タカシの異世界無双計画 ~銃と仲間と異世界と~

マイきぃ

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第2章 依頼をこなそう

第18話 リンゴとメロン

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 俺は、風呂場に入った。部屋の中は湯気と熱気でいっぱいだ。服を脱いで大釜へと向かう。腕を入れて中の湯加減を確かめる。お湯は、丁度良い温度だった。

「っしゃ! 一番風呂いただき!」

 俺は、風呂に飛び込んだ。湯の暖かさが全身にくまなく伝わる。

「異世界で五右衛門風呂、なんて贅沢なんだ!」

 五右衛門風呂にゆっくりつかって、体の芯までリラックス! ずっとこのままでいたい気分だ。

「タカシ様! ご一緒してよろしいですか?」

 湯気の中から突然、メイデンの声がした。

「ちょっとまって……!」

 慌ててそう叫んだ瞬間、湯の高さが、少しだけ高くなった。

「あったかいです、タカシ様」

 気が付くと、すぐ隣にメイデンがいた。持ち前の素早い動きを、入浴するために使ったのだろうか。恥ずかしくて体は逃げようとするのだが、目が強制的にメイデンの胸のあたりにいってしまう。湯気が邪魔して良く見えないが、おそらく、その湯気の先には夢の詰まったリンゴがあるのだろう。

 湯気が少しだけ薄くなり、リンゴが姿を現す。その瞬間、俺の目線はリンゴに釘付けとなった。

 ──これは任務の達成報酬ということでいいのだろうか……。

「メイデン、抜け駆けはずるいっスよ、あっしも大将と入るっス」

 今度は、ファリスだ。やはり、湯気で良く見えないが、おいしそうなリンゴをぶら下げていることは確かだ。

 ファリスが風呂に飛び込む。風呂の湯は、溢れそうなぐらい一杯いになった。

「いい湯っスね、大将! 疲れがとれるっス」

 釜が大きいので、まだ楽にしていられるのだが、ここでもし、ソエルが来たら……。

「ワターシも入るでーす」

 来てしまった。湯気の中から出てきたその胸は…………

 ──高級メロン! ──

 そして、メロンのなる木の美しい輪郭はすさまじい破壊力だった!

 ソエルがゆっくりと風呂に入る。俺の体はリンゴとメロンに押し込まれ、そのまま幸せの中で湯の中へと沈むのだった。



 朝を迎えた。屋根が近い。ここはロッジの2階のベッドだった。ゆっくりと目を覚ます。

「そうか、俺、あのまま気を失って……」

 彼女たちにここまで運んでもらったのだろか、詳しいことはよく覚えてはいないが、湯あたりの後遺症が残っていて、まだ頭と体がボーっとしている。

 そして、俺の両隣にはメイデンとファリスがぐっすりと寝ている。関節を極められているわけではないので少しほっとした。床には桶とタオルが置いてあった。介抱してもらっていたのだろうか。

 ──あとで礼を言っておかなければならな。

 俺は、2人を起こさないよう、静かに寝室を出た。

 下の階に降りると、ソエルが台所のテーブルの上で作業をしていた。白い粉末状の薬を、紙に包んでいる。薬を作ってくれているのだろう。

「出来た?」

「おはようございますでーす。今、出来た所でーす」

「そうか、ありがとう。これでミツユスキーも喜ぶはずだ」

 すると、ソエルは、棚から埃の被った手帳を取り出し、俺の所へ持ってきた。

「もし、よろしければ、ワターシのお願い、聞いてもらえまーすか?」

「ん、なに?」

「これを受け取ってほしいのでーす。これは、勇者が、問題の正解者に渡すように言われたものです」

 そして彼女は、小さな手帳の埃を払い、俺に手渡した。

「これは……手帳……?」

 よく見ると、それは、皮のカバーのついた、現世でおなじみの手帳だった。

「それと……」

 ソエルは、恥ずかしそうな様子で、声を出す。

「まだ、何かあるのか?」

「勇者の遺言により、難題達成者のあなたにお仕えしたいのでーす」

「えええええ!」

 俺は、突然の言葉に驚いた。仲間銃を使ったわけでもないのに、ソエルのほうから、お願いをされたのだ。

「ダメですか……」

「いいの、本当に? 俺で」

「それが、ワターシの役目でーす」

 ソエルは真剣な目で、俺に訴えかけた。もちろん、断る理由は無い。仮にも賢者と名のるぐらいなのだから。すごい能力の持ち主なのだろう。

「ああ。じゃあ、よろしく頼む」

「そういえば、あなーたのお名前は、タカーシでいいのですか」

 そういえば、正式に名乗ってはいなかった。

「そうだ。俺の名はタカシ! この世界で楽をする男だ!」

 俺は、タダで仲間になってくれるソエルを受け入れる事にした。
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