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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~

世界樹の贈り物

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「《シュカ》……ですか?」

「そそ、《シュカ》だよ。守ってくれる花だから、《シュカ》」

 悪くない響きを感じました。実際、森を守っているわけではないので、今の私に合うかどうかはわかりませんが、その響きを聞くとなんだか優しい気分になれます。

「とても良い名前です。いただきましょう、その名前」

「た、食べちゃ……だめだよ……」

「食べません」

 私は、《シュカ》という名前が気に入りました。これからは、そう名乗ってみることにします。

──名前が変わったところで《人食い花》には変わりないのですが──

「じゃあ、《シュカ》。今日はね、《世界樹》様から預かりものを届けにきたの」

「《世界樹》様?」

 世界樹……聞いたことがあります。世界を支えているといわれる一本の大樹。どうしてそんな存在の方が私に……。

「預かりもの……ですか?」

「そそ。これなんだけど……」

《フィオレ》は、小さなポシェットから、小さな緑色の玉を取り出しました。少しだけ緑色の発光があります。

「これはね、《マナの実》っていうの。緑のマナが詰め込まれているわ」

「緑のマナ……ですか?」

「多分、食べればいいんだと思う」

「そうですか……じゃあ遠慮なく……」

「私を食べちゃだめだよ」

「食べません!」

 私は、言われた通りに《マナの実》を、蔓を使って口に運びました。体の中に溶けていきます。

 突然、私の体から、丈夫そうな蔓が四方八方に伸びました。その蔓は、この森全体を覆っていきます。

 ほどなく森全体を覆った後、蔓は地面に姿を潜めました。

「《シュカ》! 大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ」

《フィオレ》は心配そうに、この光景を眺めていました。

 しばらくして、視界に『アップデートコンプリート』という文字が出ました。それが消えると、新たな枠が現れます。

 その枠の中には……。

 ────この森の地形が書いてありました……マップです!

 マップに点のようなものが見えます。まず、3つの白い点が一か所にあつまっています。これは、【複製】した村人が地面を修復している場所です。

 点を調べると……《ほどよい食感》、《まずい健康食》、《フォアグラ》……きちんと名前が表示されました。

 おそらく、これは彼らの位置で間違いないでしょう。そして赤い点がまばらにちょこちょこと動いています。これはおそらく、《羽ウサギ》の動き方です。

 獲物は赤で表示されているようです。これは……便利です……。

 まだ便利な機能があります。マップを調べた時に、トラップメニューが出ることです。私の視界以外の場所でもメニューがでます。私の機能と連動しています。

 ためしに、遠くの赤い点の進行方向に【ヒトバサミ】を仕掛けてみました。すると、罠のマーカーが付きました。

 赤い点がその上にくるのを待ちます…………しばらくして、マーカーの上に、赤い点が乗りました。

 ────罠を作動させます。

 マップに『HIT』の文字が表示されました。おそらく罠にかかったのでしょう。

 視界の外でも罠の設置と作動ができます。とても素晴らしい機能です。

「これは……とても便利なものですね」

「へえ~。どう便利なの~?」

「遠くの獲物の位置がわかるんです」

「そっかー」

「これは、《世界樹》様に感謝しないといけないですね。一度お会いしてみたいです」

「たしかねーここから南西に5キロメートルだったかなー」

「5キロメートル……ですか……」

 届きません……私の(捕獲領域)はこの場所を中心として2600メートル。あと2400メートルほど足りません。

 今は、レベルが1あがるごとに100メートルしか距離が伸びないので、レベルを24も上げなければなりません。

 もっと、人間を食べて、レベルアップしなくては…………。

「そうだ、さっきあなたのお腹の中に入ってわかったんだけど、消化液の他に匂い袋と蜜袋があったの」

「私の中を調べたのですか?」

「で、相談なんだけど……蜜がほしいの。もちろん、ただとは言わないわ。んーそうね、対価は……花の手入れ!」

「手入れ……ですか」

「そそ。だって、人間の血で花びらが赤黒く染まってるじゃない。ほんとは綺麗な朱色なのに」

「私の色……朱色だったんですね……考えたこともなかった……」

「花なんだから、手入れは大事よ。じゃあ、また来るわね」

「《世界樹》様によろしく伝えておいてください」

「うん、わかったー。じゃーねー」

 そう言って《フィオレ》は、飛んでいきました。

 私の体は、血で染まっていたのですね…………当然の結果だと思います。この《人食い花》に、綺麗な朱色は似合わない……そんな気がしました。

 今は、ドス黒い赤でかまいません…………。

 私を陥れた『ディーバ帝国』の第二王子……《カイン・キンバル》……彼に復讐するまでは…………。
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