11 / 17
タライ 十一個目
しおりを挟む
────7月29日(土曜日) 午後6時35分
僕は、零子と合流して、一樹の家に向かった。普通の二階建ての家だ。
とりあえず、家のチャイムを鳴らす。
────ピンポーン!
「はーい」
一樹の母の声がした。玄関の扉が開いた。
「正人さん、こんばんわ。あら、彼女連れですか」
「え、いや、あの、その……」
僕は、その言葉に、ちょっとうろたえてしまった。
「幼馴染の零子です。今日は、よろしくお願いします」
「あら、しっかりした彼女ね。まあ、上がってください」
「「お邪魔しまーす」」
僕らは、一樹の家にお邪魔させてもらった。部屋のある2階へいく。母は、一樹の部屋の扉を開く。僕と零子はゆっくりと部屋に入った。
部屋の中は机とベッド。テレビにパソコン。僕の家の部屋とたいして変わらなかった。そして、ベッドの上に問題のタライが置かれていた。60センチほどのアルミでできた普通のタライだ。
「これがその……タライなんですけど……。まさか、これで頭を打って意識不明になったのでしょうか……」
「いえ、それはまだ……わからないです」
この場合、それを疑うのが普通なのだが、不自然に知らないふりをしてしまった。
部屋に不自然に置いてあるタライ……。誰でも怪しく思う。だが、見たわけではないので断定はできないし、それを証明することもできない。ここは、余計なことは言わない方がいいだろう。
零子は、タライを手に取り、くまなく調べていた。
「おい、さわっても大丈夫か?」
「普通のタライね……わりと綺麗に磨いてある……でも、どうして金色じゃないんだろう」
「そもそもアルミでできた普通のタライが金色ってことはないと思うが……」
「何かが違うのかしら……条件とか」
「もしかして、すでにこのタライが原因と決めてないか」
「そうじゃなきゃ、私はここにきません」
「それもそうか……」
一樹の母は、零子に話しかける。
「あの……何かわかりました……?」
「いえ……一樹くんのお母さん。普通のタライでした」
「そうでしたか……心配かけてすみません」
「いえいえ、こちらこそ何もできないで」
「もしよかったら夕飯どうでしょうか? いつも間違って多く作ってしまうので……」
零子の表情がニンマリとした表情に変化した。
「夕飯ですか? ぜひ、ぜひ!」
「助かるわ、じゃあ、後で台所へ来てください。用意しておきますね」
「いえいえ、こちらこそ」
零子は、喜んでいた。もう少し遠慮してもいいのではないかと思うのだが……。
────7月29日(土曜日) 午後8時2分
僕らは、食事を終えて帰ることにした。得られた情報は、タライが存在していたことと、黄金のタライじゃないことだけだった。やはり、この意識不明の事件には、タライが関係しているとみるべきだろう。
「じゃあ、そろそろ帰ります」
「暗いから、気をつけてね」
「ごちそうさまでした! とてもおいしかったです!」
「あら、ありがとう」
僕と零子は、一樹の家を後にした。夜も遅いので、零子を家まで送ることにしよう。
「零子、少しは遠慮したほうがいいぞ。あんまり食べ過ぎると豚になるぞ」
「豚になっても、ブタないでね」
「ブツかよ……」
ため息が出そうな零子のギャグだった。
────タライ……タライ……。
背中がゾクッっとした。そして、謎の声……幻聴か……それとも……。
上から何かの気配を感じた。そして、僕はその気配の感じる方向を向いた。そこは、雲一つない星空だった。その中に、一つだけ金色に光り輝く何かを見つけた。そして、それはどんどん大きくなって…………。
────「タライだ!」
僕は、零子と合流して、一樹の家に向かった。普通の二階建ての家だ。
とりあえず、家のチャイムを鳴らす。
────ピンポーン!
「はーい」
一樹の母の声がした。玄関の扉が開いた。
「正人さん、こんばんわ。あら、彼女連れですか」
「え、いや、あの、その……」
僕は、その言葉に、ちょっとうろたえてしまった。
「幼馴染の零子です。今日は、よろしくお願いします」
「あら、しっかりした彼女ね。まあ、上がってください」
「「お邪魔しまーす」」
僕らは、一樹の家にお邪魔させてもらった。部屋のある2階へいく。母は、一樹の部屋の扉を開く。僕と零子はゆっくりと部屋に入った。
部屋の中は机とベッド。テレビにパソコン。僕の家の部屋とたいして変わらなかった。そして、ベッドの上に問題のタライが置かれていた。60センチほどのアルミでできた普通のタライだ。
「これがその……タライなんですけど……。まさか、これで頭を打って意識不明になったのでしょうか……」
「いえ、それはまだ……わからないです」
この場合、それを疑うのが普通なのだが、不自然に知らないふりをしてしまった。
部屋に不自然に置いてあるタライ……。誰でも怪しく思う。だが、見たわけではないので断定はできないし、それを証明することもできない。ここは、余計なことは言わない方がいいだろう。
零子は、タライを手に取り、くまなく調べていた。
「おい、さわっても大丈夫か?」
「普通のタライね……わりと綺麗に磨いてある……でも、どうして金色じゃないんだろう」
「そもそもアルミでできた普通のタライが金色ってことはないと思うが……」
「何かが違うのかしら……条件とか」
「もしかして、すでにこのタライが原因と決めてないか」
「そうじゃなきゃ、私はここにきません」
「それもそうか……」
一樹の母は、零子に話しかける。
「あの……何かわかりました……?」
「いえ……一樹くんのお母さん。普通のタライでした」
「そうでしたか……心配かけてすみません」
「いえいえ、こちらこそ何もできないで」
「もしよかったら夕飯どうでしょうか? いつも間違って多く作ってしまうので……」
零子の表情がニンマリとした表情に変化した。
「夕飯ですか? ぜひ、ぜひ!」
「助かるわ、じゃあ、後で台所へ来てください。用意しておきますね」
「いえいえ、こちらこそ」
零子は、喜んでいた。もう少し遠慮してもいいのではないかと思うのだが……。
────7月29日(土曜日) 午後8時2分
僕らは、食事を終えて帰ることにした。得られた情報は、タライが存在していたことと、黄金のタライじゃないことだけだった。やはり、この意識不明の事件には、タライが関係しているとみるべきだろう。
「じゃあ、そろそろ帰ります」
「暗いから、気をつけてね」
「ごちそうさまでした! とてもおいしかったです!」
「あら、ありがとう」
僕と零子は、一樹の家を後にした。夜も遅いので、零子を家まで送ることにしよう。
「零子、少しは遠慮したほうがいいぞ。あんまり食べ過ぎると豚になるぞ」
「豚になっても、ブタないでね」
「ブツかよ……」
ため息が出そうな零子のギャグだった。
────タライ……タライ……。
背中がゾクッっとした。そして、謎の声……幻聴か……それとも……。
上から何かの気配を感じた。そして、僕はその気配の感じる方向を向いた。そこは、雲一つない星空だった。その中に、一つだけ金色に光り輝く何かを見つけた。そして、それはどんどん大きくなって…………。
────「タライだ!」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
コ・ワ・レ・ル
本多 真弥子
ホラー
平穏な日常。
ある日の放課後、『時友晃』は幼馴染の『琴村香織』と談笑していた。
その時、屋上から人が落ちて来て…。
それは平和な日常が壊れる序章だった。
全7話
表紙イラスト irise様 PIXIV:https://www.pixiv.net/users/22685757
Twitter:https://twitter.com/irise310
挿絵イラスト チガサキ ユウ様 X(Twitter) https://twitter.com/cgsk_3
pixiv: https://www.pixiv.net/users/17981561
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
赤い車の少女
きーぼー
ホラー
ある夏の日、少年は幽霊と出会った。
舞台となる地方都市では何ヶ月か前から自分を轢き逃げした赤い色の自動車を探す少女の幽霊が出没していた。
とある出来事がきっかけで3人の中学生の男女がこの奇妙な幽霊騒ぎに巻き込まれるのだがー。
果たして彼等はこの不可思議な事件に秘められた謎を解き明かすことができるのか?
恐怖と伝説に彩られた妖魔の夏が今始まる!!
真夏の夜の幽霊物語(ゴーストストーリー)。
是非、御一読下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる