クッコロ姫騎士の城にオークがやってきた!

マイきぃ

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侯爵家

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 リキュール侯爵の屋敷は、城の離れにあった。
 オーク襲撃があったせいか、屋敷にいた侯爵家の騎士は城に出払っている。

 日が暮れる頃を見計らって私は屋敷へ侵入した。
 数体のオークをバーボン伯爵家から拝借した鎧を着せて護衛につける。

「リキュール侯爵! 私は騎士団長のクッコ・ローゼだ!」

 リキュール侯爵の屋敷の扉の前で声を上げる。するとしばらくして扉が開いた。
 ちょび髭を生やした嫌みな感じのリキュール侯爵とガラの悪い顔つきの護衛二人が現れる。
 
「これはこれは、クッコ・ローゼ様。いったいどうなされました」
「今日は、この件できた」
 そう言って、私はバーボン伯爵家で手に入れた黒い帳簿を見せた。

 この帳簿は本物の帳簿だ。これにはバーボン伯爵が担当する村から異常に取り立てた税の記録。それと、浮いた資金の流れがしっかり書いてある。さらにリキュール侯爵への手数料とは名ばかりの莫大な金額が記載されていた。

「この手数料とは何のことだ。用途を言え」

 おそらく、城に提出された帳簿はうまく数字をごまかしている。取り立てた金額の二分の一は通常の税に回し、残った金はリキュール侯爵とバーボン伯爵で山分けだ。

「そ……それは……」

 リキュールは動揺している。関与は確実だ。

「な……何を言う! そんなもの、知らん。知らんぞ! すべてバーボン伯爵がやった事ではないのか?」

 急に見苦しい態度を見せ始めた。すべてをバーボン伯爵のせいにしようとするつもりだ。

「あなたの印もある。これは正式な書類だ。それと、魔鉱石をバーボン伯爵を通して大量に買い付けているな。これはいったい何のためだ」

「くっ! バーボンめ……いや、それも、バーボン伯爵が……」
「ならば、エミリア姫の権限において、屋敷内を調べさせてもらう」

「なんだと! エミリア姫が……そうか……そういうことか……」
「貴様、エミリア姫に何かしようとしていたのか?」
「いえいえ……それよりも……何か臭うんですよ……本当に臭い……」
「何! (まさか……オークを変装させているのがばれたのか……臭いは魔法で除去してあるはずだが……)」

「ノスメルの魔法(脱臭魔法)がかかっていますねぇ、あなたの護衛。それも、その護衛……人間じゃない」
「! 貴様! なぜそれを……!」
「兜を取りなさい、そしてその汚い素顔を晒しなさい!」

 すると、リキュール侯爵の言うとおりにオークは兜を脱いでしまった。
 命令の権限は今、私にあるはずだ。
 なのに、どうしてリキュール侯爵の言うことを聞いてしまったのだ!?

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