異世界に召喚されたけど勇者じゃないので追放された ~なので好き勝手するよ~

マイきぃ

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第一章 気がついたら異世界にいるんだけど……

第二話 加護がメールで来るなんて聞いてなかったんだけど

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 例えるなら、アマゾンの奥地。どうやら見知らぬ地へ放り出されたらしい。タカシは深呼吸をし、落ち着きを取り戻すと、軽く思考を巡らせた。

「(考えよう、今俺の置かれている状況を……)ステータスオープン!」

 タカシは、ステータスボードを見ながら今回の召喚パターンを考察する。
 今回のケースは勇者を召喚したと思ったら、勇者じゃなかったケースだ。この場合、チート能力で結構いい暮らしができるのが定説だ。けれども、これといったチート能力の片鱗はない。

 何かないかと、ステータスボードの確認を始めるタカシ。まず、ストレージを確認する。すると、【冒険者セット】という圧縮フォルダがあった。
 展開すると、ペットボトル2リットル入り5本。レーションが15個。サバイバルナイフ。皮の服。皮の靴。冒険の手引書。と、ストレージ内にアイテムが広がった。

「(食料は5日分……ないよりマシか……冒険の手引書は……一応読んでみるか)」

 ストレージから手引書を取り出す操作をすると、異空間が出現し、そこから本が出てきた。手引書には、簡単な事柄だけが書かれていた。書かれていたもので最も重要だったのは──生活魔法がスキル無しで使える。スキルを買うことができる。条件を満たすと勝手に覚えるスキルがある。持っているスキルの種類や行動によって職業が勝手に決まる。と、いうことだった。

 結局ストレージ内には、チートらしきものはなかった。
 しょうがないので視界のインターフェイスをくまなく調べる。すると、メールのアイコンに通知の印があるのを発見した。
 タカシは、そのメールを開く。あまりの長さに「長っ……3行でまとめろよ……」と、愚痴るが、一応目を通す。

『こんちには。いかがお過ごしでしょうか。私は女神、アクエリアと申します。今回メールを差し上げたのは、召喚のことについてです。現在、我々女神を通さない異世界転移が行われるといった事例が報告されています。メールを受け取ったあなたもその被害者であると思われます。なので、急遽、女神の加護をメールにて添付いたしました。サービスとして加護を追加でもう一つ、ランダムにて添付してありますのでご確認ください。なお、帰還に関してですが、現在こちらの世界の転移プロトコルが正常に働いておらず、戻れる見込みは今のところございません。復旧次第、ご連絡を差し上げたいと思います。復旧にかかる時間はおよそ100年程となります。もし、帰還をご希望するならば、コールドスリープ装置などのオプションサービスを無料進呈させていただきます。装置は完成次第、メールにて添付いたします。届きましたら各自、安全な場所を確保し、コールドスリープをしてください。もし異世界が気に入りましたら、そのまま異世界をお楽しみください』

「(加護? メールで来てたのか! もっと早く気づいてば……。それに……復旧100年って長すぎだろ……コールドスリープ装置か……一応希望しておくか……)」

 タカシは、仮想キーボートを使い、『コールドスリープ希望』と、メールを返信した。異世界が気に入るかどうかはわからないが、戻れるという選択があるなら持っておいた方がいいだろう。

 と、さっそく添付ファイルを開くタカシ。すると、電子音声のような声が流れる。

『加護スロットを2つ追加。不屈の加護、契約の加護を追加。加護をアクティベート。完了しました』

 ステータスボードに、不屈の加護と契約の加護が追加された。

「(これ、チート? ……)」

 不屈の加護。内容的には耐性のようだ。刺突、斬撃、打撃、魔法、属性、毒、麻痺、混乱、睡眠、恐怖、魅了、呪い、ストレス──と幅が広い。おまけに、新たに攻撃を受ければ追加耐性も付くらしい。ここまで幅が広いと、効果の程を疑ってしまうが──こればかりは、何かと戦ってみなければ検証のしようがない。

「(これも、ないよりマシか……)」

 と、納得するタカシ。
 そして、もう一つ。契約の加護。契約の際に使われる加護で、これを使用すると、契約者、被契約者との合意があった時点で契約が成立するというものだ。内容によっては、契約不履行が起こった場合に被契約者を奴隷にすることも可能。また、両者の同意があれば、破棄も可能だという。

「(これは……いろいろと応用が利きそうだな……)」

 不敵な笑みを浮かべながら、タカシは喜んでいた。当然、悪いことを考えている。これを悪用すれば奴隷ハーレムを作ることも可能だからだ。けれども、妄想を膨らませるだけで、タカシにはそれを実行する度胸はない。

 チート能力らしきものをもらったタカシは皮の服と皮の靴を装備し、サバイバルナイフ片手にジャングルの探検を始めた。生い茂る蔓や枝をナイフで切り裂きながら、道なき道を進む。

 突然、目の前を人型の物体が横切った。

「なんだっ!?」
「ふぎゃっ!」
 その物体は木にぶつかり、鈍い悲鳴を上げて茂みに落ちる。その一瞬でタカシがとらえた情報は、体系は女性ということと、弓を持っているということだった。

 女性が飛んできた先を確認すると、眼前のインターフェイスが切り替わり、赤いロックカーソルがいたるところに出現した。カーソルが示した場所には、熊のような猛獣が潜んでいた。

 ──バトルインターフェイス──
 体力ゲージとスキルゲージ。そして、ミニマップやロックカーソル。敵をロックしたカーソルに表示されるのは敵のレベルと名前と体力ゲージだ。
 敵は、レベル30のマッドベアー。数は複数。なぜかモヒカンでトゲ付き肩パッドをしている。凶暴さをアピールしているのだろうか。奥には右目に眼帯をしたレベル60のマッドベアーリーダーが存在した。

「「「ヒャッハー!」」」

 マッドベアーの集団は凶悪な雄たけびを上げ、タカシに襲いかかる。吹っ飛んできた女性を気にする余裕はなかった。
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