2018年は鏡餅星人襲来

マイきぃ

文字の大きさ
上 下
3 / 3

第三話

しおりを挟む
 餅人間たちがうごめく街を走り抜ける。餅人間はまるでゾンビのように動いているので、近づかなければそれほど脅威ではなかった。
 走り疲れた俺は、ゆっくりと歩き始める。気が付くと、そこは商店街だった。商店街の全ての店のシャッターは閉まっていた。そして、ものすごく静かだった。

 ここの人間は、全員餅人間にされてしまったのだろうか。いいや、考えすぎだ。まだ、寝ているのかもしれない。きっと俺の考えすぎだ。ここの町の人たちは大丈夫……。

 ──その時だった。

 突然、商店街の店のシャッターが開いた。開店の時間なのだろうか、次々とシャッターが開く。
 ここは大丈夫そうだ。まだ、餅人間に侵食されてはいなようだ。早く、餅人間のことを知らせなくては。
 そう考えた俺は、シャッターの開いた肉屋の店に飛び込んだ。だが……そこに肉屋の店員はいなかった。

 目の前に現れたのは────餅人間だった。

「うわああああああああああああ!」

 駄目だ! ここも侵食されている!
 すぐに俺は店を出た。だが、他の店から続々と餅人間が蟻のように出てくる。そして、俺の周囲を埋め尽くしていく。逃げ場はない。

「俺も、餅になればいいのか……」

 俺は両膝を突き、抵抗するのをやめた。

「これが、宇宙人の仕業なら、何のために餅にするんだ。まさか、食うのか? 焼いて食うのか?」

 ふと、視界にミカンが転がっているのが見えた。

「正月飾りだ。ミカンを乗せてやるよ!」

 それは最後の抵抗だった。俺はミカンを拾い、思い切り餅人間に投げつけた。投げつけたミカンは餅に取り込まれ、吸収されていく。

 だが、次の瞬間、ミカンを吸収した餅人間の体は粉状になり吹っ飛んだ。そして……人間の姿に戻ったのだ!

「こ……これは……」戻った人間は、魚屋の店主だった。

「ああ、なんだったんだいったい……ああ、こんなにいやがるのか! 餅のお化け共!」

「まさか、餅人間はミカンで撃退できるのか……!?」

 まだ、わからない。偶然かもしれない。だが、この状況をどうにかするためには、もうそれにかけるしかない。
 俺はとっさに今の状況を魚屋の店主に伝えた。

「ミカンです! 餅に、ミカンをぶつけてください!」
「何? ミカン? そういえば、正月用のミカンがまだ残っていたな」
「は、早く!」

 魚屋の店主は、段ボールごとミカンを持ってきた。
 俺は魚屋の持ってきたミカンを握り、餅人間めがけて投げつけた。すると、先ほどと同じように、ミカンをぶつけられた商店街の餅人間は、人間の姿を取り戻していく。

「これではっきりした。餅人間の弱点は、ミカンだ!」

 商店街の人たちは救われた。
 俺は、八百屋でミカンを一袋もらい、妹や家族を解放する。妹は、SNSに餅人間の弱点を書き込んだ。そのおかげが、徐々に町は餅人間から解放されていったのだった。
 そして、餅の宇宙人の弱点がミカンだということを知った政府は、戦闘機を飛ばし、未確認飛行物体の巨大鏡餅に対してミカン爆撃を行った。もちろん、鏡餅は粉々に吹っ飛んだ。

 こうして人類は、餅の脅威から解放されたのだった。
 ミカンよ、ありがとう。そして、あけましておめでとう!
 今年も良い年になりますように!
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

津嶋朋靖(つしまともやす)
ネタバレ含む
2018.01.18 マイきぃ

感想ありがとうございます!
餅に侵略されずに済んで良かったのです!

解除
siroqma
2018.01.09 siroqma
ネタバレ含む
2018.01.09 マイきぃ

感想ありがとうございます!
SFホラーコメディーみたいな感じで読んでもらえるとうれしいです!

解除
中七七三
2018.01.09 中七七三
ネタバレ含む
2018.01.09 マイきぃ

感想ありがとうございます!
餅ネタで書いてみました!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。