夢では夢と気づかないんだよね

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 父はもう、後ろ髪というか、全髪引かれるような思いで帰っていきました。ちなみに父はふさふさです。私はお仕事、いってらっしゃいという感じで見送りました。もともと、父とは長時間一緒にいることはなかったですからね。母もそう。母以外に私のお世話をしてくれる人が、何人かいたんです。そのせいか親とべったりしていなくても大丈夫。だれか、構ってくれる人がいるなら大丈夫という心持です。

「スウは特に困ったことはないかい?」
「勿論、欲しいものや、したいことでも、何でもいいよ。言ってごらん」
「・・・お庭みたい、です」

 魔法が使えないと教えて下さったこと以外は、怒涛のように甘やかされ、先回りして色々してもらったので、特に希望や要望はなかったのですが、期待に満ちた二対の瞳に見つめられると何か捻り出さないとという気持ちになって、漸く出てきたのが先のものでした。

「なんて、可愛いお願いなのだ!!」
「そうだね。どうだろう、ここをスウ好みの庭として設計しなおしては」
「いえ。それはお二人のお子さんのためにとっておいて下さい」
「!!」
「!!」

 お二人は今まで小さな子供と接したことがなかったようで、全部が全部この調子です。うーん。ただ居候させてもらうだけっていうのもなんですし、ここは将来の親教育ということで、一緒に学んでいきましょうか。お二人とも頭脳派で、知能派ということなので。・・・片鱗を少しだけ見たような気がするだけですが、大丈夫ですよね。早速、行きますよ。あ、お庭にはまだ行っていませんが。

「ソタンさん、キイトさん」
「はっ。なんだろうかスウ。本当に君の可愛さは留まるところを知らないね」
「何だい。何かお願いごとだろうか」
「はい。あの、ただここに居させてもらうのも、お二人の大事な時間を無為に過ごさせてしまって申し訳ないので、親について学びたいんです」
「おや?」
「おやについて?」
「はい。どうして子供に恵まれたことが奇跡なのか、私の特性との関係性を知りたいです」

 まずは、始まりから。私の力?特性がどうして子供を授かることに繋がるのかが未だ理解していないんです。

「ふむ。スウは魔法を使うにあたって二種類の型があることを知っているかい?」
「いいえ。知りません」
「では、そこから説明しよう」
「まず、私のように・・・」

と言ってソタンさんが、手のひらを上に向け、何か行動を起こそうとしたが、何も起こらなかった。

「・・・そうだった。スウには見せられないのか。残念だが、仕方がないね。私は魔力を外に出せる放出型だよ。逆に外に出せない型が内包型」
「私のように見た目には変化がないことが多く、凄く力持ちになれたり、早く動けたりできるね」
「へー」

 実感が全然無いので、返事が適当になっていてすみません。でも、そういうことか。私がいると魔法が使えないのね。

「それで、この二つの型が違う者が夫婦になると、子供がどちらの型を選べばいいのか分からなくなってしまうため、子供ができることが奇跡と言われているね」
「そうなんですか。それで、話はずれちゃいますが、どうして私は魔法が使えないんでしょう。滅多に使えない人はいないんですよね?」
「ああ。そうだね。魔法が使えないと言っても魔道具は使えるからね。特に支障はないのだが、今は使えないと登録している者はどのくらいいたかな?キイト」
「ふむ。確か十人に満たなかったはずだ。これは補助金を申請している者だけの人数だ」
「補助金?」
「ああ。魔法が使えないことによって生活に支障がある者は申請できる制度だよ。スウは申請することは無いと思うがね。興味があれば説明するが」
「いえ。大丈夫です。でも、キイトさんは制度とかに詳しいんですね」
「キイトは大臣だからね」
「大臣!!」
「そんなに驚いてもらえるなんて、光栄だね。ちなみに、ソタンは魔法武官さ」

 騎士っぽいけど、文官で、書類仕事をしていそうで、肉体労働なのか。はー。こちらのご夫婦はわざと見た目を逆になるように印象づけているのかな。

「スウの前では無力だけどね。だが最初はスウの近くで魔法が使えないので、スウも魔法が使えないのではと考えられたようだよ。でも、魔道具は使える。そうすると魔力を判定する魔道具が使える」
「その魔道具が反応しなかったので、残念ながら魔法が使えないとなった訳だよ」

 はー。そうなのか。魔法を使う魔力がないから、魔法が使えないのか。そうすると、私の特性はどうやって発生しているのだろうか。その疑問は通じたらしい。

「そうなると、スウの特性は魔法ではないのかという疑問が残る」
「魔力以外でこうしたことができる体質というのもあるのかもしれないが、自分の魔力以外の魔力か魔力なしで、何らかの魔法を使っていると考えた方が他のことに応用できるから有り難いね」
「他のことですか?」
「子宝成就のお守りさ」
「なるほど」
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