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ライオネルさんが一人で運転してくれるのかと思ったのですが、もう一人いらっしゃいました。長距離をお一人で運転してもらうのは気が引けたので良かったです。大変でしょうからね。何分、七歳なので代われそうにないですし。車の横に直立で待っていて下さっています。お互いにご挨拶をして乗り込みます。
「秘書兼、何でも屋のトマスラルと申します。これから、よろしくお願いいたします」
「スウと言います。よろしくお願いいたします」
「ご不明な点がありましたら、何でも聞いて下さい」
「トラ出せ」
「ライ様はスウ様の可愛さに照れておりまして、主人に代わりお詫び申し上げます」
「トラ」
「はい。では、出発いたします」
「忘れ物はないよね?」
「大丈夫でございます」
「スウ様。こちらのお二人なら、走ればすぐですからお気になさらずに」
「え?」
「おや。ご存じなかったですか?」
「ケリーはもしかして、最初は走って来たの?」
「はい」
「す、凄いね」
ケリーの答えは簡潔だけど、トマスラルさんへ視線が突き刺さっている。無言の抗議だね。知られたくなかったのかな。気にすることはないのに。
でも、走っては、凄い。これ以外、言えることはないよね。知識では知っていたことだけれど、本当にできる人がいる。勿論、できない人もいる。そのために魔道具の車があるのだし。二人が北から走って往復できる魔法がどういうものかは分からないけれども、私と一緒にいると無理だということは理解している。残念だなー。
「色々な所に気軽に旅行へ行けちゃうね」
ケリーの視線を逸らさなきゃ、トマスラルさんがまずいよね。ライオネルさんからも多分何かされているような気がする。魔法とは違って、特異体質的な人もいるらしいので、私もその一人かもしれないのだけれど。まだ、全容が解明されていないのだ。自分では自分を客観的に見ることは難しいからね。それに、私が見ることができていないものも沢山あるのだろうし。色々、経験していきましょう。
「スウ様は何処か行ってみたい所が?」
トマスラルさんは運転しつつ、視線が二つ刺さりつつ、話題を広げていきますよ。何だか、慣れた感じです。ということは、もしかして。
「何処かという訳では無いのですが、様々なものを見たいとは思っています。もしかして、ケリーは以前ライオネル様の家で働いていたの?」
「はい。そうです」
ケリー以外の二人は無言です。おや?力関係が分かってきたような。
「ケリーは二人のお姉ちゃんなの?」
「いえ」
「違うぞ」
「素敵な先輩でしたよ」
皆、即答過ぎますよ。
「でした?」
ケリーの確認が入りました。
「また、新たに入られるので過去形にしたんですよ」
はははと白々しい笑いをトマスラルさんが口に出しながら、弁解します。これは、悪手です。ライオネルさんは賢明にも一言告げた後は沈黙を保っています。
「そうでしたか、よろしくお願いいたしますね。トマスラル先輩」
「秘書兼、何でも屋のトマスラルと申します。これから、よろしくお願いいたします」
「スウと言います。よろしくお願いいたします」
「ご不明な点がありましたら、何でも聞いて下さい」
「トラ出せ」
「ライ様はスウ様の可愛さに照れておりまして、主人に代わりお詫び申し上げます」
「トラ」
「はい。では、出発いたします」
「忘れ物はないよね?」
「大丈夫でございます」
「スウ様。こちらのお二人なら、走ればすぐですからお気になさらずに」
「え?」
「おや。ご存じなかったですか?」
「ケリーはもしかして、最初は走って来たの?」
「はい」
「す、凄いね」
ケリーの答えは簡潔だけど、トマスラルさんへ視線が突き刺さっている。無言の抗議だね。知られたくなかったのかな。気にすることはないのに。
でも、走っては、凄い。これ以外、言えることはないよね。知識では知っていたことだけれど、本当にできる人がいる。勿論、できない人もいる。そのために魔道具の車があるのだし。二人が北から走って往復できる魔法がどういうものかは分からないけれども、私と一緒にいると無理だということは理解している。残念だなー。
「色々な所に気軽に旅行へ行けちゃうね」
ケリーの視線を逸らさなきゃ、トマスラルさんがまずいよね。ライオネルさんからも多分何かされているような気がする。魔法とは違って、特異体質的な人もいるらしいので、私もその一人かもしれないのだけれど。まだ、全容が解明されていないのだ。自分では自分を客観的に見ることは難しいからね。それに、私が見ることができていないものも沢山あるのだろうし。色々、経験していきましょう。
「スウ様は何処か行ってみたい所が?」
トマスラルさんは運転しつつ、視線が二つ刺さりつつ、話題を広げていきますよ。何だか、慣れた感じです。ということは、もしかして。
「何処かという訳では無いのですが、様々なものを見たいとは思っています。もしかして、ケリーは以前ライオネル様の家で働いていたの?」
「はい。そうです」
ケリー以外の二人は無言です。おや?力関係が分かってきたような。
「ケリーは二人のお姉ちゃんなの?」
「いえ」
「違うぞ」
「素敵な先輩でしたよ」
皆、即答過ぎますよ。
「でした?」
ケリーの確認が入りました。
「また、新たに入られるので過去形にしたんですよ」
はははと白々しい笑いをトマスラルさんが口に出しながら、弁解します。これは、悪手です。ライオネルさんは賢明にも一言告げた後は沈黙を保っています。
「そうでしたか、よろしくお願いいたしますね。トマスラル先輩」
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