タカシの異世界無双計画 ~銃と仲間と異世界と~

マイきぃ

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第3章 準備を整えよう

第27話 ファリスとアラン

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 どうやら、アランはファリスに説得を試みているような口ぶりだ。

「冷静に考えてみようぜ。あの時、あの場にいた将軍の兵共は役立たずだった。唯一戦えたのは俺とファリス。あとは他の冒険者ぐらいだ」

「それは、理解しているっスが、彼らがいなければ、あっしらは体力を温存できなかったっス」

「それと、やつを瀕死に追い込んだのは、俺たち冒険者だ」

「それも、覚えてるっス」

「将軍はそんな時、無謀にも兵を前進させやがった。手柄を横取りするためだけにな。邪神の体力は削ったが、力は削れていない。あのまま兵を進めていたら、奴らは邪神に取り込まれて苦しみながら、やつに食われるばかりか、体力を回復させる羽目になっていたのさ」

「だからって、殺していいわけはない」

「邪神にエサを与えるようなものだったんだぜ」

「兵が餌になるのを止めたつもりっスか!」

「馬鹿な将軍の命令で苦しみながら邪神のエサになるのと、邪神を倒すのに貢献して一瞬で散るのとでは、どっちがいいと思う?」

「それで出した答えが大量虐殺なんスね!」

「ああ、そうだ。合理的だと思わないか」

「あっしはそうは思わない」

「なら、お前ならどうした?」

「あっしが邪神の前に立ちふさがって、兵の邪魔をして出番をなくすつもりだったっスよ」

「犠牲になるつもりだったのか、お前1人でなんとかなる相手じゃないんだぞ」

「それが最善の方法だったっス。あっしの守備力ならギリギリいけると思ったっス」

「なぜ、おまえが体を張る必要があるんだ」

「それが強い奴の、するべき事だからっスよ」

「つまらない信念だ。目が覚めると思って、お前に罪をなすり付けたんだがな」

「それを、余計なお世話って言うんスよねぇ」

 ファリスは、剣を構えた。静かな怒りを剣に封じ込めるかのように、両手でエクスカリバーレプリカを握る。アランは、俺に撃とうとしていた氷の塊をファリスに向ける。

 一連の話を聞いていた俺は、大体の事情を把握した。

「なんだよその話、将軍を黙らせればいいだけの話だろ」

 俺は、話に割り込む。的外れでもいいから、話に割り込むきっかけが欲しかった。

 アランは言葉を返す。

「ハッハッハ! 上出来な答すぎて笑えてくるぜ」

「おまえ、大将を侮辱するな!」

 ファリスは声を張り上げた。

「この国の兵は、帝国に家族を人質に取られているようなものだ。そんなことをすれば、兵士の家族がどんな目に遭うのかは明らかだ。そんな事も知らないで……」

 アランは呆れた声で、俺を嘲笑した。

 国の内情なんて、俺が知るわけがない。馬鹿にされてムカついたが、貴重な情報をアランから引き出した。まだ、この国のことをよく知らない俺は、冷静に怒りを鎮めた。

 俺は、霊剣ファントムにイメージを注入する。しばらく休憩したおかげで集中力は戻った。

「俺は、思った事を言っただけだ!」とりあえず、相手を挑発する。

「弱い奴は口出しするな!」アランは、俺を見下したように怒鳴る。

 だが、それでいい。イメージをする時間が稼げた。

「ならば、実力行使するしかないな!」

 俺は、イメージを集中した。鞘がメカメカしく変形する。
 
「【聖王爆裂剣】!」

 回転する複数の斬撃をアランに向けて放った。この技のイメージは、昔やっていた格ゲーの攻撃のイメージだ。霊剣ファントムに必殺技認定されたのは驚いたが、実際にゲームでも必殺技だったので、それ相応なのだろう。

「何だ……なんか……やばいな、こいつは!」

 アランは、焦って剣で衝撃波を弾く。だが、それが俺の狙いだった。

 ──【聖王爆裂剣】その攻撃のイメージは、武器破壊だ。

 最初にアランの剣に触れた衝撃波は、瞬間的に剣をロックする。複数の散らばっていた衝撃波は重さを持つ鈍器のようなものと化し、最初に触れた場所を集中して叩く。

 アランは剣を弾かれるが、それでもなお、武器破壊の攻撃は続く。そして、剣は砕け散った。

「おいおい、冗談だろ。一応レア級の武器だぜ! だが、いい物を頂いた」

 アランの左腕の鎧の隙間が、一瞬キラっと光った。

「くっ……多分やられたっス」

 ファリスが突然呟く。

「やられた? 何を?」

「おそらく、今の技をコピーされたっス。アランの腕輪『コピアリング』の能力っス。最大3つまで技をコピーできるっス」

 ファリスの技がコピーされたように、俺の今の技もコピーされたという事か。

「そうやってファリスの技も奪ったのか。勇者がそんなセコい能力使うなんてな」

「そうだ、このアイテムの力で奪った。別にセコくなんかないさ。アイテムの力は俺の力だ。それに今は、勇者じゃないからな」

 ──めんどうな相手だ。ファリスの元仲間ってだけあって、どう対処すればいいか決めかねる。無難にすませるのなら、仲間銃で仲間にした後で、いろいろと問いただし、罪を償うように命令するか……。

 俺は、仲間銃を握りしめ、アランに銃口を向けた。だが、銃口を向けたその瞬間、アランは煙のような霧を出現させた。

「ちょっと形勢不利のようだな。悪いが俺は、おとなしく撤退するぜ。やらなきゃならない事はあったが、オークのやつらが全滅じゃあ、ここへ来た意味がないからな!」

 霧は、アランを覆い隠した。これでは、仲間銃を使えない。

「おい、お前! 名前を聞いといてやる。俺はアランだ」霧の中から、アランの声だけが聞こえてきた。

「俺は……タカシだ!」思わず名乗ってしまった。

「前言は撤回する、お前は弱くない。俺にとって、すごく危険なやつだ。もしこの先、俺の前に立ちふさがるようなことがあれば、必ず排除する。覚えておくぞ! タカシ!」

 アランは、そう言い残し、この場から消えた。霧が晴れる頃には、すでに、やつの姿はなかった。逃げられては仕方がない。俺は、仲間銃を懐にしまった。

「奴が……ファリスが前に言っていた勇者……いや、元勇者のアランか……」

 前にファリスから聞いた話と、内容が一致していたので、ファリスの知り合いだと断定はできた。

「そうっス……あっしの最大の敵っス」

 ファリスは、憎しみを込めて言った。

 やつは、ファリスの気持ちを無視したあげく、大量虐殺をして、あまつさえその罪をファリスになすり付けた。ファリスが憎むのも当然の結果だ。

 今後、アランの動向には用心しなければならなくなった。

 ──それにしても、紫色の水晶……やつは、それを集めて、どうするつもりなのだろうか……。

「ご主人、大丈夫でしたか!」

 ミツユスキーが心配そうに走って来る。

「ああ、大じょお…………お……」

 張りつめた気が安心したせいで急に緩んだ。どっと疲れが押し寄せ、頭がぼんやりしてくる。連続の必殺スキルの使用で、精神力に負担がかかってしまった俺は、ふらふらと、めまいを起こし、その場に倒れた。
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