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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~
単純な作戦
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あれから《サファイア》は、毎日のように森に入っては《借金鳥》を狩っています。何度か、《マリー》を使って声をかけましたが、《サファイア》は見向きもしません。
会話ができれば話は早いのですが……やっぱり、罠を使って捕獲したほうがよさそうです。それに、《サファイア》が森に出入りする限りチャンスはあります。
前回、逃げられた原因は、行き当たりばったりの作戦だったからです。つまり、何の準備もなかったということになります。少々甘く見ていました……油断大敵です。彼女には、対勇者並みの作戦を敷かなければならなかったようです。
【樹液】による捕獲は、おそらくバレているので無理でしょう。それに、矢が飛んで来れば、また捕獲領域外へ逃げてしまうかもしれません。難易度は上がりました。《賢者》という職は、伊達ではないようです。
私は、《サファイア》の動きの癖などを観察し、捕獲のための情報を集めることにしました。
しばらくして、パタパタとこちらに向かって何かが飛んできました。《フィオレ》です。今日も私の蜜をもらいにきたようです。
「《シュカー》! こんにちは~! 今日もいいかな~」
《マリー》を【複製】します。
「ええ、構いませんよ」
そういえば、この子は妖精。つまり、私よりも長生きしているはずです。なにか、猫の亜人について知っているかもしれません。今日は、体を洗ってもらわずに、情報を得てみようと思います。
「《フィオレ》さん。猫の亜人は知っていますか?」
「うん、知ってるよ。どうかしたの?」
「どんな特徴があるのか知りたいのですが……例えば、弱点とか」
「う~ん、特徴ね~。名前の通り、そのまま猫が人間になった感じの特徴なのは確かなんだけど、体力が低いことぐらいかな。でも、体力が低いかわりに素早い。頭もいいし、鼻も利くね」
「なんとなくわかりました」
聞く限りでは利用できるような部分はなさそうです。せめて、好戦的な部分があってくれれば御しやすいのですが……。
「あ、そうそう、弱点といえるかわからないけど、猫亜人はね、『ネコニップ』って呼ばれる植物の香りに弱いの」
「『ネコニップ』……香りですか」
「名前は『ネコニップ』だけど、犬の顔の形をした花が咲くの。その顔の鼻を軽く叩くと、ワンワン鳴いて、香りを出すの。その香りを嗅いだ猫亜人は、酔っぱらっちゃうような感じかな」
「不思議な花ですね」
「欲しければ、取ってきてあげるね」
「そうですね、お願いしてもよろしいでしょうか」
「いいよー。いつもお世話になってるからねっ!」
これは、いいことを聞きました。条件さえそろえば捕獲はできそうです。しかし、情報を聞き出すためには、何か手を考えなければいけません。これといって思い浮かばないのが悲しいところですが……。
《フィオレ》は、瓶に蜜を詰めた後、お礼をいってパタパタと飛んで行きました。
妖精は、みんなあの子のように陽気なのでしょうか。恨みで生きている私としては、時々その陽気さに苛立ちを感じることがあります。顔に出ないのがせめてもの救いですけどね……。
私は、ぼんやりと作戦を考えていました。
体に2センチほどの蟻がくっついていました。気が散るので蔓で弾き飛ばします。
────ペチッ。
蟻は吹っ飛んで、円錐形の窪地に落ちました。蟻は、斜面に足を取られて上れません。そして、窪地の底から鋭い牙を持った虫が現れました。蟻は吸い寄せられるようにその虫に近づき、牙の餌食となりました。
──いいきみです。私に集るからそうなるのです……。
────!
これです……まさか……虫ごときに教わるとは思いもよりませんでした。これは使えます。
作戦は決まりました。猫亜人の脚力を封じての捕獲です。
まず【樹木落とし】で穴を作ります。穴は土がサラサラした場所を選びます。東の方の土壌がちょうど具合のいい砂地ですので、そちらに樹木を飛ばします。
────ドドーン!
爆音と共に、地面に円錐状の大きな穴が空きました。落ちた樹木は【複製】で《勇者》を生成し、取り除きます。
この穴の崩れやすい斜面が、猫亜人の脚力を封じる仕掛けになってくれます。
《フィオレ》は『ネコニップ』を3株ほど持ってきてくれました。先程開けた穴の底に植えてもらいます。
「適当に植えてみたよー」
「それでいいですよ。ありがとうございます」
《フィオレ》の作業が終わりました。その後、私は穴の底に【ヒトバサミ】を配置しました。
『ネコニップ』を植えたところから数十メートルほど離れた木の上に《借金鳥》を配置します。《サファイア》は、必ず一匹だけ飛んでいる所を狙ってくるので、飛ばすのは、周りに《借金鳥》がいないことが前提です。
それと、光るものを『ネコニップ』の所に置きます。こうしておけば、《借金鳥》が光りものを狙って飛ぶことになるので、不自然さはなくなります。
《シーフ》を【複製】して、罠の斜面を綺麗に仕上げてもらいます。これで地形効果を利用した仕掛けができました。
『ネコニップ』の効果次第では、確実性を増すでしょう。単純な作戦ですが、効果は抜群なはずです。
私はこれを、『砂地獄作戦』と呼ぶことにします。
会話ができれば話は早いのですが……やっぱり、罠を使って捕獲したほうがよさそうです。それに、《サファイア》が森に出入りする限りチャンスはあります。
前回、逃げられた原因は、行き当たりばったりの作戦だったからです。つまり、何の準備もなかったということになります。少々甘く見ていました……油断大敵です。彼女には、対勇者並みの作戦を敷かなければならなかったようです。
【樹液】による捕獲は、おそらくバレているので無理でしょう。それに、矢が飛んで来れば、また捕獲領域外へ逃げてしまうかもしれません。難易度は上がりました。《賢者》という職は、伊達ではないようです。
私は、《サファイア》の動きの癖などを観察し、捕獲のための情報を集めることにしました。
しばらくして、パタパタとこちらに向かって何かが飛んできました。《フィオレ》です。今日も私の蜜をもらいにきたようです。
「《シュカー》! こんにちは~! 今日もいいかな~」
《マリー》を【複製】します。
「ええ、構いませんよ」
そういえば、この子は妖精。つまり、私よりも長生きしているはずです。なにか、猫の亜人について知っているかもしれません。今日は、体を洗ってもらわずに、情報を得てみようと思います。
「《フィオレ》さん。猫の亜人は知っていますか?」
「うん、知ってるよ。どうかしたの?」
「どんな特徴があるのか知りたいのですが……例えば、弱点とか」
「う~ん、特徴ね~。名前の通り、そのまま猫が人間になった感じの特徴なのは確かなんだけど、体力が低いことぐらいかな。でも、体力が低いかわりに素早い。頭もいいし、鼻も利くね」
「なんとなくわかりました」
聞く限りでは利用できるような部分はなさそうです。せめて、好戦的な部分があってくれれば御しやすいのですが……。
「あ、そうそう、弱点といえるかわからないけど、猫亜人はね、『ネコニップ』って呼ばれる植物の香りに弱いの」
「『ネコニップ』……香りですか」
「名前は『ネコニップ』だけど、犬の顔の形をした花が咲くの。その顔の鼻を軽く叩くと、ワンワン鳴いて、香りを出すの。その香りを嗅いだ猫亜人は、酔っぱらっちゃうような感じかな」
「不思議な花ですね」
「欲しければ、取ってきてあげるね」
「そうですね、お願いしてもよろしいでしょうか」
「いいよー。いつもお世話になってるからねっ!」
これは、いいことを聞きました。条件さえそろえば捕獲はできそうです。しかし、情報を聞き出すためには、何か手を考えなければいけません。これといって思い浮かばないのが悲しいところですが……。
《フィオレ》は、瓶に蜜を詰めた後、お礼をいってパタパタと飛んで行きました。
妖精は、みんなあの子のように陽気なのでしょうか。恨みで生きている私としては、時々その陽気さに苛立ちを感じることがあります。顔に出ないのがせめてもの救いですけどね……。
私は、ぼんやりと作戦を考えていました。
体に2センチほどの蟻がくっついていました。気が散るので蔓で弾き飛ばします。
────ペチッ。
蟻は吹っ飛んで、円錐形の窪地に落ちました。蟻は、斜面に足を取られて上れません。そして、窪地の底から鋭い牙を持った虫が現れました。蟻は吸い寄せられるようにその虫に近づき、牙の餌食となりました。
──いいきみです。私に集るからそうなるのです……。
────!
これです……まさか……虫ごときに教わるとは思いもよりませんでした。これは使えます。
作戦は決まりました。猫亜人の脚力を封じての捕獲です。
まず【樹木落とし】で穴を作ります。穴は土がサラサラした場所を選びます。東の方の土壌がちょうど具合のいい砂地ですので、そちらに樹木を飛ばします。
────ドドーン!
爆音と共に、地面に円錐状の大きな穴が空きました。落ちた樹木は【複製】で《勇者》を生成し、取り除きます。
この穴の崩れやすい斜面が、猫亜人の脚力を封じる仕掛けになってくれます。
《フィオレ》は『ネコニップ』を3株ほど持ってきてくれました。先程開けた穴の底に植えてもらいます。
「適当に植えてみたよー」
「それでいいですよ。ありがとうございます」
《フィオレ》の作業が終わりました。その後、私は穴の底に【ヒトバサミ】を配置しました。
『ネコニップ』を植えたところから数十メートルほど離れた木の上に《借金鳥》を配置します。《サファイア》は、必ず一匹だけ飛んでいる所を狙ってくるので、飛ばすのは、周りに《借金鳥》がいないことが前提です。
それと、光るものを『ネコニップ』の所に置きます。こうしておけば、《借金鳥》が光りものを狙って飛ぶことになるので、不自然さはなくなります。
《シーフ》を【複製】して、罠の斜面を綺麗に仕上げてもらいます。これで地形効果を利用した仕掛けができました。
『ネコニップ』の効果次第では、確実性を増すでしょう。単純な作戦ですが、効果は抜群なはずです。
私はこれを、『砂地獄作戦』と呼ぶことにします。
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