夢では夢と気づかないんだよね

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16状況説明

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 いやあ。大変でした。ご本人が知らないうちに進んでしまったせいでしょうか、後から説明されても納得しかねるのという思いと、気持ちの切り替えができなかったのでしょう。ぎりぎり特性の範囲内でお互いというか、こちらはひっそりと隠れるように生活しています。
 引っ込みがつかないですよね。いきなりの種明かしと、勝手にお世話になり続けているというのは、どういう態度をとっていいのかしかも、前段階の態度も良くなかったしと、こちらで勝手に思っています。
 でも、無事男の子が産まれまして、お役御免です。

「大変お世話になりました」

 シュタさんがお詫びも兼ねてでしょう。農作物や酪農物を沢山頂きました。やったね。今度こそ、出発です。
 父の車で移動ですが、また一日で、北へ行きますよ。北はどんな所でしょう。穏やかな人生を送るためには、人間関係は無理しない。駄目そうな時は近づかない。これに限ります。

「ケリーは実家に帰ってしまうの?」
「いえ。これまで通りでございます」
「良かったー。もしかして、ケリーは私の結婚にも付いて来てくれるの?」
「はい。勿論です」
「もしかして、今回がそう?」
「お気付きでしたか・・・」

 珍しくケリーが言い淀みます。口止めもされていたのでしょうか。けれど、東でのことを考えれば、伝えておいた方がいいとの判断だと思います。私もそう思います。
 なんとなく、一日滞在するだけの場所にはもう戻らないだろうという説明があったのです。かなり濁していましたが、北での滞在期間が告げられなかったのと、今回お邪魔する先がご夫婦の所ではなかった所が、ああそうなのかなと。
 でも、一番の懸念事項のケリーがこれからも側にいてくれるかは解決したので、北へ行ってみて考えましょう。
 かなり遠いことと、片道なので、これからお世話になる北の方が迎えに来てくれました。

「婚約者となったライオネルだ。これから、よろしく頼む」

 わ。獅子だ。紋章なのでしょうか、名前と相まって凄く似合う立派な獅子の縫い取りがしてある服を着ています。正装でしょうか。濃い金色の髪も綺麗に撫でつけてあります。
 あ、ご本人は早速、率直に告げてくれました。父の顔色は真っ白です。隠しても仕方がないのに。ケリーが教えてくれて良かったです。こんなにしっかりと礼を尽くしてご挨拶して下さったのに、失礼な態度はとれません。

「スウと申します。こちらこそよろしくお願いいたします。ケリーも一緒にお世話になります」
「ああ。早速だが、出発しよう。暗くなる前に着きたいと思っている」
「はい」

 ケリーのことは知っているとは思いますが、念押しです。大丈夫なようで、時間がかかるため急いで出発です。父は置物です。ライオネルさんも何か思う所があったのでしょうか。それとも、父と言葉を交わし終わっているからでしょうか。父の前を軽く目礼して通り過ぎました。

「お世話になりました」

 区切りとして、言葉にしました。では、行きますか。
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