夢の中で目覚めましたが、これは夢?

文字の大きさ
上 下
18 / 35

18特性

しおりを挟む
 何とか私を抱っこできるようになったトマスラルさんに対して、ケリーは容赦ない特訓の開始を告げました。

「先輩。今日のこれから半日、どうしてもスウ様の元を離れなければいけない後輩のために、協力して頂けますよね?」

 協力の要請は強要とも取れますが、気のせいです。

「は、はい」

 ケリーの視線が更なる高みを要求します。

「是非、喜んでー」

 トマスラルさん。やけくそですよ。
 二人で黄昏ています。まだ、昼前ですけど。

「にゃんで?」
「え? スウ様、ケリーがいないのに攻めますね」
「にゃんで? ちぇっこんちたにょ?」
「え? ええ?」
「わきゃってるでしょ? にゃんで?」

 さあ、時間は有限です。きりきり行きますよ。

「・・・」
「にゃんで? ケリーにききゅ?」
「あ、それは勘弁して下さい」
「ん」

 私は鷹揚に話の続きを促します。

「あー。俺、スウ様が戻ってこなかったら言うつもりなかったんですよ」
「うみゅ」
「・・・なんだか力が抜けるなー。いやほんと、恥ずかしいんですよ」
「う」
「嫉妬ですよ。悔しくって」
「にゃんで?」
「スウ様がいなくなって、皆、抜け殻のようになっちまって。仕事が溜まっているのはその皺寄せですよ。それは、いいとして・・・。影響大きすぎて、悔しくなってで、つい」
「ちゅい?」
「結婚申し込んでましたー!!」
「にゅ?」

 その結末は何故に?

「スウ様みたいな方の記録は、何人か残っているんですよ。大抵、魔力が無いとか使えない所から分かるらしいんですが・・・。普通は成人まで生きないんですよ」
「にゃんで?」
「現実で目覚めるからですよ。目覚めないでこちらで老衰なんて迎えたら、あちらでもお陀仏です」
「ひょー」

 そんなことになるんですか。へー。

「そこまで覚めないと、また近くで産まれるそうなんです。理由は色々あるらしいんですが、滅茶苦茶調べたらそんな記録があって、それに掛けました」
「ちょう。ちっとは?」
「それ、聞いちゃいますか」
「う」
「俺、魔力強いはずなのに表に何も出なかったんですよ。ケリーとは正反対で」
「みゅ?」
「だから、苦手だったんです。魔力が強くて表に沢山出ている人達が、ライ様は別格で逆に尊敬しかなかったんですけど・・・。ケリーも魔力は強いけど、兎だから色々言われてて。一方で、俺はどうなんだろうって。俺が魔力を上手く収めているとは思えなくて、俺の魔力が弱いだけじゃないかとか。力はそれなりにあるけど、そこまで使うこともないし。魔力の強弱を表に出ている割合で測る奴らもいて、ケリーの近くにいたら比べられると思って何にもできなくて。それなのに」
「にょに?」
「スウ様が来て、一気に問題解決になっちゃって。俺、どうしていいのか。魔力を収めているかどうかも未だに分かんねえし・・・」
「ちょくちぇい?」
「え? 特性って言いました?」
「う」
「そんなに簡単に解決させちゃいます?」
「びゃんのう」
「いや、スウ様の力を表現するのにその一言で片付けちゃってますけど・・・。そっか。それで、いいのか」
「うーみゅ」

 いいよ。気にしなさんな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...