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タライ 十六個目
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────暗闇の中
「ここはどこだ……」
辺りは真っ暗だ。物音一つしない。
「僕は……死んだのか……」
地面の感覚がない。浮いているようだ。
…………。
遠くから何かが近づいてくる音が聞こえる。
────ガタガタッ……ガタガタ……。
聞き覚えのある音……タライだ!
────ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…………。
音は、数を増す。そして、僕の周囲を取り囲んだ。
うっすらと音を出していた物体が発光し、姿を見せた。やはり、普通のタライだ。
────ガシャン!
タライは、一斉に飛んで音を立てる。
──「俺たちの……仕事を……返せええぇぇ」
──「俺たちは……タライだああぁぁ」
タライが僕に、とても低い声で語りかけてくる。
これが……『つくも神』!?
──「俺たちから……仕事を奪い……」
──「あまつさえ……床に落とされ続け……」
──「最後は……ホコリまみれにされ……」
──「「「忘れ去られた! うああああああ」」」
────ガシャンガシャンガシャンガシャン…………!
タライが暴れ始めた。
「それが……理由なのか……!」
そして、一斉に声を上げ始めた。
──「俺たちは……タライだああぁぁ」
──「タライだああぁぁ」
──「本来の仕事を奪われ」
──「ついた仕事は」
──「タライ落とし」
──「俺たちは、我慢した」
──「そこで黄金に輝けるならと!」
──「だが、これはなんだ!」
──「なんだ!」
──「俺たちはまだ」
──「働ける!」
──「なぜ役目を果たさせない!」
──「俺は洗濯物でも構わない!」
──「かわいいペットの風呂でいい!」
──「俺はかわいい子のフットバス!」
──「雨漏りの雨受けにだってなれる!」
──「スイカだって冷やせる!」
──「俺たちの!」
──「仕事を奪った挙句に!」
──「なんだこの仕打ちは!」
──「仕打ちは!」
──「「「うあああああああああ」」」
────ガシャンガシャンガシャンガシャン…………!
そうだった……タライというのは、本来落とされるためにあるものではない……ちゃんとした道具なんだ……。
それが、タライの呪いの原因だったのか……!
僕の意識はそこで途切れた。
────8月5日(土曜日) 午後8時00分
僕は目が覚めた。病院のベッドのようだが……。
きれいな看護婦さんが近づいてきた。
「目が覚めましたか」
「は……はい。ここは……」
「局内の医務室です」
「はっ、僕……寝てたんですか」
「ええ。気持ちよく寝てましたよ。良かったですね、どこも悪くなくて」
「そうだったんですか……。そういえばもう一人の……」
「ああ、彼女さんですね。廊下のソファーで寝ていますよ」
「そうですか……あの、ありがとうございました。」
僕は看護婦に礼を言って、零子の様子を見に行った。
零子はソファーで横になって眠っていた。今の時間まで待っててくれたのか……。
「零子! 起きてるか!」
僕は、零子の肩をつかんでゆすった。
「ん……ん~。気が付いたの、正人……」
零子は背伸びをしながら目を覚ました。
──僕らは、見学担当の職員に礼をいい、テレビ局を後にした。
「ここはどこだ……」
辺りは真っ暗だ。物音一つしない。
「僕は……死んだのか……」
地面の感覚がない。浮いているようだ。
…………。
遠くから何かが近づいてくる音が聞こえる。
────ガタガタッ……ガタガタ……。
聞き覚えのある音……タライだ!
────ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…………。
音は、数を増す。そして、僕の周囲を取り囲んだ。
うっすらと音を出していた物体が発光し、姿を見せた。やはり、普通のタライだ。
────ガシャン!
タライは、一斉に飛んで音を立てる。
──「俺たちの……仕事を……返せええぇぇ」
──「俺たちは……タライだああぁぁ」
タライが僕に、とても低い声で語りかけてくる。
これが……『つくも神』!?
──「俺たちから……仕事を奪い……」
──「あまつさえ……床に落とされ続け……」
──「最後は……ホコリまみれにされ……」
──「「「忘れ去られた! うああああああ」」」
────ガシャンガシャンガシャンガシャン…………!
タライが暴れ始めた。
「それが……理由なのか……!」
そして、一斉に声を上げ始めた。
──「俺たちは……タライだああぁぁ」
──「タライだああぁぁ」
──「本来の仕事を奪われ」
──「ついた仕事は」
──「タライ落とし」
──「俺たちは、我慢した」
──「そこで黄金に輝けるならと!」
──「だが、これはなんだ!」
──「なんだ!」
──「俺たちはまだ」
──「働ける!」
──「なぜ役目を果たさせない!」
──「俺は洗濯物でも構わない!」
──「かわいいペットの風呂でいい!」
──「俺はかわいい子のフットバス!」
──「雨漏りの雨受けにだってなれる!」
──「スイカだって冷やせる!」
──「俺たちの!」
──「仕事を奪った挙句に!」
──「なんだこの仕打ちは!」
──「仕打ちは!」
──「「「うあああああああああ」」」
────ガシャンガシャンガシャンガシャン…………!
そうだった……タライというのは、本来落とされるためにあるものではない……ちゃんとした道具なんだ……。
それが、タライの呪いの原因だったのか……!
僕の意識はそこで途切れた。
────8月5日(土曜日) 午後8時00分
僕は目が覚めた。病院のベッドのようだが……。
きれいな看護婦さんが近づいてきた。
「目が覚めましたか」
「は……はい。ここは……」
「局内の医務室です」
「はっ、僕……寝てたんですか」
「ええ。気持ちよく寝てましたよ。良かったですね、どこも悪くなくて」
「そうだったんですか……。そういえばもう一人の……」
「ああ、彼女さんですね。廊下のソファーで寝ていますよ」
「そうですか……あの、ありがとうございました。」
僕は看護婦に礼を言って、零子の様子を見に行った。
零子はソファーで横になって眠っていた。今の時間まで待っててくれたのか……。
「零子! 起きてるか!」
僕は、零子の肩をつかんでゆすった。
「ん……ん~。気が付いたの、正人……」
零子は背伸びをしながら目を覚ました。
──僕らは、見学担当の職員に礼をいい、テレビ局を後にした。
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