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第2章 王都フローリアへの旅
第29話 S級冒険者ステラ・リーン
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「最近、ソランスター王国内や国境を越えた先で、頻繁に盗賊が出没すると言う情報がありまして、実際に被害も多いのです」
「カイト様は、あの『アウリープ号』で移動するので、問題ないと仰るかも知れませんが、私の帰路のこともあるので、腕利きの護衛を雇おうと思っているのですが、如何でしょう?」
アスナは真剣な顔でオレに言った。
盗賊の話は、アスナから初めて聞いたが、オレたちも来る時に盗賊のような輩に襲われたのを思い出した。
それに国境検問所で『護衛も無しでよく無事に来れたものだ』と入国審査官から別室に呼ばれそうになり、ソニアの機転で事なきを得た経緯もあり、護衛の同行はオレも賛成だった。
「分かりました。
護衛が付いてくれれば、私も心強いです」
「それでは、冒険者ギルドのクラリスに連絡して、私の方から護衛の募集を掛けておきます」
アスナは言葉を繋げた。
「それとは別件ですが、ハヤミ様に錬金釜の発注に際して、預託金の預け入れをお願いしたいのです。
納品まで3ヶ月掛かりますので、バレンシア商会がカイト様とソラリア様の間に仲介と言う形で入って、預託金をお預かりし、契約が何事もなく履行された暁には代金の一部として充当させていただきます。
また万が一、契約通りに錬金釜が納品されない場合は返金致します」
「分かりました、預託金は幾ら預ければ宜しいのでしょう」
「代金の50%に当たるソランスター金貨50枚です」
代金の半分か、予想していたより多いが、まあ先払いと考えればいいだろう。
オレはソニアに指示し、アスナにソランスター金貨50枚を渡した。
「はい、金貨50枚、確かにお預かりしました。
こちらが預託金の預り証と錬金釜の製造契約請書になります」
アスナはそう言って預り証と契約請書をオレに渡した。
商取引に於いては、こう言う書面の交換も確かに大事だとオレは思った。
オレの領地で作成または算出する商品の『継続的取引基本契約』は次のように取り決めた。
1.ポーションは錬金釜が完成し設置された後から、月1回のペースで納品する。
2.ポーションの最低納品数は3級4種類各種100本、2級各種10本とする。
3.ホーションの代金は市場価格の65%とし、最低保証価格を設定する。
4.薬草、ハーブ、スパイスの納品数は特に定めず生産余剰分を買い取る。
5.薬草、ハーブ、スパイスは市場価格の60%で買い取る。
6.上記以外の商品は都度打ち合わせして価格を決める。
7.取引代金は商品と交換に現金で支払い、引き換えに領収証を渡す。
8.王都までの輸送費並びに諸税諸経費はバレンシア商会の負担とする。
9.バレンシア商会は毎月1~2回、自社便で集荷に来る。
買取価格が安く感じられるかも知れないが、輸送費・税その他諸々がバレンシア商会の負担なので、妥当な取引条件だと思った。
トリンの王都滞在中のフォローについても話し合い、週に1回休みの日にはバレンシア家に滞在させてもらうか、または『踊る銀ねこ亭』に宿泊してリフレッシュさせてもらう。
その際はサポート役のメイドのレイも同行することとなった。
また、バレンシア商会からソラリア師に交渉を依頼し、トリンが作成したポーションは卸価格の30%をトリンが報酬としてもらうこと。
ソラリア師の工房の滞在経費としてトリンとレア2人分で1日当たり銀貨1枚(日本円で約5000円)を支払うことが決まった。
「色々とお世話になりました。
王都に着いた頃は、一体どうなることかと不安ばかりでしたが、ご当主様とアスナさん、そしてソラリア師と良い縁が結べて、お陰様で安心してトリンを預けて帰れます、ありがとうございました」
「お互いに長い付き合いになると思いますので、今後とも宜しくお願いします」
バレンシア商会当主リカール・バレンシアが深々と頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そう言って、オレたちはバレンシア商会を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日の昼過ぎ、踊る銀ねこ亭にアスナが訪ねてきた。
募集していた護衛に応募があったので、一緒に冒険者ギルドに行って面接して欲しいと言うのだ。
オレとアスナは冒険者ギルドへ向かった。
「応募した人って、どんな人なんですか?」
冒険者ギルドへの道すがら、オレがアスナに質問した。
「S級冒険者で名前はステラ・リーンと言う女性剣士です」
「S級って、相当の実力者じゃないんですか?」
「はい、達人級の腕前です。
元々、護衛は1人にするつもりだったので、A級以上っていう条件で募集したんです。
でも、まさかS級冒険者、しかもトップクラスの彼女が応募してくるとは思いませんでした」
「なんか、スゴそうな人ですね」
「はい、S級の魔法剣士なので、それだけで剣士100人以上の戦力です。
恐らく、王都で彼女のことを知らない人はいないと思います」
「そんなに凄い人なら、即決でいいんじゃないですか?」
「実は、ちょっと癖のある人なので、一度会っていただきたくて…」
そのような話をしている内にオレたちは冒険者ギルドに着いた。
受付に行くと、バレンシア商会を紹介してくれたクラリスが暇そうにしていた。
相変わらず露出の多い制服を来て、お色気を振りまいている。
「クラリス、来たわよ」とアスナが声を掛けた。
「アスナ、早かったわね。
あら、この前のイケメンさんも一緒じゃない。
2階の応接室で、待ってもらってるから行ってみて。
イケメンさん、今度アタシとデートしましょうね~」とオレを誘惑してきた。
「あ~、分かった分かった、その内ね」
そう軽くあしらい、アスナの後について2階の応接室へ向かった。
ドアをノックして中に入ると、窓辺で外を見ていた女性が振り向いた。
そこには、白地に金色の縁取りの戦闘服に身を包み、両脇には2本の剣を携え、腰までの長い金色の美しい髪、サファイアブルーに輝く瞳を持つ美少女がいた。
オレたちを待っていたのはS級冒険者のステラ・リーンだった。
思わず見とれてしまうほど美しい顔立ちと、均整のとれた体躯からは想像もできない圧倒的な強さを持ち、颯雷の剣姫の二つ名を持つ、魔法剣士なのである。
颯雷とは風魔法と雷魔法を剣技と合わせ自在に扱うのに加え、剣士としても超一流であることから付いた二つ名だ。
因みに颯雷の剣姫の他に颯雷の剣鬼と言う二つ名も持っているとアスナから聞いた。
「ステラ・リーンさんですね?」
アスナが尋ねた。
「そうだ」
彼女は、そっけなく答えた。
「私はバレンシア商会の副当主アスナ・バレンシア、こちらはハヤミ・カイト様です」
ステラはアスナとオレを交互に見たが、オレに対しては何故か敵を見るようなキツい目つきだった。
「よろしく頼む」
ステラは無表情で言った。
「高名なS級冒険者のステラさんが、応募して下さるとは思いませんでした」
「いや、ちょうど暇だったから…」
S級冒険者が暇?
オレは、その言葉に疑問を覚えた。
「この度の護衛任務について詳細はご存知ですか?」
「概要はクラリスから聞いた…
ハヤミ殿の領地まで往復護衛すれば良いのだな」
「はい、もう2名同行者がおりますので、合計4名の護衛となります。
期間は最長で3週間、報酬はスター金貨10枚です」
因みにスター金貨10枚は、日本円で100万円に相当する。
護衛任務としては、破格の報酬だとアスナが言っていた。
「私に依存はない」
「分かりました、それでは別室で採用の可否を打ち合わせしますので、少々お待ちいただけますか?」
「分かった」
オレとアスナは別室へ移動した。
「カイト様は、あの『アウリープ号』で移動するので、問題ないと仰るかも知れませんが、私の帰路のこともあるので、腕利きの護衛を雇おうと思っているのですが、如何でしょう?」
アスナは真剣な顔でオレに言った。
盗賊の話は、アスナから初めて聞いたが、オレたちも来る時に盗賊のような輩に襲われたのを思い出した。
それに国境検問所で『護衛も無しでよく無事に来れたものだ』と入国審査官から別室に呼ばれそうになり、ソニアの機転で事なきを得た経緯もあり、護衛の同行はオレも賛成だった。
「分かりました。
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アスナは言葉を繋げた。
「それとは別件ですが、ハヤミ様に錬金釜の発注に際して、預託金の預け入れをお願いしたいのです。
納品まで3ヶ月掛かりますので、バレンシア商会がカイト様とソラリア様の間に仲介と言う形で入って、預託金をお預かりし、契約が何事もなく履行された暁には代金の一部として充当させていただきます。
また万が一、契約通りに錬金釜が納品されない場合は返金致します」
「分かりました、預託金は幾ら預ければ宜しいのでしょう」
「代金の50%に当たるソランスター金貨50枚です」
代金の半分か、予想していたより多いが、まあ先払いと考えればいいだろう。
オレはソニアに指示し、アスナにソランスター金貨50枚を渡した。
「はい、金貨50枚、確かにお預かりしました。
こちらが預託金の預り証と錬金釜の製造契約請書になります」
アスナはそう言って預り証と契約請書をオレに渡した。
商取引に於いては、こう言う書面の交換も確かに大事だとオレは思った。
オレの領地で作成または算出する商品の『継続的取引基本契約』は次のように取り決めた。
1.ポーションは錬金釜が完成し設置された後から、月1回のペースで納品する。
2.ポーションの最低納品数は3級4種類各種100本、2級各種10本とする。
3.ホーションの代金は市場価格の65%とし、最低保証価格を設定する。
4.薬草、ハーブ、スパイスの納品数は特に定めず生産余剰分を買い取る。
5.薬草、ハーブ、スパイスは市場価格の60%で買い取る。
6.上記以外の商品は都度打ち合わせして価格を決める。
7.取引代金は商品と交換に現金で支払い、引き換えに領収証を渡す。
8.王都までの輸送費並びに諸税諸経費はバレンシア商会の負担とする。
9.バレンシア商会は毎月1~2回、自社便で集荷に来る。
買取価格が安く感じられるかも知れないが、輸送費・税その他諸々がバレンシア商会の負担なので、妥当な取引条件だと思った。
トリンの王都滞在中のフォローについても話し合い、週に1回休みの日にはバレンシア家に滞在させてもらうか、または『踊る銀ねこ亭』に宿泊してリフレッシュさせてもらう。
その際はサポート役のメイドのレイも同行することとなった。
また、バレンシア商会からソラリア師に交渉を依頼し、トリンが作成したポーションは卸価格の30%をトリンが報酬としてもらうこと。
ソラリア師の工房の滞在経費としてトリンとレア2人分で1日当たり銀貨1枚(日本円で約5000円)を支払うことが決まった。
「色々とお世話になりました。
王都に着いた頃は、一体どうなることかと不安ばかりでしたが、ご当主様とアスナさん、そしてソラリア師と良い縁が結べて、お陰様で安心してトリンを預けて帰れます、ありがとうございました」
「お互いに長い付き合いになると思いますので、今後とも宜しくお願いします」
バレンシア商会当主リカール・バレンシアが深々と頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
そう言って、オレたちはバレンシア商会を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日の昼過ぎ、踊る銀ねこ亭にアスナが訪ねてきた。
募集していた護衛に応募があったので、一緒に冒険者ギルドに行って面接して欲しいと言うのだ。
オレとアスナは冒険者ギルドへ向かった。
「応募した人って、どんな人なんですか?」
冒険者ギルドへの道すがら、オレがアスナに質問した。
「S級冒険者で名前はステラ・リーンと言う女性剣士です」
「S級って、相当の実力者じゃないんですか?」
「はい、達人級の腕前です。
元々、護衛は1人にするつもりだったので、A級以上っていう条件で募集したんです。
でも、まさかS級冒険者、しかもトップクラスの彼女が応募してくるとは思いませんでした」
「なんか、スゴそうな人ですね」
「はい、S級の魔法剣士なので、それだけで剣士100人以上の戦力です。
恐らく、王都で彼女のことを知らない人はいないと思います」
「そんなに凄い人なら、即決でいいんじゃないですか?」
「実は、ちょっと癖のある人なので、一度会っていただきたくて…」
そのような話をしている内にオレたちは冒険者ギルドに着いた。
受付に行くと、バレンシア商会を紹介してくれたクラリスが暇そうにしていた。
相変わらず露出の多い制服を来て、お色気を振りまいている。
「クラリス、来たわよ」とアスナが声を掛けた。
「アスナ、早かったわね。
あら、この前のイケメンさんも一緒じゃない。
2階の応接室で、待ってもらってるから行ってみて。
イケメンさん、今度アタシとデートしましょうね~」とオレを誘惑してきた。
「あ~、分かった分かった、その内ね」
そう軽くあしらい、アスナの後について2階の応接室へ向かった。
ドアをノックして中に入ると、窓辺で外を見ていた女性が振り向いた。
そこには、白地に金色の縁取りの戦闘服に身を包み、両脇には2本の剣を携え、腰までの長い金色の美しい髪、サファイアブルーに輝く瞳を持つ美少女がいた。
オレたちを待っていたのはS級冒険者のステラ・リーンだった。
思わず見とれてしまうほど美しい顔立ちと、均整のとれた体躯からは想像もできない圧倒的な強さを持ち、颯雷の剣姫の二つ名を持つ、魔法剣士なのである。
颯雷とは風魔法と雷魔法を剣技と合わせ自在に扱うのに加え、剣士としても超一流であることから付いた二つ名だ。
因みに颯雷の剣姫の他に颯雷の剣鬼と言う二つ名も持っているとアスナから聞いた。
「ステラ・リーンさんですね?」
アスナが尋ねた。
「そうだ」
彼女は、そっけなく答えた。
「私はバレンシア商会の副当主アスナ・バレンシア、こちらはハヤミ・カイト様です」
ステラはアスナとオレを交互に見たが、オレに対しては何故か敵を見るようなキツい目つきだった。
「よろしく頼む」
ステラは無表情で言った。
「高名なS級冒険者のステラさんが、応募して下さるとは思いませんでした」
「いや、ちょうど暇だったから…」
S級冒険者が暇?
オレは、その言葉に疑問を覚えた。
「この度の護衛任務について詳細はご存知ですか?」
「概要はクラリスから聞いた…
ハヤミ殿の領地まで往復護衛すれば良いのだな」
「はい、もう2名同行者がおりますので、合計4名の護衛となります。
期間は最長で3週間、報酬はスター金貨10枚です」
因みにスター金貨10枚は、日本円で100万円に相当する。
護衛任務としては、破格の報酬だとアスナが言っていた。
「私に依存はない」
「分かりました、それでは別室で採用の可否を打ち合わせしますので、少々お待ちいただけますか?」
「分かった」
オレとアスナは別室へ移動した。
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