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タライ 二個目
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────6月25日(日曜日)
日曜日なんてあっという間だった。朝早くに叩き起こされ、町内会の溝掃除だ。おまけにその後は母の実家に駆り出され、草むしりをやる羽目になった。最後に、焼肉食べ放題のお店に連れて行ってもらい、ガッツリと食べたので、元は取ったということにしておこう。
────6月25日(日曜日) 午後6時16分
夕方、家に戻った僕は、テレビをつけてニュースを見た。ちょうど、『異世界転生ズ』のタライのニュースが始まっていた。
ニュースによれば、タライはスタジオには設置されていなかったようだ。設置されていないものが落ちてきた。まさか……そんなことがあるわけはない。だれも、設置したタライに気付かなかっただけじゃないのか?
まあ、それは現場の捜査員が判断することだ。そのうち何かわかれば情報が出てくるだろう。
『異世界転生ズ』の二人は、まだ意識不明の状態が続いているようだ。特に外傷はなく、命に別状はないようだ。
一時、タライ落とし職人の人が疑われたらしいが、アリバイはあるらしい。
トリックという線もある。と、僕は思ったが、探偵でもない僕がそんなことをとやかく言える立場ではないのは明らかだ。現場もよく知らないのに、考えたって仕方がない。
とりあえず、タライのことは、頭から外すことにした。
────6月26日(月曜日)
今週もまた学校だ。
月曜日の朝は、いつも憂鬱だ。僕は、学校に向かうきつい坂を上っていた。
僕の通っている学校は、とても見晴らしのいい丘に建っている。海が見えて、とっても景色のいいところだ。
「おっはよー! 正人!」
────バシッ!
僕は、背中を叩かれた。この声は……幼馴染の『鈴葉零子』だ。
背は俺より小さく、見た目はかわいいのだが、極度のオカルト好きだ。それを除けば、普通の女子高生と変わらないのだが……。
「ねえ、タライのニュース見た?」
「ああ、あのニュースか。タライだろ」
「うん……これってさ、タライの呪いか何かじゃないかって」
「呪い? 今時、呪いなんてあるわけなゃいじゃん」
呪いか……その線で考えたら、不思議な現象はなんでも呪いのせいにしてしまえばいいことになってしまう……。ああーっ、ないない! 彼女のペースで考えたらこっちまでおかしくなる!
「絶対これ、呪いだと思う。使われなくなったタライの怨念」
「でも、怨念だったら、最後は殺されたりしないのか?」
「んんー。どうなんだろう。種類にもよるだろうけど、今回の怨念は『つくも神』の仕業じゃないかって私は思うの。おそらく、ちゃんと祭ってあげれば、収まるんじゃないかな」
「つくも神……ね。じゃあ、取り付かれた『異世界転生ズ』が死なないのは、怨念が『つくも神』の仕業だからってことか」
「そういうわけではなさそう。ただ、怨念の度合いが軽いっていうか、命までは取らないけど、何かを訴えたいって思ってる。そんな感じの怨念」
「そういうもんか……」
彼女がこういう話をするのは、趣味が合う人間か、僕ぐらいだ。やはり、自分でもオカルトな話で盛り上がるとおかしな目で見られることを警戒してか、話す相手は人を選んでいるようだ。
さぁ、今日も一日、頑張るか……。
────僕は、いつもの学校生活を満喫した。
日曜日なんてあっという間だった。朝早くに叩き起こされ、町内会の溝掃除だ。おまけにその後は母の実家に駆り出され、草むしりをやる羽目になった。最後に、焼肉食べ放題のお店に連れて行ってもらい、ガッツリと食べたので、元は取ったということにしておこう。
────6月25日(日曜日) 午後6時16分
夕方、家に戻った僕は、テレビをつけてニュースを見た。ちょうど、『異世界転生ズ』のタライのニュースが始まっていた。
ニュースによれば、タライはスタジオには設置されていなかったようだ。設置されていないものが落ちてきた。まさか……そんなことがあるわけはない。だれも、設置したタライに気付かなかっただけじゃないのか?
まあ、それは現場の捜査員が判断することだ。そのうち何かわかれば情報が出てくるだろう。
『異世界転生ズ』の二人は、まだ意識不明の状態が続いているようだ。特に外傷はなく、命に別状はないようだ。
一時、タライ落とし職人の人が疑われたらしいが、アリバイはあるらしい。
トリックという線もある。と、僕は思ったが、探偵でもない僕がそんなことをとやかく言える立場ではないのは明らかだ。現場もよく知らないのに、考えたって仕方がない。
とりあえず、タライのことは、頭から外すことにした。
────6月26日(月曜日)
今週もまた学校だ。
月曜日の朝は、いつも憂鬱だ。僕は、学校に向かうきつい坂を上っていた。
僕の通っている学校は、とても見晴らしのいい丘に建っている。海が見えて、とっても景色のいいところだ。
「おっはよー! 正人!」
────バシッ!
僕は、背中を叩かれた。この声は……幼馴染の『鈴葉零子』だ。
背は俺より小さく、見た目はかわいいのだが、極度のオカルト好きだ。それを除けば、普通の女子高生と変わらないのだが……。
「ねえ、タライのニュース見た?」
「ああ、あのニュースか。タライだろ」
「うん……これってさ、タライの呪いか何かじゃないかって」
「呪い? 今時、呪いなんてあるわけなゃいじゃん」
呪いか……その線で考えたら、不思議な現象はなんでも呪いのせいにしてしまえばいいことになってしまう……。ああーっ、ないない! 彼女のペースで考えたらこっちまでおかしくなる!
「絶対これ、呪いだと思う。使われなくなったタライの怨念」
「でも、怨念だったら、最後は殺されたりしないのか?」
「んんー。どうなんだろう。種類にもよるだろうけど、今回の怨念は『つくも神』の仕業じゃないかって私は思うの。おそらく、ちゃんと祭ってあげれば、収まるんじゃないかな」
「つくも神……ね。じゃあ、取り付かれた『異世界転生ズ』が死なないのは、怨念が『つくも神』の仕業だからってことか」
「そういうわけではなさそう。ただ、怨念の度合いが軽いっていうか、命までは取らないけど、何かを訴えたいって思ってる。そんな感じの怨念」
「そういうもんか……」
彼女がこういう話をするのは、趣味が合う人間か、僕ぐらいだ。やはり、自分でもオカルトな話で盛り上がるとおかしな目で見られることを警戒してか、話す相手は人を選んでいるようだ。
さぁ、今日も一日、頑張るか……。
────僕は、いつもの学校生活を満喫した。
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