タライ落とし

マイきぃ

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タライ 十五個目

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────8月5日(土曜日) 午後2時00分

 僕は、零子とアルポリテレビにきた。そして、職員に誘導されて、局内を見学する。もちろん、タライに関するとろこだ。

 僕たちは、じいさんが師範をしていたという、タライ落としの養成所を案内してもらった。

 ────タライ……タライ……タライイイィィー!

 金属音のような幻聴が聞こえた。頭に響き、めまいがした。

「だ、大丈夫」

「うん、平気」

 零子に肩を貸してもらった。……何か嫌な気配がする……。

 職員に案内され、僕らは養成所についた。天井のある舞台セットが置いてある。

「この舞台の天井から、タライを落とすわけか……」

 実際、天井付きの舞台セットの高さなら、落ちた場合の威力はさほどでもないだろう。安全面は考えてあったわけだ……。

 なにやら、ざわめきが聞こえる。僕はその方向に足を向けた。

「そっちは、倉庫ですね。見てみますか?」

「はい」

 職員は倉庫の錠前に手をかけ、古い鍵を使い錠前をこじ開ける。そして、引き戸を力いっぱい引いて戸を開けた。中は暗かった。

 その後、職員は倉庫の中に入り、電気をつけた。

 その瞬間、僕は、驚くべき光景を目にした。

「なに……これ……」

 零子は、口を開けて目を丸くしてあっけにとられていた。

「これは……」

 僕が最初に目にしたもの……それは……。

 倉庫に山積みにされたタライだった。

 倉庫の床はホコリまみれだ。かなりホコリが積もっているため、長いこと使われていない倉庫ということがわかる。

 僕は、そのホコリの上に足跡をつけるかのように、倉庫に足を踏み入れた。

 ────タライィィィ……タァァラァァイィィー……。

「クッ」

 また頭痛だ。聞こえる幻聴が大きくなっている……疲れているのか……それとも憑かれて……。

 ──ガタガタガタガタガタガタ…………。

「今度はなんだ!」

 目の前に積んであったタライが、振動するように震え始めた。

 ────ア……ヒ……ノ……マーゴーォォォォ!

 ──ゴゴゴゴゴゴ。

 倉庫が揺れているようだった。

「強い霊気ね……」

 零子が、身構えた。ポケットから札を取り出し、何かを唱えている。

「キャッ!」

 だが、次の瞬間……札は破け、はじけ飛ぶ。

「な、なんでしょうね……これ……」

 職員は、足をガクガクさせてビビっている。

 そして……僕の所にタライが波のように崩れてきた。

 ──ガンガンガンガラガラガラガラガシャガシャーン!

「うわああぁぁぁぁー!」

 僕は、タライの波に飲まれてしまった。
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