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タライ 十二個目
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────7月29日(土曜日) 午後8時4分
タライは、零子めがけて落ちてきた。
僕はとっさに零子を押した。
「あぶない!」
──ドスッ!
「ひゃあっ!」
目の前を、金色に輝くタライが落ちる。そして、地面に激突した。
──ガンッ! ガラゴロガラガラララララン!
「え、これ……『黄金のタライ』なの……」
「だ……だろうね……」
明らかに零子を狙って落とされたタライだ。だが……この近辺は高い建物のない住宅街だ。そして、空から落ちてきたのを僕は目撃している。
それと、零子は異世界転生の言葉を口にしていない……だとすれば、いったい何が……。
「ねえ、正人……タライって、どんな時に落とすの?」
「ん……タライを落とす……?」
タライをどんな時に落とすか……お笑い番組だよな……それで、ウケを取るために……。
──まさか……!
「零子! おまえ、なんかウケをねらったのか」
「そんなわけないわよ~」
──まてよ……そうじゃなくて……ウケなかった……だとしたら……!?
「零子、さっき「豚になっても、ブタないでね」って言ったよね。それって面白い?」
「面白いわけ……え……まさか!?」
「そう、そのまさかだよ」
──僕と零子の目線が合った。
「「ウケないギャグ!」」
ウケないギャグ。これがキーワードだったのだ。多分、一樹の時も神社がなんたらとかいうギャグを言ったはずだ! そして、その後に音信不通になった。おそらく、タライが落ちたのだろう。
そういえば、【FFL】の《サクラ》もチャットで変なギャグいってたっけ……。その後、連絡は途絶えたままだ……ギャグはチャットにも影響するのか……?
まあ、とりあえず、一つの答えが見つかった。
だが、妹の正美の時はどうだったんだろう……あの時は何も落ちてこなかった。まさか、かわいいから許された……なんてことはないか……。
もう一つ何かのフラグがあるのだろう……。まあ、土曜日にウケないギャグを言わなければいいことは確かだ。それと、今のようにかわせるのなら対処はできる。
「落ちてくる条件はわかったあとは……」
「なぜ、落ちてくるのか。それを調べないとね」
「そうだね、あと、他に落ちてないか、調べてもらえるかな」
「うん、知り合いに一応聞いてみる……あれ、正人、これ見て?」
突然、零子が視線を振った、その先にあったのはさっきのタライだ。そして、そのタライは、色が変わっていた。
「これ、たしか金色だったよな」
「うん……色が変わってる……なにこれ、こわい……」
タライ本来のシルバー色に戻っていた。
────タライ……タライ……もっと……。
幻聴が聞こえた。なにかヤバい、そう思った俺は零子の手を握った。
「逃げよう」
「うん」
零子を引っ張りながら全速力で走った。すごく後ろが気になる……振り向いたら、あのタライが追いかけてくるのではないか、そんな気さえしていた。
暗い路地を抜け、明るい交差点まで走った。僕はすぐに後ろを振り向いた。だが、なにも追ってきてはいなかった。
僕は、ホッとため息をつく。
「あとは帰れるから……」
「あ、うん……ごめん」
気が動転していたせいか、零子の手を強く握りつけてしまっていた。一言謝り、すぐ手を放した。零子は、すこし顔を赤くしていた。どうやら、とても恥ずかしい思いをさせてしまったようだ。
「じゃあ、何かわかったら、また連絡するよ」
「うん、こっちも連絡する」
僕は、交差点で零子と別れた。
タライは、零子めがけて落ちてきた。
僕はとっさに零子を押した。
「あぶない!」
──ドスッ!
「ひゃあっ!」
目の前を、金色に輝くタライが落ちる。そして、地面に激突した。
──ガンッ! ガラゴロガラガラララララン!
「え、これ……『黄金のタライ』なの……」
「だ……だろうね……」
明らかに零子を狙って落とされたタライだ。だが……この近辺は高い建物のない住宅街だ。そして、空から落ちてきたのを僕は目撃している。
それと、零子は異世界転生の言葉を口にしていない……だとすれば、いったい何が……。
「ねえ、正人……タライって、どんな時に落とすの?」
「ん……タライを落とす……?」
タライをどんな時に落とすか……お笑い番組だよな……それで、ウケを取るために……。
──まさか……!
「零子! おまえ、なんかウケをねらったのか」
「そんなわけないわよ~」
──まてよ……そうじゃなくて……ウケなかった……だとしたら……!?
「零子、さっき「豚になっても、ブタないでね」って言ったよね。それって面白い?」
「面白いわけ……え……まさか!?」
「そう、そのまさかだよ」
──僕と零子の目線が合った。
「「ウケないギャグ!」」
ウケないギャグ。これがキーワードだったのだ。多分、一樹の時も神社がなんたらとかいうギャグを言ったはずだ! そして、その後に音信不通になった。おそらく、タライが落ちたのだろう。
そういえば、【FFL】の《サクラ》もチャットで変なギャグいってたっけ……。その後、連絡は途絶えたままだ……ギャグはチャットにも影響するのか……?
まあ、とりあえず、一つの答えが見つかった。
だが、妹の正美の時はどうだったんだろう……あの時は何も落ちてこなかった。まさか、かわいいから許された……なんてことはないか……。
もう一つ何かのフラグがあるのだろう……。まあ、土曜日にウケないギャグを言わなければいいことは確かだ。それと、今のようにかわせるのなら対処はできる。
「落ちてくる条件はわかったあとは……」
「なぜ、落ちてくるのか。それを調べないとね」
「そうだね、あと、他に落ちてないか、調べてもらえるかな」
「うん、知り合いに一応聞いてみる……あれ、正人、これ見て?」
突然、零子が視線を振った、その先にあったのはさっきのタライだ。そして、そのタライは、色が変わっていた。
「これ、たしか金色だったよな」
「うん……色が変わってる……なにこれ、こわい……」
タライ本来のシルバー色に戻っていた。
────タライ……タライ……もっと……。
幻聴が聞こえた。なにかヤバい、そう思った俺は零子の手を握った。
「逃げよう」
「うん」
零子を引っ張りながら全速力で走った。すごく後ろが気になる……振り向いたら、あのタライが追いかけてくるのではないか、そんな気さえしていた。
暗い路地を抜け、明るい交差点まで走った。僕はすぐに後ろを振り向いた。だが、なにも追ってきてはいなかった。
僕は、ホッとため息をつく。
「あとは帰れるから……」
「あ、うん……ごめん」
気が動転していたせいか、零子の手を強く握りつけてしまっていた。一言謝り、すぐ手を放した。零子は、すこし顔を赤くしていた。どうやら、とても恥ずかしい思いをさせてしまったようだ。
「じゃあ、何かわかったら、また連絡するよ」
「うん、こっちも連絡する」
僕は、交差点で零子と別れた。
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