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はじめてのモフモフ
第11話 追加任務
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村の屋敷は焼け落ちてしまったので、今夜は団員に案内されてハエールのアジトで一泊することとなった。
村から少し南へ向かうと、砦のような廃墟にたどり着いた。周囲は物音も無く、とても静かだ。ランプの灯りで照らしながら、中へ入る。
メリル以外の盗賊団員は、外で見張りのようだ。これなら、もし、敵が攻めてきてもひとまず安心だ。
外装はボロボロだが、中はしっかりした石造りの大きな屋敷だった。木製のドアが壊されていたり、壺が割れていたりと、荒らされた跡はあるが、建物自体はしっかりしているのでこれまた安心だ。
安心を手に入れたところで、ふと、気になる事が出てきた。フィオラの事だ。僕は、軽くフィオラに話しかける。
「ところでフィオラ。さっき、盗賊団は狼とか猫って言ってたけど、いったいどういうこと? やけに事情に詳しい気がするんだけど……」
「なにかいったかニャ。きっと気のせいなのニャ」
「…………」
フィオラは気まずそうに笑ってその場をごまかした。答える気はないらしい。頼れるのか頼れないのかよくわからない。一応、警戒はしておいたほうが良さそうだ。
「それと、メリル。一応、僕とペスは毛が無い。なので、もし、ケゾールと遭遇したら、僕たちが接触するから、いいね」
「うむ、わかった。肝に銘じておく」
軽く打ち合わせを終えた僕たちは、廊下の突き当りの部屋に入り、部屋に設置されている壊れたベッドに腰を下ろす。
そういえば、このモフモフの能力、フィオラにモフモフした場合はどんなスキルなのだろうか。これは、自分の力に関係しているので、知っておかなければならないことの1つだ。
僕は、フィオラに手を伸ばし、黒装束を剥ぎ取った。
「フィオラ、モフモフだ」
「ひゃっ! 何するニャ~!」
「いいから、モフモフだ!」
「モフモフって、ダメなのニャ~」
嫌がるフィオラの背中を抑えつけ、フサフサな毛をモフる。
「もっふもふ~! もっふもふ~!」
「やめるのニャ~!」
力いっぱい頬ずりする。
「もっふもふ~! もっふもふ~!」
「んニャニャニャニャ~!」
しばらくモフり続けると、フィオラはモフモフショックで倒れてしまった。心地よいモフモフだった。
「柔人さん、い……いつもこんな事してるのですか」
メリルが、びっくりした顔でこちらを見ていた。その目は、モフモフを知らない目だった。
「い、いつもじゃないよ。たまにだよ」
少し気まずいが、これは、仕方のない事だ。
「そうですか、たまにですか。って……たまにならやってもよろしいのですか?」
ちょっと心にグサッとくる言いようだった。だが、そんな事で、僕のモフモフ欲求は抑えることはできない。なので、強引に納得させるしかない。
「これも、ケゾールを倒すためだ。わかってくれメリル」
「ケゾールを倒すため……なのですね。わかりました」
やけに物分かりのいい様子だったので、ひとまず安心だ。落ち着いたところで、僕は、今のモフモフでの変化を調べる。まず、耳だ。耳は猫耳に変化していた。ここまではOKだ。それと、ステータスだ。
「【ステイト】!」
ステータスを確認する。
[
SRA 猫 LV 15
HP --(110)
MFP 200(1300)
+AP 23(29)
+DP 15(21)
+SP 20(26)
SK 認識阻害
▼(点滅中)
]
スキルは認識阻害だった。隠れるとか、そういったスキルなのだろうか。とりあえず、使って確認してみることにした。
──認識阻害!──
「あれ、柔人さん? き……消えた……!?」
「さっきまで、柔人殿は、ここにいたはず……いったい何が……」
ペスとメリルは、目の前にいる僕の姿を見失ったようだ。
──透明人間になると、こういう感じなのだろうか……素晴らしい!これなら、いたずらし放題……っと、悪用厳禁、悪用厳禁。
僕は、その場で認識阻害を解除した。
「うわっ!」
目の前にいたペスは、認識阻害の解除と同時に、びっくりして後ろに飛びのいた。
「びっくりするじゃないですか! 柔人さん!」
「おお、消えていたのか、柔人殿」
「今、認識阻害を使ったんだ。消えていたのか?」
「まったく見えませんでしたよ。今のは、魔法ですか?」
ペスは、興味津々に聞いてくる。消える効果のスキルで間違いないようだ。
「スキルだよ」
次に、モフモフショックで倒れているフィオラを起こす。
「も、モフモフニャ~モフモフニャ~モニャ? や、柔人がモフモフするのニャ~」
「いや、もうしてないからっ!」
だいぶグロッキーな状態だ。しょうがないので、メリルに質問をする。
「メリル、君は突進とか回復のスキルを持っていたりする?」
そう、メリルをモフったときに使えたスキルだ。モフった対象のスキルは関係しているのだろうか……それだけが疑問だった。
「いいえ、そのようなスキルは持ってはいません。ですが、一時的に味方の守備力を上げるスキルならあります」
「守備力?」
「ええ。やってみますか?」
「いや、今はいい。ありがとう」
──突進も回復も持っていない……じゃあ、モフモフ対象のスキルは関係ないというのか?
あとは、フィオラのスキルを確認するだけだ。
「フィ~オ~ラ~! 早く正気に戻れ!」
フィオラの耳元で大声を上げ、頬を軽くビンタする。フィオラは、ようやく目に輝きを取り戻した。
「モフモフは幸せなのニャ~」
「気が付いたか、フィオラ」
「ハッ! しまったのニャ。また柔人にモフられたのニャ」
「いや、突然すまない。ところで、フィオラは認識阻害とか、消えたりとか、そういうスキル、使える?」
「んん……そんなスキルもってたら、今頃、大盗賊になってるのニャ。強いて言えば、鍛えに鍛えたスキル。地獄耳があるのニャ」
「地獄耳? 遠くの会話が聞けるとか、そういうのか?」
「そうニャ。発動時間が短いのが難点ニャ」
フィオラは地獄耳。ということは、モフった対象のスキルと自分の使えるスキルは関係がないという事だろう。
「あの、僕のスキルは……」
ペスが自信満々に声を出そうとした。
「あ、いいや。もう解決したから」──聞いてもしょうがないか。
「そんな! 聞いてくださいよ柔人さん!」
メリルとフィオラは、そんなペスの頼みをよそに、寝る準備に入っていた。
「明日のために、今日はもう休もう」
「それがいいのニャ」
こうして僕らは、ハエール盗賊団のアジトで一夜を明かした。
次の日の朝、僕たちはアジトを出発し、クラウド村へと向かった。黒装束姿の僕らは、どこからどうみてもケゾールソサエティーのメンバーにしか見えない。
クラウド村の屋敷を訪れ、村長に話を通す。そして、橋を封鎖している門を開かせた。欄干の無い、馬車の幅ギリギリの橋だっが、幌付きじゃない荷馬車のため、誘導は楽だった。
突然、僕たちめがけて小さい石が河原から飛んできた。飛ばしているのは、屋敷にいた小さい羊っ娘のメイミーだった。
「ファムを返せ! クリムを返せ! 仲間を返せ!」
メイミーは、泣きながら石を力いっぱい投げていた。投げられた小石は僕たちまで届き、体に当たる。痛くはない。だが、投げられた石を通じてメイミーの心の痛みを少しだけ感じたような気がした。
村長は急いでメイミーの所へ駆け寄り、叫ぶ。「よさないか、メイミー! お前まで連れていかれたら……わしらは……」と、そう言って、メイミーの腕をつかみ、石を投げるのをやめさせた。僕らが本物のケゾールだったら、今頃どうなっていたことか……。
「くっ……メイミー。済まない……必ず、連れ去られた皆を解放する」
メリルは、そう言葉を発して、メイミーに背を向けた。僕は、そんなメリルにそっと声をかける。
「そうだね。許せないね。ケゾールソサエティー」
「わたしも手伝うのニャ」
「解放しましょう!」
フィオラとペスは、メリルを元気付けるように、高らかに声を上げた。
僕たちの任務は、ケゾールソサエティーのアジトの発見と狐っ娘姫の救出。そして、ここで新たな任務、クラウド村の住人の救出が加わることとなった。
村から少し南へ向かうと、砦のような廃墟にたどり着いた。周囲は物音も無く、とても静かだ。ランプの灯りで照らしながら、中へ入る。
メリル以外の盗賊団員は、外で見張りのようだ。これなら、もし、敵が攻めてきてもひとまず安心だ。
外装はボロボロだが、中はしっかりした石造りの大きな屋敷だった。木製のドアが壊されていたり、壺が割れていたりと、荒らされた跡はあるが、建物自体はしっかりしているのでこれまた安心だ。
安心を手に入れたところで、ふと、気になる事が出てきた。フィオラの事だ。僕は、軽くフィオラに話しかける。
「ところでフィオラ。さっき、盗賊団は狼とか猫って言ってたけど、いったいどういうこと? やけに事情に詳しい気がするんだけど……」
「なにかいったかニャ。きっと気のせいなのニャ」
「…………」
フィオラは気まずそうに笑ってその場をごまかした。答える気はないらしい。頼れるのか頼れないのかよくわからない。一応、警戒はしておいたほうが良さそうだ。
「それと、メリル。一応、僕とペスは毛が無い。なので、もし、ケゾールと遭遇したら、僕たちが接触するから、いいね」
「うむ、わかった。肝に銘じておく」
軽く打ち合わせを終えた僕たちは、廊下の突き当りの部屋に入り、部屋に設置されている壊れたベッドに腰を下ろす。
そういえば、このモフモフの能力、フィオラにモフモフした場合はどんなスキルなのだろうか。これは、自分の力に関係しているので、知っておかなければならないことの1つだ。
僕は、フィオラに手を伸ばし、黒装束を剥ぎ取った。
「フィオラ、モフモフだ」
「ひゃっ! 何するニャ~!」
「いいから、モフモフだ!」
「モフモフって、ダメなのニャ~」
嫌がるフィオラの背中を抑えつけ、フサフサな毛をモフる。
「もっふもふ~! もっふもふ~!」
「やめるのニャ~!」
力いっぱい頬ずりする。
「もっふもふ~! もっふもふ~!」
「んニャニャニャニャ~!」
しばらくモフり続けると、フィオラはモフモフショックで倒れてしまった。心地よいモフモフだった。
「柔人さん、い……いつもこんな事してるのですか」
メリルが、びっくりした顔でこちらを見ていた。その目は、モフモフを知らない目だった。
「い、いつもじゃないよ。たまにだよ」
少し気まずいが、これは、仕方のない事だ。
「そうですか、たまにですか。って……たまにならやってもよろしいのですか?」
ちょっと心にグサッとくる言いようだった。だが、そんな事で、僕のモフモフ欲求は抑えることはできない。なので、強引に納得させるしかない。
「これも、ケゾールを倒すためだ。わかってくれメリル」
「ケゾールを倒すため……なのですね。わかりました」
やけに物分かりのいい様子だったので、ひとまず安心だ。落ち着いたところで、僕は、今のモフモフでの変化を調べる。まず、耳だ。耳は猫耳に変化していた。ここまではOKだ。それと、ステータスだ。
「【ステイト】!」
ステータスを確認する。
[
SRA 猫 LV 15
HP --(110)
MFP 200(1300)
+AP 23(29)
+DP 15(21)
+SP 20(26)
SK 認識阻害
▼(点滅中)
]
スキルは認識阻害だった。隠れるとか、そういったスキルなのだろうか。とりあえず、使って確認してみることにした。
──認識阻害!──
「あれ、柔人さん? き……消えた……!?」
「さっきまで、柔人殿は、ここにいたはず……いったい何が……」
ペスとメリルは、目の前にいる僕の姿を見失ったようだ。
──透明人間になると、こういう感じなのだろうか……素晴らしい!これなら、いたずらし放題……っと、悪用厳禁、悪用厳禁。
僕は、その場で認識阻害を解除した。
「うわっ!」
目の前にいたペスは、認識阻害の解除と同時に、びっくりして後ろに飛びのいた。
「びっくりするじゃないですか! 柔人さん!」
「おお、消えていたのか、柔人殿」
「今、認識阻害を使ったんだ。消えていたのか?」
「まったく見えませんでしたよ。今のは、魔法ですか?」
ペスは、興味津々に聞いてくる。消える効果のスキルで間違いないようだ。
「スキルだよ」
次に、モフモフショックで倒れているフィオラを起こす。
「も、モフモフニャ~モフモフニャ~モニャ? や、柔人がモフモフするのニャ~」
「いや、もうしてないからっ!」
だいぶグロッキーな状態だ。しょうがないので、メリルに質問をする。
「メリル、君は突進とか回復のスキルを持っていたりする?」
そう、メリルをモフったときに使えたスキルだ。モフった対象のスキルは関係しているのだろうか……それだけが疑問だった。
「いいえ、そのようなスキルは持ってはいません。ですが、一時的に味方の守備力を上げるスキルならあります」
「守備力?」
「ええ。やってみますか?」
「いや、今はいい。ありがとう」
──突進も回復も持っていない……じゃあ、モフモフ対象のスキルは関係ないというのか?
あとは、フィオラのスキルを確認するだけだ。
「フィ~オ~ラ~! 早く正気に戻れ!」
フィオラの耳元で大声を上げ、頬を軽くビンタする。フィオラは、ようやく目に輝きを取り戻した。
「モフモフは幸せなのニャ~」
「気が付いたか、フィオラ」
「ハッ! しまったのニャ。また柔人にモフられたのニャ」
「いや、突然すまない。ところで、フィオラは認識阻害とか、消えたりとか、そういうスキル、使える?」
「んん……そんなスキルもってたら、今頃、大盗賊になってるのニャ。強いて言えば、鍛えに鍛えたスキル。地獄耳があるのニャ」
「地獄耳? 遠くの会話が聞けるとか、そういうのか?」
「そうニャ。発動時間が短いのが難点ニャ」
フィオラは地獄耳。ということは、モフった対象のスキルと自分の使えるスキルは関係がないという事だろう。
「あの、僕のスキルは……」
ペスが自信満々に声を出そうとした。
「あ、いいや。もう解決したから」──聞いてもしょうがないか。
「そんな! 聞いてくださいよ柔人さん!」
メリルとフィオラは、そんなペスの頼みをよそに、寝る準備に入っていた。
「明日のために、今日はもう休もう」
「それがいいのニャ」
こうして僕らは、ハエール盗賊団のアジトで一夜を明かした。
次の日の朝、僕たちはアジトを出発し、クラウド村へと向かった。黒装束姿の僕らは、どこからどうみてもケゾールソサエティーのメンバーにしか見えない。
クラウド村の屋敷を訪れ、村長に話を通す。そして、橋を封鎖している門を開かせた。欄干の無い、馬車の幅ギリギリの橋だっが、幌付きじゃない荷馬車のため、誘導は楽だった。
突然、僕たちめがけて小さい石が河原から飛んできた。飛ばしているのは、屋敷にいた小さい羊っ娘のメイミーだった。
「ファムを返せ! クリムを返せ! 仲間を返せ!」
メイミーは、泣きながら石を力いっぱい投げていた。投げられた小石は僕たちまで届き、体に当たる。痛くはない。だが、投げられた石を通じてメイミーの心の痛みを少しだけ感じたような気がした。
村長は急いでメイミーの所へ駆け寄り、叫ぶ。「よさないか、メイミー! お前まで連れていかれたら……わしらは……」と、そう言って、メイミーの腕をつかみ、石を投げるのをやめさせた。僕らが本物のケゾールだったら、今頃どうなっていたことか……。
「くっ……メイミー。済まない……必ず、連れ去られた皆を解放する」
メリルは、そう言葉を発して、メイミーに背を向けた。僕は、そんなメリルにそっと声をかける。
「そうだね。許せないね。ケゾールソサエティー」
「わたしも手伝うのニャ」
「解放しましょう!」
フィオラとペスは、メリルを元気付けるように、高らかに声を上げた。
僕たちの任務は、ケゾールソサエティーのアジトの発見と狐っ娘姫の救出。そして、ここで新たな任務、クラウド村の住人の救出が加わることとなった。
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