上 下
20 / 63
人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~

シーフの女

しおりを挟む
 森は今日も静かです。静かすぎてお腹が空きます。

 それにしても……勇者御一行が来てから、かなりの日数が経っています。ですが、人間が森に入ってくる気配はありません。いったいこれはどういうことなのでしょうか……。

 私は、《魔法使い》の鍛錬をしながら、ぼんやりとマップを眺めていました。

 マップを大きくしたり、小さくしたりして遊んでいたら右上のほうに、森の切れ目を見つけました。ちょうど(捕獲領域)ギリギリの場所です。そこだけ川があり、橋がかかっています。その先に家らしい建物がいつくかありました。これは…………。

────人間の住む家です────

 なぜ気が付かなかったのでしょう! もっと早く気が付いていれば……。私の(捕獲領域)は、人間の居住区に達していたのですね……。

 久しぶりに、ごちそうにありつける気がしてきました。

 私は【収縮】を使用し、小さくなりました。そして、《魔法使い》が持っている袋に土を詰め、その中に私の体を入れました。

 これで、PTを使用せずに移動することができます。何事も節約です。

 今日は、《魔法使い》に袋を持たせて、北東の居住区の様子を見に行くことにしました。もし、食べられそうだったら食事してくるつもりです。

 森を抜けると、森を囲むように川が流れていました。ちょうど目の前にアーチ状の橋がかかっています。川の向こう岸は整地されており、赤い屋根の家が沢山ならんでいました。あの家の中に、人間が沢山いるのですね……とても、ドキドキします。

 橋を渡ります。すると、橋の向こう側にロープと立札がありました。橋の入り口を封鎖しています。

 私は立札に近付き、書いてある文字を読んでみました。


町の皆様へ
森の中はビッグベアーが出て大変危険です
許可なく立ち入らないでください
冒険者ギルド ギルド統括責任者 アレス・シュタイン


 ああ……そうでしたか! こんなものが建てられていたのですね……。人間が森へ入ってこない理由がわかりました。

 私は、この不愉快な設置物を《魔法使い》の【ファイヤー】で焼却しました。設置物は塵と化しました。

 これで少しは、人間が森に入ってくるようになるでしょう。

 一つの問題が解決したところで、私たちは居住区へ進みました。

 おそらく人間たちは、私たちを見ても『魔法使いが植物を持って歩いている』としか見えないはずです。【収縮】を解除しなければ、ばれる心配はありません。

 町の中を見渡します。民家が立ち並んでいます。人間たちは、忙しそうに歩いています。もうすぐお昼でしょうか……女の人間たちが食べ物を抱えて走っていました。

 昼間は、人が多くて食事が難しいですね……。どこか、人気のないところがあるといいのですが、まだそこまで(捕獲領域)が広がっていませんので、今回は様子見ということでいいでしょう。

 そういえば、(捕獲領域)のラインの外に出ると、いったいどうなるのでしょうか……。私は、そのラインの側で、物思いにふけりました。

「あれ、サラ? サラじゃないの? どうしたのこんなところで……」

 私たちに人間の女が話しかけてきました。背が高く、軽装で涼しそうな恰好をした黒髪のショートヘアーの女です。どうやら、この複製体の知り合いのようです。ごまかして、森にでも引きずり込んでみることにします。

「どちらさま……でしたっけ」

「ひどい! その冗談はマジでやめて! 私、怒るよ!」

 とりあえず、私では話を合わせそうにないので、複製体にこの場をごまかすように指令をだしました。

「ごめんねケイト。冗談よ冗談。それより……」

「それよりサラ、前に私の家に遊びに来るっていってたわよね、私、お酒用意して待ってたんだから」

 話の主導権を取られてしまいました。この人間、ムカつきます。

「あー、そうだったわね。私、その時用事ができちゃって……」

「埋め合わせはきちんとしてもらおうかしらーねっ【チョロス】!」

 ケイトは、急に右手を前に出し、手を握りしめました。その瞬間、私の見る景色は一変しました。

 周りをよく見ると《魔法使い》が私の正面にいます。そして……私は、ケイトという人間に本体の入った袋をにぎられていました。

「へっへーん。私が《シーフ》ってこと忘れたの? なーんてね。 返して欲しければ私の家にきなさい。酒用意してまってるからさ、たまには付き合いなよ」

「ダメ! それは…………」

 そういうと、《シーフ》は私の本体を持ったまま、《魔法使い》から離れていきました。

 こ、これは…………この人間、《シーフ》のスキルを使ったのですね……。

 それはそうとして……私は……。 

 ────(捕獲領域)の外に連れ去られてしまいました……。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...