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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~

邪神

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 クッチャクッチャクッチャクッチャ…………。

《オーカス》は、無慈悲に《アズール》さんの頭をかみ砕きます。そして、よくかんだ後、ゴクンと飲み込みました。

「こ、こりゃうまいいぃぃ! 死肉のようなまろやかな味ぃ! それでいて活きがいい~っ!」

 なんてことでしょう……私が食べるはずだった《アズール》さんが……こんな猪だかドラゴンだかわからない、おかしな生き物に……!

《アズール》さんの体は、頭の無い状態で暴れています。たしかに、活きは良さそうです。

「いっただっきまぁ~す!」

《オーカス》は、《アズール》さんの両足を持って逆さに吊り下げ、首から出る腐った血をすすりながら大きな口を開けました。

 この時私は、《アズール》さんの体に赤いゲージが出ていることに気付きました。これは……私でも食べられるということです。

 どういう理由でこうなったかは知りませんが、《アズール》さんを横取りされるわけにはいきません。

《アズール》(HP10/3000:MP10/9999)

 私は、すぐに《アズール》さんの体をロックし、蔓を伸ばして【捕獲】します。そして《オーカス》から強引に《アズール》さんの体奪い取り……。

 い・た・だ・き・ま・す!

 ────パクッ。


 口の中に放り込みました。ああ、何ということでしょう……鋭い旨味が広がります。とても熟成された至高の味です。今まで食べた中では、最高です! こんなものを味わってしまっては……他の人間を食べることができなくなってしまいそうです……。

「おい……お前……」

 ────声がしました。

《アズール》さんは、私に逃げろと警告してくれました。ですが、私はそれを無視して…………《アズール》さんのあまりのおいしさに、我を忘れそうになっていました。

「俺の復活祝いの食事を横取りするとは! 覚悟はできているのだろうなぁ……女!」

 つまり私は、《オーカス》の恨みを買ったことになります。物凄い殺気が私に向けられました。私は即座にブルーゲージを使用します。

《オーカス》(HP????/????)
《シュカ》(HP∞/∞:TP∞/∞)

 ──ダン!ダン!ダン!ダン!ダン! …………。

 激しい足音を立てて私に向かってきます。体が大きい割には素早い動きです。

《オーカス》は、私に近付きます。そして、体を大きく回転しました。大きな尻尾が鞭のようにしなり、私を襲います。

 私はそれを、飛んでかわしました。ですが、《オーカス》はもう一度回転し、飛んだ先に尻尾の軌道を修正してきました。避けられません!

 ────ビタアアァァン!

 私は激しく吹っ飛びます。そして、壁に打ち付けられました。ブルーゲージがガクンと1/5ほど減り、一瞬だけ、私のHPゲージがレッドに入ります。HPが減ったわけではありません。これは……状態異常です。私に【スタン】(気絶)の状態が付加されています……。意識があるのに【スタン】だなんて……。

 そして、動くこともできません。これも何かの強制力なのでしょうか……。

《オーカス》がゆっくりと近づいてきます。しばらくして、【スタン】が解除されたので、私はすぐに距離をとります。尻尾の届く範囲は危険と判断しました。

「おお、この臭いは……お前もおいしそうな人間の臭いがするなぁ」

「《オーカス》! あなたは、なぜ動けたのですか……! 《アズール》さんは、言っていました。『体の封印を解く量の生命力しか与えていません』と……」

「ああ、それかぁ。実はなぁ……生命力はかなり回復していたのだよ。しばらく前、ここに二人組のやつらがうろちょろしていてな。そいつらが中途半端に『エナジークリスタル』を使うもんだから、生命力を溜めていたのだよ。そして今日の復活と同時に溜めていた生命力を上乗せしたのだ。どうだ、頭いいだろう!」

「それでは、《アズール》さんの計画を利用して復活したということですね」

「そうやすやすと体をあたえてたまるか! 私を誰だと思っている! この世の全てを食べ尽くす王、《オーカス》様だぁ!」

《オーカス》は憤怒します。

 ──フシュ~ッ……。

 吐く息は、とても臭く、とても濃い瘴気でした。

 私の視界に、通知がきていました。【複製】リストの《勇者》と《魔法使い》からです。『戦闘に参加させてほしい』との申入れがありました。

 私はすぐに《勇者》と《魔法使い》を【複製】しました。何か因縁があるようです。

 どこまでやれるのでしょうか……私は見守ることにしました。

「《シュカ》様。ありがとうございます! 必ずご期待に添う力を発揮してみせましょう!」

「ありがとうございます、《シュカ》様! この体ならいちいち瘴気のダメージを受けなくて済みそうね!」

《オーカス》は二人に気づき、声を上げます。

「ん、お前たちは……俺に生命力をくれた《勇者》共か……復活祝いに食べられにきてくれたのかぁ?」

「ふん! 《オーカス》! 100年前、お前は俺の村を襲った! そして……最愛の妻を奪った! その恨み……たとえ悪魔となろうとも、忘れちゃいないぜ!」

「私の師匠……さぞ、おいしかったでしょうね……そして、私は食べられていった仲間の敵は絶対に討つつもりよ」

《魔法使い》はとんがり帽子を投げ捨て、エメラルドグリーンの長い髪の毛をなびかせました。

「いちいち食ったやつのことなど、覚えておれんわ。だが、緑の髪のエルフ……あれは希少種だった! とてもうまかったぞ!」

《オーカス》は、彼らを挑発します。

「この、ゲス野郎!」

「押さえろ! サラ! 忘れるな、今は《シュカ》様の役に立つことだけを考えろ!」

「そうでした。……アラン……1つ聞いていい? 私はまだ……2番なの? 今度の1番は、やっぱり《シュカ》様なの?」

「《シュカ》様は別格だ。それにサラは永遠の2番だ。そして1番は────────────────永遠の空席だ!」

《勇者》の告白ともいえる言葉を聞いた《魔法使い》は、目に涙をためてしまいました。

「アラン…………グスッ」

「は、恥ずかしいこと言わせるな、戦いに集中しろ!」

「ええ……そうするわ」

《勇者》は恥ずかしさをこらえます。《魔法使い》は涙をこらえます。

 そして……《勇者》と《魔法使い》は、《オーカス》と対峙します。
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