神様に加護2人分貰いました

琳太

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Web連載

257話 これからの

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 俺たちは予定より二日ほど遅れてオルニス森林を抜けることとなった。

 遅れた理由は俺の進化のゴタゴタが二割、残りは街道周辺にモンスターが居なかったせい。

 ただ街道を漫然と進むのではなく、モンスターを探して街道から離れることが多かったからだ。
 そもそもオルニス森林街道を進む理由が雪音と牧野のレベルアップのためだから。
  予定通りと言えば予定通りなんだろう。
 おかけで二人……だけじゃなくウチの戦闘狂な面々もレベルアップしたけど。

 俺? 俺はもうレベルアップとか関係ないから。雪音と牧野にはその辺りは打ち明けてないからレベルアップしたってことにしてるけどな。

「新調した装備も問題ないみたいだし、メンバーシャッフルした共闘も問題ないわね」

 牧野がバイホーンライノの血抜きをしつつツーハンドソードを背中に引っ掛ける。
 鞘はない。ツーハンドソードとシールドタートルの盾は背中に背負うというか引っ掛けられるように、ハーネスを細工してある。

 バイホーンライノはサイみたいな見た目のモンスターで、通常街道のあたりには現れない。オルニス森林から続く湿地帯に生息している。
 モンスターを探しているうちにオルニス森林を抜けてしまったというのが本当のところ。

 戦闘メンバーは雪音と牧野は固定、ウチのメンバーはルーナとジライヤが、ツナデとオロチマルがペアで交代で雪音たちに同行している。

「ここから西の方向にエアニア辺境都市がありますが、そちらに向かいますか?」

 ナビ輝姿で箱車の御者台に座るナビゲーター。
 箱車を収納してもよかったが、街道はそこそこ人が行き交うため、目があるのでレベリング中はナビゲーターと居残りメンバーで街道を進んでいた。

 俺の位置を把握できるナビゲーターは車をひくジライヤに指示して合流を果たしたところ。
 街道を出てまっすぐ北に進めばそっちに大きめの街があったんだが、箱車はそちらには行かずオルニス森林の外周に沿って西に進む道を行った。

 街道をそれ西方向に進んだ戦闘チームを追いかけたからな。

「戻るより西に進んだ方がいいんじゃない」

 牧野の言葉に雪音も同意する。

「そうだね。元々西に向かう予定だし」

 そういうことでしばらく西に向かって、エアニアに入る前に一泊することにした。
 箱車をキッチンカーに変え、野営の準備にに入る。もう慣れたもので何も言わずともそれぞれ作業に入る。
 とはいえ今日は野営地ではないので他の商隊がいないから、隣に寝台車も出して2台設置だ。

 食事ができるまで女子は入浴を済ませた。

「は~。これが野宿って言うんだからねえ」
「うん、一度知ってしまった快適さはもう手放せないよ」

 風呂上がりのさっぱりした二人と、ちょっと渋い顔のルーナがチャチャから風呂上がりに冷えたお茶をもらってぐびっと煽る。

 いや片手を腰に当てて煽っているのは牧野だけだ。どこか仕草にオヤジ臭がある牧野だが、もう慣れた。うん。




 食後に今後の方針について話し合った。

「オーランに入ったけど、このまま西のカヴァネス方向に向かうかなんかしてセバーニャに向かうかってこと?」

 雪音が手書きの地図を見ながら尋ねる。

「私たちはセバーニャを通ってきたけどその道を引き返すのかしら?」

 俺は牧野の言葉に首を振る。

「いやさ、俺のアビ……スキルが進化したから、地道に行かなくても一気に目的地まで行けるんだよね」

 そう。〈空間記憶〉を使ったゲートでもマップ越しのやり方で移動することはできた。ただ行ったことのない、未サーチ区域は〈マップ〉に表示されなかったが、アビリティーの《ワールドマップ》は言わばG××gleマップのように俯瞰した地図上の点を目指して飛べるのだ。

「とは言え国境を越えずに移動すると怪しまれる。いっそスーレリアの王城に突っ込むと言う手もあるけど」
「いやいきなりそこまでは考えてないぞ」

 牧野の言葉に手を振る俺。

「そうだね。勇真が王城にいるかどうかわからないし」

 できればスーレリア側とは極力接触をせず、勇真だけをピックアップして即撤退したいところだ。

「ある程度距離が近づけばサーチできるのですが」
「そうなんだ」

 ナビゲーターの言葉に疑芋ない雪音に、何か言いたそうな牧野が、こっちを向く。

「今更かしら。もう突っ込むだけ無駄な気がするわ」

 まあ俺も自分の能力把握し切れてないけど、チートだと思うよ。

「セバーニャでも冒険者登録したって言ってたよな」
「うん。グーラって領都だったから、かなり大きめの街だったよ」
「俺たちもそこで冒険者登録をし直して、そこでパーティーを組むようにしないか」

 グーラはスーレリアからは距離があるが、セバーニャの冒険者なら隣国のスーレリアに入りやすいと思う。
 
「鎖国はしているけど、冒険者の入国は割と緩めだって教えてもらったんだ。雪音たちもニーチェスで作ったギルドカードじゃなくってセバーニャで作ったギルドカードを使って────
「やだ!」

 俺が最後まで説明する前に雪音が拒絶した。珍しく強めの拒絶だった。

「えっと、セバーニャではあんまり依頼受けてないんだよな。級が高くないなら登録したばかりの俺とパーティー組むのにいいんじゃ────
「絶対イヤ!!」

 またも拒まれた。

「あー、風舞輝。あのギルドカードは使えないと思うわ」

 牧野が笑いを堪えるようにしながらそう言う。

「なんで────
「なんでもイヤ!」
「ブフッ」
「カナちゃんが悪いんだからね。絶対イヤだから」

 そう言って雪音は立ち上がり、寝台車の方にぷりぷりと肩を怒らせながら」歩いていった。
 それを見送る俺たち。

「ごめん。多分説得は無理だと思うわ」

 牧野が《アイテムボックス》から何かを取り出す。
 布に包まれたそれを開くと、ギルドカードが3枚出てきた。そのうちの一枚をヲレの方に見せる。

「……ナーエカナツグ?」
「カルニャッカで登録するとき、〝ユッキー〟と〝カナちゃん〟って呼び合ってたから、それに近い名前をつけたんだけど」
「どこの戦国武将……」
「私の方はね。雪音には〝アレユッキールー〟って付けたの。雪音はその名前を嫌がって────
「カナちゃん!!」

 雪音が寝台車の扉から顔だけ出して、牧野を睨む。

「あー、かなりイヤそうだな。じゃあその前ってスーレリア国内だったけ?」
「ええ、クエンタっていう国境に近い町だったわ」
「うーん。じゃあそこでもいいか」

 牧野がもう一枚のギルドカードを取り出す。そこには〝スペーラ〟と書かれていた。

「九級って、ほとんど依頼受けてないのか」
「九級に上がってすぐ街を出たから。ニーチェスには試験を受ければ8、9級スタートがあったけど多分スーレリアにはなかったと思う。そんな説明はなかったし」

 うーん。でも女の子二人だと冒険者でやっていくのは大変だったので、幼馴染の俺を誘ったという言い訳が成り立ちそうだな。

「でもルーナちゃんはどうするの。スーレリアには獣族は見かけなかった。多分いないと思う。あそこ人族至上主義だし」
「それはちょっと考えてる手がある」

 俺の考えを牧野に伝え、牧野もそれにほぼ賛成した。
 雪音には明日伝えることにして、俺たちは……というか俺は明日の準備をしてから休むことにした。

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