ど変態な姫騎士はガチパーティーから追放されて悦虐のソムリエを目指す

マイきぃ

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第二十一話 騎士職

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「い、言われなくても、一撃で仕留めてやる! くらえ!『トールハンマー』」
 ザックは戦士の最上位スキル、『トールハンマー』を放った。持っていた剣が光り輝き、その光はハンマーを形作る。

「叩き潰してやる!」

 ザックは、掛け声とともに光のハンマーを振り下ろす。
 その光は、私の頭を直撃した。

「はっはっは! 脳みそをぶちまけろ!」

 ザックの私を嫌う意思は伝わった。だが、ザックの攻撃は、ただの単調な攻撃にしか感じなかった。もちろん私の心にはほとんど響かない。

「何か言ったか……ザック……」

 ハンマーの輝きが消えた。おそらく、奴は私の無事な姿を見て驚愕するだろう。

「な……なんだその……ところどころにモザイクがかった姿は!」
 ザックは、顎が外れたかのように大口を開けて騒ぐ。

 おそらく、私の傷口からの流血にメタ的な何かが発動したのだろう。だが、この程度のモザイクなど、取るに足らない問題だ。
 まだ、モザイクが見れる状況なら、私は健在だからだ。

「何を驚いている。私はまだ倒れちゃいない。それに、もっとあるのだろう! 私はモンスターと戦っても、戦士と本気で戦ったことはまだ一度もないからな! いい機会だ! 全ての技を持って私に挑め!」

「ふ……ふざけるな! それで無事なわけがあるかあああ!」

 ザックはこざかしいスキルを連発し始めた。攻撃力を上げ、貫通力を上げ、挙句の果てに必要のない『ハイパーアーマー』まで使う始末だ。こうなるともう、最高の一撃は期待できない。奴はただ、自分の恐れを隠すために、連続攻撃を繰り出しているだけなのだから……。

「倒れろ! 倒れろ! 倒れろおおお!」

 ザックのでたらめなスキルの連打は、まるで、子供のグルグルパンチのようだ。
 こんな攻撃では、心に響かないどころか、逆に怒りさえ感じてしまう。

「おい、お前……もう、いい加減にしろ!」
 思わず、その醜態を見かねた私は、軽くザックの顔面をグーで殴りつけた。
 ザックは、私のその軽いパンチで、ふらふらと片膝をつく。もちろん、私のパンチに威力があるわけではない。いわば今のパンチはザックの心を折ったのだ。

「お前が私に与えたダメージは、今お前が感じた私のパンチのダメージと一緒だ」
「中途半端な騎士風情が……理解できない……理解できない……やっぱり俺には……お前が理解できないいいいい! なぜだ! それだけの強さを持っていながら、なぜ戦士やガーディアンの職に就かない!」

 ザックは混乱していた。
 それもそのはず……奴は結構長い間同じパーティーにいたのにも関わらず、私の本当の能力を把握することはなかった。私を騎士職というだけで軽く見て、それ相応の仕事しか振らなかったのだ。

 奴はただ、仲間に自分の思うとおりの攻撃だけを要求するのみの効率主義者だ。もちろんそれに逆らえば、パーティーにはいられない。
 ……私も嫌というほど暴言を受け、その快感のうちに追放に至ったわけだが……。

「それは、私が適職者だからだ。……なぜ、騎士職はなり手が少ないか……それは、お前が言うように中途半端なステータスに起因する。攻撃力なら戦士、守備力ならガーディアン。今じゃその役割の担い手がいなければパーティーは成り立たない。けれども騎士は、なり手によっては最強クラスのディフェンダーとアタッカーになれるのだ。それを今、この私が証明してみせよう!」

「適職者……最強クラス……! 馬鹿な! そんなことがあるはずが……」

「エリザ! 放て!」
「わかりましたわ。最高の魔法をお見せいたしますわ!」
 私はエリザに、召喚魔法の使用を指示した。

「異次元世界に宿りし眠る破壊の神よ、時空の壁を越え、この領域に顕現せよ。『エクス・デス・マキナ・アーム』!」
 暗雲と稲妻の中から、黄金に輝く巨大な腕が勢いよく降下する。
 だが、その攻撃はザックへ向けてのものではない。私に向けられたものだ。

「ぐほあああああああっ!」

 体がどうにかなってしまいそうなこの圧力、この一撃のワクワク感はたまらない!
 私は、その攻撃を全身に受け、勢いよく潰された。

 それを目の当たりにしたザックはつぶやく。
「な、なんだ……気でも触れたか! いや、こいつはいつも……ならばこれは……自滅……いや……仲間割れ……!?」

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