夜11時過ぎだった。
「カイト様、只今戻りました」
「ローレン、遠いところご苦労さま、それで首尾は?」
「はい、国境守備隊の隊長にお会いして、カイト様からの伝言は漏らさずお伝え致しました」
「早急に救援部隊を編成して240名体制でこちらに向かうそうです。
全部隊の到着は明日の昼ころになるかと思います。
先行の騎馬隊は明日の朝に到着する予定です」
「国境守備隊が到着したら、こちらの状況を説明して作戦を練るとしよう。
明朝、国境守備隊の騎馬隊が到着したら、隊長と副官のみ館内に入れ、他は川向こうの森で待機するよう伝えてくれ。
それまでは、しばし休憩だ、ローレンも休んでくれ」
その日の夕食は、みんな疲れており、非常時と言うこともあり、メイドが各部屋へ運び、各自でとった。
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