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第2章 依頼をこなそう
第16話 勇者の残した謎
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ソエルはニヤリと笑って答えた。
「よくぞ聞いてくれました」ソエルはメモを手にした。
「『ハジメチョロチョロナカパッパア、カゴナイテモフタトルナ』それと、『ウエワオーミズシタワオーカジコレナンダー』この呪文を解読し、ここで実践するでーす」
ソエルの問題を聞いたメイデンとファリスは、暗い声で呟いた。
「私にはわかりません、タカシ様」
「あっしにもわかりませんぜ、大将」
二人は、武器に手をかけ、ソエルを睨み、捕縛できる態勢を取っていた。それを見た俺は、頭を抱え心の中で嘆いた。
──この二人、捕縛する気満々だろ……それでいいのか脳筋コンビ!
まあ、この二人にはわかるはずもないナゾナゾだ。おそらく、異世界人は多分誰も知らないだろう。
俺は、さっさと回答した。
「答えは、飯の炊き方と、風呂の事だ!」
そう答えると、ファリスとメイデンは、武器を持つ手を緩め、安心した表情を見せた。
「さすがです! タカシ様!」
「さすがあっし達の大将だ!」
俺も、一安心した。
「では、それを実践してくださーい」
「実践すればいいんだな」
さあ、回答の実践だ。ロッジの中に入ると、ソエルは、家中のランプに火を灯し、部屋の中を明るくする。家中が明るくなったところで、ソエル付き添いのもと、部屋を一つ一つ調べる。書斎、武器庫、物置、キッチン、最後に、大釜のある部屋を見つけた。
まず、大釜の部屋に入る。床は石畳になっており、その上にスノコが敷いてあった。周囲には、小さな桶や、椅子も置かれていた。これは、『五右衛門風呂』だ。ここが回答の実践場所だと、俺は確信した。
軽く釜を触ると、指に埃が付く。暫く使われた形跡はなさそうだった。指ついた埃を払い、辺りを見回す。すると、大釜のすぐ傍に、竹筒のついた手動のポンプが設置されていた。竹筒を回し、大釜に向け、そのポンプを上下に動かした。
竹筒から水が湧き出てきた。水が釜の中へと流れる。軽く釜の中の埃を洗い流し、一杯になるまで水を入れる。あとは、釜戸に火をつけるだけだ。部屋の隅に薪が置いてあるのを見つけたので、それを釜戸にくべ、ランプの火で焚きつけた。
「この大きな釜は、なんですか? まさーか、拷問する道具でーすか?」
突然、後ろにいたソエルが、不安そうな声を上げた。
「そんな道具として使われ方してた時代もあったな……ハハ」
盗賊、石川五右衛門を処刑した風呂の事だからな。
「それは物騒な時代でーす」
ソエルは、興味津々に聞いていた。
──後は、温かくなるのを待つだけだ。ファリスに火の番でもさせておくか……。
俺は、風呂場をファリスに任せ、台所に移動した。台所には、小さな釜戸と釜が置いてあった。
後ろから人の気配が近づいてくる。また、ソエルだった。
「これも、拷問する物でーすか」
「そうだよ」
今度はわざと、ソエルの言動にうなずいた。
「嘘はいけないでーす。それで勇者は、おいしい物を作っていましたー」
「なんだ、知ってるじゃないか」
「はっ! 試しましたね! 卑怯でーす!」
「お互いさまだろ……」
この賢者、そう呼ばれている割にはどこか抜けている。そんな気がした。
俺は、台所で米を探した。ありそうなところを手当たり次第に探す。部屋の隅に不自然においてある魔法陣の刻まれた樽を発見した。埃を払い、蓋を静かに開ける。すると、そこには、白く輝く宝石のような米が保管されていた。
「こいつはいい米だ!」
「その樽は、魔法で食材の鮮度を保つ事が出来まーす」
「魔法……確かに便利だ」
台所にあるポンプで水を汲み、米をとぐ。そして、釜に水を適量入れる。
『ハジメチョロチョロナカパッパ、アカゴナイテモフタトルナ』とは、火加減の事だ。簡単に言えば、弱火で釜を熱して熱が十分釜にいきわたり、少し沸騰させた後、一気に強火で炊き上げる。その際、炊き終わるまで蓋を取らないって事だ。
ヒキニート時代にネットの情報網で築き上げられた俺の知識も捨てたものじゃない。
──今、米炊き職人としての知識が覚醒する──
米を炊き始めてから1時間後、釜の鳴きが止み、出来上がりの様相を見せた。蓋を開ける。すると、独特の甘い香りが漂ってきた。
「いい感じだ」
だが、それと同時に異臭が混ざっていた。
「なんか、焦げ臭いな」
俺は、ご飯をかきまぜた。すると、釜底の方の飯は、全部真っ黒になっていた。俺は思わず頭を抱え、悲鳴を上げた。
「ギャー! 何故だ! 何がおかしかったんだ!」
俺は、釜の中を覗き込みながら、原因を考えた。
──そうか! あの言葉は、省略されていたんだ! 本当の火加減は……。
「よくぞ聞いてくれました」ソエルはメモを手にした。
「『ハジメチョロチョロナカパッパア、カゴナイテモフタトルナ』それと、『ウエワオーミズシタワオーカジコレナンダー』この呪文を解読し、ここで実践するでーす」
ソエルの問題を聞いたメイデンとファリスは、暗い声で呟いた。
「私にはわかりません、タカシ様」
「あっしにもわかりませんぜ、大将」
二人は、武器に手をかけ、ソエルを睨み、捕縛できる態勢を取っていた。それを見た俺は、頭を抱え心の中で嘆いた。
──この二人、捕縛する気満々だろ……それでいいのか脳筋コンビ!
まあ、この二人にはわかるはずもないナゾナゾだ。おそらく、異世界人は多分誰も知らないだろう。
俺は、さっさと回答した。
「答えは、飯の炊き方と、風呂の事だ!」
そう答えると、ファリスとメイデンは、武器を持つ手を緩め、安心した表情を見せた。
「さすがです! タカシ様!」
「さすがあっし達の大将だ!」
俺も、一安心した。
「では、それを実践してくださーい」
「実践すればいいんだな」
さあ、回答の実践だ。ロッジの中に入ると、ソエルは、家中のランプに火を灯し、部屋の中を明るくする。家中が明るくなったところで、ソエル付き添いのもと、部屋を一つ一つ調べる。書斎、武器庫、物置、キッチン、最後に、大釜のある部屋を見つけた。
まず、大釜の部屋に入る。床は石畳になっており、その上にスノコが敷いてあった。周囲には、小さな桶や、椅子も置かれていた。これは、『五右衛門風呂』だ。ここが回答の実践場所だと、俺は確信した。
軽く釜を触ると、指に埃が付く。暫く使われた形跡はなさそうだった。指ついた埃を払い、辺りを見回す。すると、大釜のすぐ傍に、竹筒のついた手動のポンプが設置されていた。竹筒を回し、大釜に向け、そのポンプを上下に動かした。
竹筒から水が湧き出てきた。水が釜の中へと流れる。軽く釜の中の埃を洗い流し、一杯になるまで水を入れる。あとは、釜戸に火をつけるだけだ。部屋の隅に薪が置いてあるのを見つけたので、それを釜戸にくべ、ランプの火で焚きつけた。
「この大きな釜は、なんですか? まさーか、拷問する道具でーすか?」
突然、後ろにいたソエルが、不安そうな声を上げた。
「そんな道具として使われ方してた時代もあったな……ハハ」
盗賊、石川五右衛門を処刑した風呂の事だからな。
「それは物騒な時代でーす」
ソエルは、興味津々に聞いていた。
──後は、温かくなるのを待つだけだ。ファリスに火の番でもさせておくか……。
俺は、風呂場をファリスに任せ、台所に移動した。台所には、小さな釜戸と釜が置いてあった。
後ろから人の気配が近づいてくる。また、ソエルだった。
「これも、拷問する物でーすか」
「そうだよ」
今度はわざと、ソエルの言動にうなずいた。
「嘘はいけないでーす。それで勇者は、おいしい物を作っていましたー」
「なんだ、知ってるじゃないか」
「はっ! 試しましたね! 卑怯でーす!」
「お互いさまだろ……」
この賢者、そう呼ばれている割にはどこか抜けている。そんな気がした。
俺は、台所で米を探した。ありそうなところを手当たり次第に探す。部屋の隅に不自然においてある魔法陣の刻まれた樽を発見した。埃を払い、蓋を静かに開ける。すると、そこには、白く輝く宝石のような米が保管されていた。
「こいつはいい米だ!」
「その樽は、魔法で食材の鮮度を保つ事が出来まーす」
「魔法……確かに便利だ」
台所にあるポンプで水を汲み、米をとぐ。そして、釜に水を適量入れる。
『ハジメチョロチョロナカパッパ、アカゴナイテモフタトルナ』とは、火加減の事だ。簡単に言えば、弱火で釜を熱して熱が十分釜にいきわたり、少し沸騰させた後、一気に強火で炊き上げる。その際、炊き終わるまで蓋を取らないって事だ。
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米を炊き始めてから1時間後、釜の鳴きが止み、出来上がりの様相を見せた。蓋を開ける。すると、独特の甘い香りが漂ってきた。
「いい感じだ」
だが、それと同時に異臭が混ざっていた。
「なんか、焦げ臭いな」
俺は、ご飯をかきまぜた。すると、釜底の方の飯は、全部真っ黒になっていた。俺は思わず頭を抱え、悲鳴を上げた。
「ギャー! 何故だ! 何がおかしかったんだ!」
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